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第34話 仲間

「な、なんだこいつ……!」


 海賊たちはシンディのことに目が行っており、ルイシャのことなど気にも留めていなかった。

 しかし仲間を殴り飛ばされた所を見て認識が変わる。


 この少年は只者ではない、と。


「正気かてめえ! オアフルで喧嘩するなんてイカれてんじゃねえのか!」

「別にこの島を追い出されても僕は構いませんよ。それまでにあなた達は全員倒しますけどね」


 表情を崩さず、冷徹に言い放つルイシャに対し、海賊たちは戦慄する。

 隠れ島にこもる臆病者である彼らだが、腐っても海賊。危機的な状況にあったことはみな何度かある。


 それでも今日この日、彼らは海賊人生で一番自分の身に危険が迫っていると感じた。


「それに……おかしいと思いませんか? 規則ルールを破ったのに、まだ僕がその報いを受けてないのが」

「な、そういえば確かに……」


 この島の規則ルールは破られた瞬間、管理人がやって来るはず。しかしいまだこの場に管理人は現れていない。


「僕は『海賊同士の決闘を禁ずる』というこの島の規則ルールを聞いた時、もしかしたら『僕たちには適用されないんじゃないか』と思った。なんせ僕たちは『海賊じゃない』からね。シンディに協力はしてるけど、正式な仲間にはなってない」


 とはいえ試してみるのはリスキーなので、ルイシャは実行することはなかった。

 しかしこのような状況になったら話は別。危険を冒してでも賭けに出る価値はあった。


 そして無事、ルイシャは賭けに勝った。


「この状況で僕が『自分が海賊だ』と認識すればあなた達は僕に手が出せなくなるでしょう。でもそんな無粋なことはしないので安心してください」

「このガキ……! 馬鹿にしやがって! 海賊舐めんじゃねえぞ!」


 サーベルを抜き、ルイシャに飛びかかろうとする海賊。しかしそれより早くヴォルフが駆け出し、その海賊を蹴り飛ばす。


「大将が大丈夫なら俺も大丈夫だよな。ていうかやるなら教えてくれよ、早くぶん殴りたくてうずうずしてた所だぜ」

「……全くだ。俺に命じてくれればこのような下賎な者ども、漆黒の炎で焼き尽くしたというのに」


 ヴォルフに同調するようにヴィニスも海賊たちの前に躍り出る。


「ガキが三人集まった所で何が出来る! お前ら、やっちまいな!」


 海賊達は一斉に三人に襲い掛かり、店内で乱闘が起きる。

 それに参加することが出来ないシンディは、少し離れた所からそれを見ていた。


「……ったく、まさかここまでの大馬鹿野郎だったとはね。流石のあたしも予想できなかったよ」


 呆れたような、でもどこか嬉しそうな顔で彼女は呟く。

 するとそんな彼女のもとに、ルイシャが近づいてくる。ちゃんと背にはシンディの仲間を背負っている、まだ意識のないその船員を一旦安全な所に運びに来たようだ。


「よいしょ……と。シンディ、この人をよろしく。すぐに終わるから少し待っててね」

「ああ、任せな。それと……ありがとうね、あたしの仲間を助けてくれて。本当に感謝してる」


 被っている黒い三角帽子を外し、シンディは頭を下げる。

 普段は粗暴な印象を受ける彼女だが、その一連の所作には気品と誠意を感じられた。


「いいよ頭なんか下げなくても。さっきは『仲間じゃない』なんて言ったけど、僕はちゃんとみんなのことを仲間だと思っているからね」

「――――ふん、わざわざそんなこと言わなくたってあたしだって同じ気持ちだよ」


 ルイシャは彼女の言葉に頷いて答えると、踵を返して喧嘩会場に戻っていくのだった。

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