第8話 追跡
「くそっ! 何だあいつらはっ!!」
ワイズパロットに跨って空を飛びながら盗賊団のお頭ギレームは吠える。
「せっかくこの国での盗賊稼業も軌道に乗ってきたのに台無しだ!」
王国は騎士団が頻繁に巡回しているため他の国に比べて犯罪発生率は低い。
しかしそれは裏を返せばギレームにとって同業者が少ないことを意味する。
つまり騎士団に捕まらない方法を確立させてしまえば他の盗賊と獲物が被ることがなく独占出来るのだ。
悪知恵の回るギレームは騎士団に所属する者の中から金に卑しい人物を探し出し買収した。
そして騎士団の情報を流してもらうことで今まで捕まらずに盗みを働いてきたのだ。
しかしそれもルイシャとヴォルフのせいでオジャンだ。
だがまだギレームには希望があった。
「……だがコレと鳥を持ってこれて良かったぜ。2つとも売りゃまとまった金になるだろう」
ワイズパロットは希少生物のためコレクターにかなりの高値で売れる。その額は小さな家が一軒建つほどだ。
そしてもう一つ。ギレームがコレと言ったのは腕にはめた腕輪だ。
銀色の本体に大きな桃色の宝石がはめ込まれたその腕輪はギレームが王国近くの遺跡でたまたま見つけたお宝だ。
鑑定してもいつの時代の物で何の素材で出来ているかも分からなかったが、ギレームの盗賊としての勘がこれはとんでもないお宝だと感じていた。
「ひひ、あいつら絶対許さねえ。態勢を立て直したら必ず復讐してやる……!」
ギレームがそう決意しながら王国の外に向け飛ぶ。
そしてそれを追う影があった。
屋根から屋根に飛び跳ねる黒い影。
黒狼に変身したヴォルフとそれに乗るルイシャだ。
ルイシャは空を飛ぶ緑色の影を見つけ指をさす。
「いた! あそこだ!」
「へっ、俺達から逃げられると思うなよクソ盗賊が!」
ヴォルフの速さは凄まじかった。
屋根の上というバランスも悪いところを苦もなく驚異的な速さで走る。
速さ特化のメレルにも引けを取らないだろう。
「だけどどうやってあんな高くに上がればいいだろう……」
「あ!? そんなのこうすればいいじゃねえか!」
ヴォルフはそう言って加速する。
「ちょ、ちょちょちょ、まさか!!」
ルイシャはこれから何が起こるかを察してぎゅっとヴォルフにしがみつく。
「行くぜ! ちゃんと掴まってろよ!!」
最高速になったヴォルフは全身をバネのようにしならせ、地面を蹴る。
速度そのままにジャンプしたヴォルフはグングンと上昇し……なんとワイズパロットが飛ぶ高さまで跳躍した。