第16話 試練
「僕を、鍛える?」
「ええ。私の使命は無限牢獄の封印を解くこと。そのためには君に強くなってもらわなくてはいけません」
そう言って桜華は日本刀を振りかぶって構える。
美しく、そして力強い所作。それだけで彼女がただものでないことをルイシャは理解した。
「さあ、剣を出しなさい。今のあなたは精神体。念じれば剣を作り出せます」
「わ! 本当に出た!」
試しに竜王剣を頭に浮かべるとまるで最初からそこにあったように竜王剣がルイシャの手の中に現れる。
「準備は出来ましたね? それでは……訓練を始めます!」
そう言った刹那、桜華の姿が消える。
次の瞬間感じたのは首を切り落とすかの如く鋭い殺気。それに反応して深くその場に屈むとルイシャの首があった位置を桜華の刀が通り過ぎる。
(あっっっぶない! もう少し反応が遅れたら首が飛んでた!)
脂汗をかくルイシャに桜華が言葉で追い討ちをかける。
「あ、言い忘れてましたが精神体が死ぬと肉体は廃人になり二度と目覚めません。気をつけてくださいね」
「それを早く言ってください! ていうか死んだらどうするんですか! 僕が死んだら封印は解けなくなっちゃいますよ!?」
「この程度で死ぬようではどの道途中で死んでしまうでしょう。これは試験でもあるのですよ」
そう言って桜華は刀を振るう。
桜華の太刀筋はまるで蛇のようにうねりながらルイシャに襲いかかる。四方八方から迫りくる剣閃は時に正面から、時に死角からルイシャに飛んでくる。
そのあまりに流麗で完成された剣技にルイシャは防戦一方になってしまう。
(なんて強さだ……! この強さはテス姉やリオと同じクラスだ!!)
必死に桜華の剣筋を竜王剣で受け流すルイシャだが全てを防ぎ切れるわけではない。
防ぎきれなかった斬撃はルイシャの体を切り裂き少しずつ力を奪ってくる。
気功術の力によりルイシャの自然治癒能力は常人を遥かに凌いでいるが、それでもいつまで持ち堪えられるかわからない。
「どうしました? あなたの師匠は剣技は教えてくれなかったのですか?」
「くっ……!」
己の無力さに歯噛みする。
確かに魔法と気功術は一流レベルまで叩き込まれたけど剣術は教えてもらってないから良くて二流だ。
だけど、だけどこんなところでやられるわけにはいかない。
剣術で勝てないなら複合で戦えばいい。師匠が二人いることが僕の強さだ!!