第3話 スケルトン
「うーん……ここは?」
ガンガン痛む頭をさすりながら、ルイシャは目を覚ます。
彼が目覚めたところは夜の砂浜だった。なんでこんなところに? と記憶をさかのぼる。
「えっと確か海中に入ってそれで……タコ足に襲われて……どうなったんだっけ」
強い衝撃を受けたせいかうまく頭が回らない。
それでも必死に思い出そうと頑張る。
「そうだ。海底の島に入ったんだ。あれ? でもここ普通の島だけど……」
と、思いながら夜空を見上げる。
星一つない漆黒の夜空がそこには広がっていた。
「……へ? 星一つない? なんで?」
空をじーっと凝視したルイシャは気がつく。
目の前に広がるそれは空ではない、海なのだと。どこまでも真っ黒な海。深海。ここは紛うことなき目的地なのだと、彼は理解した。
「普通に息もできるし、外と何も変わらないねこれは。でも一応備えはしておこう」
シンディより貰ったオゾンツリーのガムと人魚の涙が無事なのを確認し、いつでも取り出せるようにしておく。
準備の整った彼はさっそく仲間を探し始める。
「といってもこの島、結構広いよね。魔力探知出来ればいいけど」
さっそく魔力探知を試みるルイシャだったが、それはすぐに中断させられてしまう。謎の妨害電波のようなものが引っかかり、探知が出来なかったのだ。
「くそ、なんだこれ? こんなんじゃ探知しようがないや。地道に足で探すしかないか……」
仕方なく島内に入ろうとした瞬間、足元の砂がもぞもぞと動き出す。
「ん?」
何だろう、と見ていると、突然砂浜からズボ! と骨の手が生えてくる。思わず「うわあ!?」と叫び尻もちをつくルイシャ。
そんな彼を他所に骨はその全身をさらけ出す。その姿にルイシャは覚えがあった。
「スケルトン……!」
全身が骨のモンスター、スケルトン。
墓地などに生息し、生きている者を襲う凶悪なモンスターだ。
見た目こそ細くて弱そうだが、死に生きる彼らは非常にしぶとく、強い。駆け出しの冒険者がアンデッドやゾンビに返り討ちに合うのはよくある話だ。
「やる気、だよね」
スケルトンは手に持ったサーベルの切っ先をルイシャに向ける。骸骨の表情は読みづらいけどどこか笑っているようにも見える。
『ガギ、ギ……!』
素早く踏み込み、スケルトンは斬りかかってくる。
想像以上の速さにルイシャは少し驚くが、難なく躱す。確かにスケルトンは凶悪なモンスターだ。しかしそれでもルイシャはそれに引けを取りはしない。
「――――そこだ!」
サーベルを回避したルイシャはスケルトンを思い切り蹴っ飛ばす。するとスケルトンはバラバラになって吹き飛び、砂浜に転がる。
ルイシャは「ふう」一息ついて立ち去ろうとするが、
『ガ、ガガガギ……!』
なんとスケルトンはバラバラの状態から復活した。再び先ほどの状態に戻りサーベルを構えている。
「あんなにバラバラにしても復活するなんて。甘く見てたね……!」
今度は復活出来ないよう、もっとバラバラにしてやると意気込むルイシャ。
するとまた砂が蠢き出し、違うスケルトンが現れる。
「ん?」
三体目、四体目と続々現れるスケルトン。それを見たルイシャは高速で後ろを向き……逃走した。
「こんなに戦ってられないよ!」
そう叫びながら、ルイシャは一人謎の島を駆け抜けるのだった。