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第2話 襲い来る悪意

「なんだあの島……水中なのに木が生えてる……」

「それだけじゃない、空気もある。一体どうなってるんだい?」


 海底に沈むその島は、ルイシャたちが乗っている船と同じように空気の膜のような物が張ってあった。

 一体誰が何の為に。そう考えていると、突然大きな声が船内に響き渡る。


「て、敵襲! 敵襲です船長!」

「何だって!? 海の中で何に襲われるってんだい!?」

「わかりません! とにかく下を見てください!」

「下?」


 言われるがまま船の下を除いてみると、なんと沈没船の中からヌッとタコの足のようなものが生えていた。

 しかもただのタコの足ではない。まず大きさがケタ違いだ。

 船を簡単に巻き取ることのできる規格外の大きさのタコ足が何十本、何百本と海底から生え、船めがけて伸びてきていた。


「……こりゃマズいね」


 最悪の状況だと理解したシンディは素早く。指示を出す。


「魔導エンジン最大出力! 足を振り切って島に突っ込むよ!」


 風がない海中ではいつものように帆で進むことは出来ない。その代わりに船には魔導エンジンと呼ばれる魔力を推進力に出来る物が積まれていた。


 最大出力で使えば船体にもかなりの負荷がかかるが、気にしていてる余裕はない。


「しっかり捕まってな!」

「わわ!?」


 海中を物凄いスピードで進むグロウブルー号。

 副船長マック・エヴァンスは巧みな操舵技術でタコ足の攻撃を避け続けていた。しかし、


「クソ! こんなのいつまでも持たないぞ!」


 魔導エンジンによる移動によって船には大きな負荷がかかっていた。無茶をしすぎると船の真ん中から真っ二つに折れてしまう。そうすれば船員はみんなまとめて海に放り出される。

 人魚の涙を飲めば水圧で死ぬことはないが、その前にタコ足に捕まってしまうだろう。


「やはり突っ込むしかないか……!」


 マックは船長の指示通り謎の海底島めがけて舵を切る。しかしそれを読んでいたようにタコ足が立ち塞がる。


「しまっ……」


 急いで舵を切ろうとするが間に合わない。最悪の事態を想定するマックだが、それを許さんと走る二つの人影があった。


「僕が右をやります! シンディは左を!」

「はっ、あたしに命令するとはいい度胸だ。面白い、乗った!」


 ルイシャとシンディは同時に剣を抜き放ち眼前に迫るタコ足に斬りかかる。


「くらえ、次元斬!」

「そこを退きな、波濤斬り!」


 二人の強烈無比な斬撃は巨大なタコ足を両断する。

 船員たちが興奮して歓声を上げる中、船は更に深く、奥に進んでいく。


 ルイシャは一旦仲間のもとに戻りみんなの無事を確認しようとする。


「見事だったぜ大将!」

「ありがとうヴォルフ、みんなも無事そうで良かったよ」


 ヴォルフ、シャロ、そしてアイリスの無事を確認し喜びルイシャだったが、そこで彼はヴィニスがいないことに気がつく。


「あれ? ヴィニスは?」

「ん? さっきまでそこにいたけどなあ」


 辺りを見渡したルイシャはふらふらと船の外側に歩くヴィニスを見つける。


「ちょっとヴィニス! 危ないよ!」

「え、ああ……ルイシャ兄か。でも俺、行かないと」

「何してんの! 危ないってば!」


 船の外に行こうとしてしまう彼をルイシャは引き止める。しかしその力は強くずるずると引きづられてしまう。


「この……止まってってば!」


 ルイシャは思わずヴィニスを力の限り投げて床に叩きつけてしまう。

 「ぶっ!」という声と共に床に顔をめり込ますヴィニスは、頬をさすりながら起き上がる。


「ちょっと何して……ん? 俺は何をやってたんだ?」

「よかった。正気に戻った」


 ホッとしたのも束の間、今度は船体がズン、と大きく揺れる。


「船底被弾! 穴が空いてます!」

「そんなもん気合いで塞げ!」

「そんな無茶なぁ!?」


 シンディと船員の声が遠くに聞こえる。どうやら絶体絶命の状態のようだとルイシャは感じた。


「とにかくヴィニス、意識をしっかり持って。君なら大丈夫だよ」

「わ、わかった」


 もうヴィニスが大丈夫だろうと思ったルイシャはシャロたちのもとへ戻ろうとする。

 彼女たちは揺れる船から落ちないよう、手すりをつかんで必死に耐えていた。


「シャロ! アイリス! 大丈夫!?」

「ルイ! こっちはだいじょ――」



 ルイシャの呼びかけに二人が返答しようとしたその瞬間、無数のタコ足が船体に着弾する。


「が、あ――――!?」


 回転する船体。右に左に揺さぶられ視界が何回転もする。ルイシャは咄嗟にしゃがみ床板に指を突き刺して体を固定するが、その衝撃に床板が耐えきれず砕けてしまう。


「しま……!」


 支える物を失ったルイシャは船から弾き飛ばされそうになる。


「うわああああああ!?」


 ルイシャだけじゃない、仲間も、海賊たちも、みんな我慢の限界だった。このままではマズい、みんな海に放り出されると感じた副船長のマックは操舵輪についている緊急用ブーストボタンを押す。


「みんなは死なせんっ!」


 急激にスピードを上げる船。マックの機転により急激に速度を増したグロウブルー号は、みなが船から放り出される前に、島の周りを囲む空気の膜に入ることが出来た。


 しかし……その後すぐにみんなは船から放り出され、散り散りになってしまうのだった。


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