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第21話 時化と会話はよく揺れる

「あたしは七つの海を制覇した女海賊シンドバット! 気軽にシンディって呼んでね♪」

「……ルイ。こいつ一体なんなの?」

「はは……」


 謎の女海賊、シンディと出会ったルイシャは、一旦もといた船、セノ・テティス号に戻った。

 そしてシャロ達にシンディのことを紹介したのだが、突然現れた謎の海賊にみんな戸惑っていた。

 おまけに超スタイルのいい美人なのでシャロとアイリスは余計苛立っていた。これ以上のライバル出現は避けなければならない。


 そんな彼女たちの不穏な空気を察したのか、ルイシャは彼女を紹介する。


「この人……シンディさんは僕を助けてくれたんだ、信用できる人だと思う、たぶん」

「何だいルイシャ、あたしに『さん』づけなんかしちゃって。呼び捨てで呼んでくれていいんだよ?」

「いやでもまだ会ったばかしですし」

「やだねえ、あんなに汗を流して激しくぶつかり合った仲じゃないか、水臭いねえ」


 その言葉を聞いたシャロとアイリスの瞳から光が消える。

 生命の危機を感じたルイシャは背中から汗が噴き出す。や、やばい。このままじゃヤられる!


「け、剣でぶつかり合ったんですよね! いやああれは激闘だったなあ!」

「ふふ、そんなに必死に否定しなくてもいいのに」


 そう言ってシンディはくすくすと楽しそうに笑う。


「そんなに睨んでも盗ったりしないわ。あたしは良い海賊だからね」

「……良い海賊なんてものがいるのかは知らないけど、ひとまず信じてあげるわ」

「ふふ、ありがと」


 女性陣の間に流れる一触即発の空気にルイシャは胃をキリキリ痛める。

 そんな中、シンディは「さて」と仕切り直し発言する。


「じゃあ教えて貰ってもいいかしら」

「へ? なにをですか?」

「決まってるでしょ? あんた達みたいな子どもが何でこんな所にいるかを、よ」

「…………!」


 ルイシャは言葉に詰まる。

 ここは船が滅多に寄りつかない『船の墓場シップグレイブヤード』。こんな所に船がいるだけでも不自然なのに、しかも船に乗っているのは子どもばかり。傍から見たら明らかにおかしい。


 いったいどう言い訳したものかとルイシャが悩んでいると、ある人物が声を上げる。


「その質問には私が答えよう」


 そう言ってルイシャ達のもとに歩いてきたのはこの船の持ち主である商人のフォードだった。


「あんたは……」

「お初にお目にかかる、シンドバット殿。お噂はかねがね。私の名前はスタン・L(リー)・フォードと申します。しがない商人をしております、どうぞお見知り置きを」


 そう言ってフォードはシンディに頭を下げる。

 そして頭を下げながらルイシャのことを見ると、任せろとばかりにウインクして見せた。


「へえ、あんたがフォード海運の代表か。やり手だと聞いてるよ」

「あのシンドバット様に知って貰えてるとは光栄です。私も会社を大きくした甲斐があるというものです」


 着飾った言葉の下に刃を隠し、二人はお互いのはらの内を探り合う。


「で? 結局死海地点(ここ)には何の用で来たんだい? まさか観光ってわけじゃないよね?」

「新しい航路の下見ですよ。死海地点の側を安全に通ることが出来るようになれば、かなりの利益になります。そのための下見ですよ。彼らはその護衛として雇いました。確かに彼らは若いですがその実力は貴女も見たのではないですか?」

「ふーん……まあ筋は通ってるね」


 フォードの巧みな話術にシンドバットは追撃を止める。

 事実この船はルイシャ達の活躍でドレイクの攻撃に耐えることが出来た。並の護衛ではあっという間に船を乗っ取られていただろう。それほどまでにドレイク達の腕は高かった。


「ご理解いただけましたか、シンドバット殿。ドレイク達から救っていただいたお礼は後日必ず致しますので今日は一旦別れてもよろしいでしょうか? みな先の一件で疲れてますので」

「……ふん、そこまで言うならいいよ。今日は帰るとしよう」


 シンディの言葉にフォードは胸を撫で下ろす。毅然とした態度で接してはいたが、相手は歴戦の海賊シンドバット。そばに立っているだけで足がすくみそうになっていた。


「さて、じゃあ一旦お別れということだけど……」


 つかつかとルイシャに近寄るシンディ。彼女はルイシャまであと二歩くらいの距離で立ち止まると、海の上に貼られた巨大な結界を指差す。


「あの結界、あたしらならどうにか出来るよ」

「そうですか」

「冷たいねえ。あの結界の向こう側に行きたいんだろ?」

「僕は別にあれ(・・)の向こうに興味なんて……あっ」


 この時ルイシャは自分が重大なミスを犯したことに気がついた。

 恐る恐るシンディの顔を見ると、彼女は悪魔的な笑みを浮かべてルイシャを見ていた。


「へえ、やっぱり見えてる(・・・・)んだ」


 海に貼られた結界は秘匿されており、普通の人間には見えない。

 普通の人から見たらシンディの指差した先には広がる海原しかなかったのだが、一度結界を認識したルイシャには海原ではなく大きな結界を指差した様に見えてしまったのだ。


 シンディはその隙を突き、カマをかけたのだ。


「何で貴女も結界のことを知ってるんですか……? 貴女はいったい何が目的なんですか!」

「ふふ、海賊の目的なんてひとつしかないだろ?」


 シンディはそう前置き、自分たちの目的を話す。


「お宝だよお宝。あたし達は特大級のお宝を狙っているのさ。伝説の大海賊キャプテン・バットの秘宝をね……!」

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