第36話 再びの死地へ
お待たせしました!
ついに本作の漫画が配信開始となりました!
後書きに詳細を載せますのでぜひ見に来てくださいね!
「さて、死海地点に着く前にあんたらに伝えとかなきゃいけないことがある」
オアフルを出て三日後。
あと少しで死海地点に到達するといった所でルイシャたちはシンディに呼び出された。
「これからあたし達は無謀にも海底を目指すことになる。わかってるな?」
シンディの問いにルイシャ達は頷く。
海底に勇者の遺物があるなら取りに行かなくてはいけない。危険は承知の上だ。
「分かってるならいい。だがもちろん海賊にとっても海底に行くのなんざふつうのコトじゃない。前例はあるけどな」
「あるんだ」
冷静にルイシャがツッコむ。
確かにあることのほうが驚きだ。
「最近はそんなぶっ飛んだ話も聞かなくなったけど、昔の海賊は結構試したバカがいたみたいだ。沈没船に眠ったお宝っていうのはよく聞く話だろう?」
確かに、とルイシャたちは納得する。
「使うのは主に二つの魔道具。一つは風の魔石を使った魔道具、船に空気の膜を張って水が入ってくるのを防いでくれる。そしてもう一つが重力操作の魔道具、これで船体を重くして海に沈む。質問はあるか?」
「はい。空気の膜を張っても中の酸素は減っていくよね? それはどうするの?」
ルイシャの質問にシンディはニヤリと笑い、答える。
「いぃ質問だ。褒美に干し肉をやろう。酸素のことなら安心しな、船に積み込んだ植物『オゾンツリー』が解決してくれる」
「オゾンツリー?」
聞きなれないその単語に、ルイシャは干し肉を齧りながら頭を捻る。
「オゾンツリーは超高所にのみ生えている珍しい植物だ。どんな寒さにも耐えられる強さもその特徴の一つだが、一番の特徴は『驚異的な光合成能力』だ。この植物を積んでおくだけで船内の酸素問題は一気に解決する」
「そんな凄いんだ……! でも海底に行ったら太陽の光も届きづらくなっちゃうんじゃないの?」
太陽光がなければ光合成は出来ないはず。ルイシャはそう思ったがそれは杞憂であった。
「安心しな。オゾンツリーはランプの灯りでも光合成を行なってくれる。光源さえありゃ平気さ」
そう言ってシンディはルイシャたちに何やら緑色の固形物を渡し始める。長方形で大きさは三センチほど。嗅いでみるとほんのり草の匂いがする。
「それはオゾンツリーの葉を使ったガムだ。噛んでいる間水中でも呼吸が出来る。一個で半日は持つだろうから五個ずつ渡しとく。それと」
次にシンディが渡したのは青みがかった透明な石。宝石のようにも見えるそれは雫の形をしていて、太陽の光を浴びると綺麗に光り輝く。
「それは『人魚の涙』。一粒飲めば三日間水中で生活出来る代物だ。もし深海で海の中に放り出されるようなことになったらすぐにそれを飲みな。だが無駄遣いはするなよ、めちゃくちゃ高いからなそれ」
「わ、わかった。気をつけて使うよ」
ルイシャたちは彼女から貰ったものを落とさぬよう、しっかりとしまう。これから行くのは深海。彼らにとって未知の世界だ。今貰ったものはそんな世界で頼れる唯一の命綱だ。
「あたしはこの船の船長としてあんた達を守る義務がある。だから最大限力は尽くすけど……あんた達も各自自分の身を守って欲しい。深海は私ですら未知の部分が多い場所、何が起きても不思議じゃないからね」
その言葉にルイシャ達は頷く。それを見てシンディは満足そうに笑う。
「覚悟は出来てるって面だね。じゃあ向かおうじゃないか。あたしらのお宝を取りに」
決意を新たに一向は向かう。遥か海底、群青と漆黒の彼方へと。
コミックガルド、ピッコマ、めちゃコミ等の配信サイトにて『魔王と竜王に育てられた少年は学園生活を無双するようです』がフルカラーのタテ読みコミック版が配信されました!
初日10話公開され、今後は毎週金曜日に更新される予定です!
色鮮やかに描かれるルイシャたちの活躍をぜひ見に来てくださいね!