第11話 決着
メレルの足を魔法の光が包み込み、身体能力が強化される。
この状態のメレルは100mを2秒で駆け抜ける速さ。彼らのパンチを避けるなど造作でもない。
「こいつ、当たらねえ!?」
「遅い遅い! あくびが出ちゃうよ!!」
空振りし続け息が切れ始める3人。
メレルはその隙に「疾ッ!!」と目にも止まらない蹴りを放ち、顎を撃ち抜く。
高速で脳を揺らされた3人は自分が蹴られたことにすら気づかぬ中に意識を失いその場に崩れ去る。
「へへ、少し速すぎたかな?」
メレルが一瞬で3人を倒す様を見たハウロ達は、自分たちはもう逃げることすらできないのだと理解する。
そしてそんな彼らの元へルイシャは近づいていく。
「く、来るなっ!!」
「ちょっとちょっと、先に手を出してきたのはそっちじゃないか。こっちを悪者みたいにしないでよ」
ぷくーっと可愛らしく頬を膨らませながらルイシャは怒る。
「わ、悪かった! だから許してくれ! 欲しいものをやる! 金か!? 学生では使い切れない金をやるよ!」
「いらないよそんなの」
ハウロが必死に命乞いをするが、ルイシャは気にも止めずハウロとその取り巻きの元へゆっくり近づいていく。
「わかった! 貴族にしてやる! パパに頼めば位の低い貴族にくらいならでき……」
「うんもういいよ」
腰の入った右ストレート。
ルイシャの放った拳がハウロの右頬に突き刺さり、ハウロは「かぺ」と情けない声を出す。
攻撃はそれだけに終わらず、ルイシャの拳は鳩尾、人中、右脇腹など一瞬の間にハウロの体のいたるところに突き刺さる。
「あがっ……!!」
痛みが脳の許容量を超えたハウロはグルン! と白目を剥き、床に崩れ落ちる。
その様を間近で見ていたハウロの取り巻きは震え上がり、そして理解する。
――――自分たちは手を出してはいけないものに、手を出してしまった。
「ねえ」
「「「ひゃい!」」」
ルイシャに声をかけられた取り巻き達は情けない声で返事する。
「まだ、やる?」
彼らはこの日、人生でいちばん首を大きく横に振った。