第5話 盗賊団
ルイシャが構えると盗賊団の男たちは笑い出す。
「こりゃ傑作だ。おいお前相手してやれよ」
「うす」
頭の命令でガタイのいい男が拳を鳴らしながらルイシャに近づいていく。
身体中に残る古傷の跡が男が歴戦の猛者だと言うことを語っている。
「顔は傷つけるなよ! 可愛い顔してっから少年好きの変態に高く売れるからよ!」
頭の言葉にルイシャは「うへ」と嫌そうな顔をする。
ガタイのいい男はそんな隙だらけのルイシャに手を伸ばし拘束しようとする。
しかし。
「いでぇっ!」
ルイシャを掴もうとした男の指がぐしゃぐしゃにひしゃげる。
まるで巨大な何かに押し潰されたみたいだ。
「『金剛殻・指取』……って聞いてないか」
ルイシャがやったことは単純。金剛殻で硬くした右手で男の手を握手するように握り潰したのだ。
それだけで男の大きな手はひしゃげ、使い物にならなくなってしまう。
「ちょっとどいててね」
突然の痛みに悶え苦しむ男をルイシャは容赦なく蹴っ飛ばす。吹っ飛んだ男は頭の横を通り過ぎ倉庫の壁にぶち当たる。
当然男の意識はなくなりその場に倒れる。
「な、なんなんだこいつは……!」
ルイシャの異常性に気づいた頭は銃口をルイシャに向ける。
「どうしたの? 銃が震えてるよ?」
「うるせえ舐めんなガキが! お前ら撃てぇ!!」
頭が発砲するのを皮切りに盗賊団の連中は一斉に発砲する。
30人の四方八方から発砲。逃げ場などんてない弾幕だ。
おまけに隣にはヴォルフもいる。これを防ぐにはこの技かな。
ルイシャは両手を左右に開いて二人を包み込むように気功を放出する。
「気功術、守式二ノ型『守鶴』!!」
二人を包み込むように形成されたのは球状の気功の壁。
半透明ながらもかなりの硬さを誇るその壁は迫りくる銃弾を全て弾き地面に落下させる。
「す、すげえ……」
ヴォルフの口から思わず称賛の言葉が漏れ出る。
獣人は魔法が下手な代わりに気功の量が多い。だからヴォルフは気功の扱いが上手い獣人を何人か知っていたのだが、ルイシャほど見事に練りこまれた気功術は見たことがなかった。
「さて、反撃させてもらうよ!」
盗賊団が弾を打ち尽くしたのを見計い、ルイシャは守鶴を解除し反撃に出る。
盗品があるので大技は使えない。
なので一人一人格闘術で倒していく。
「ば、化物……!」
一人、また一人と鮮やかに倒されていく部下を見て頭の口から恐怖が漏れ出る。
こいつには絶対に勝てない。そう本能が叫んでいる。
しかし頭にもプライドがある。この子供にやられっぱなしなんて許せない。
そう思った彼がとった行動はルイシャにとって予想外のものだった。
「クソがっ! せめててめえを道連れにしてやる!」
そう言って頭はヴォルフ目掛け銃口を向ける。
しかしルイシャに目を奪われていたヴォルフはその攻撃に気づかなかった。
そして――――無情にも弾丸は放たれた。