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第18話 海戦

 ものすごい勢いで接近する三隻の海賊船は、瞬く間にルイシャたちの乗るセノ・テティス号を囲む。そして船に搭載された多数の大砲をルイシャたちに向ける。


「ガーハッハッハッハ! 港ではしてやられたが、海の上ではそうはいかんぞ小僧! 観念して投降するんだなァ!」


 そう言って下卑た笑みを浮かべるのは海賊の“人喰いドレイク”。

 彼の登場にルイシャは驚く。


「まさかこんな所まで追ってくるなんて。フォードさんたちはなるべく安全な所に避難してて下さい、奴らの狙いは僕のはずですから」

「わ、わかった。気をつけるんだぞ」


 船内にフォードと乗組員を非難させたルイシャはドレイクに話しかける。


「いったい何が目的ですか!」

「くく、決まってんだろ! 復讐だよ復讐! 海賊は舐められたら終いなんだよ! 必ずお前を見るも無惨に殺し、その全てを奪い蹂躙してやる!」

「……なんて奴だ」


 ドレイクから感じる悪意の強さにルイシャは寒気を覚える。

 あいつは本気だ。本気で僕を殺すつもりだ。そして宣言通り船も仲間も全て奪って悪虐非道の限りを尽くすんだろう。

 そんなことは絶対に許さない。


「三人とも、船を守るのを任せてもいい?」


 ルイシャの言葉にシャロたちは任せろと頷く。


「あんな奴、とっととぶっ飛ばして来て!」

「うん!」


 ルイシャは船を仲間たちに任せると、ドレイクの乗っている船めがけてジャンプする。

 甲板の床にヒビを入れるほどの力で跳躍したルイシャは百メートル以上離れたドレイクの船に無事着陸し、ドレイクと向き合う。


 ドレイクの部下たちはその派手な登場方法に驚きざわめくが、ドレイク本人に驚いた様子はなかった。彼は自分を倒してのけたルイシャの実力を評価してはいた。


「ようこそ我が愛船『クルードル・スクアーロ号』へ。歓迎するぜ小僧」

「長居する気はありません。二度と僕たちに近づかないのであれば何もする気はありませんが……どうしますか?」

「くく、そんなの決まってんだろうが」


 ドレイクは手に持った幅広のサーベルを振りかざし、大声で叫ぶ。


「てめえら! こいつを八つ裂きにしろ!」


「「「「「「ヨイサホー!!」」」」」」


 海賊たちは船長の命に従い、ルイシャに襲いかかる。

 全員が手にサーベルを持ち、息の合った動きで攻撃してくる。しかし、


「そこを退けっ!」


 近づいてきた海賊の一人を殴り飛ばすと、その周りにいた海賊もろとも吹き飛び海に落下する。海に落ちなかった者も床に激しく体を打ちつけ戦闘不能になる。

 なんと今の一撃だけで十人近くの海賊が脱落してしまった。


「はっは! これは想像以上の強さだな小僧。だがその元気どこまで持つかな?」


 船内からずらずらと子分たちが出て来て手に持ったサーベルの切っ先をルイシャに向ける。

 しかしルイシャは一切取り乱していなかった。


「数を揃えれば勝てるとでも?」

「思っちゃねえさ。おい、どんどん撃て!」


 ドレイクが指示を出すと、クルードル・スクアーロ号の船体側面に付けられた大砲から砲弾が発射され、シャロたちの乗るセノ・テティス号を襲う。


「しま……っ!」


 ルイシャは急ぎ砲弾に魔法を放とうとするが、ドレイクが間に立ちそれを邪魔する。


「おっと、お前の相手は俺様だ」

「邪魔だぁ!」

 ルイシャはドレイクのでっぱった腹を蹴り飛ばすが、ドレイクは吹き飛ぶことなくその場に踏みとどまる。


「痛っ……てえな小僧!」

「く、踏み込みが浅かったか!」


 船の上という不安定な足場では、攻撃力が大幅に下がってしまう。船に乗ったことのないルイシャなら尚更だ。

 しかし生活のほとんどを海の上で過ごすドレイクは、むしろ海の上の方が戦闘力が高かった。


「お前は仲間が海の藻屑となるのをここで見てなァ!」

「ぐ……!」


 放たれた砲弾は弧を描いてセノ・テティス号に迫る。

 無情にも着弾する……かと思われたがその寸前で船に残っていたシャロが反応する。


桜花護盾イージス・リーフ!」


 空中に桜の花弁の形をした巨大な盾が現れ、砲弾から船を守る。

 続けて何発も砲弾が放たれるが、シャロはそれら全てを防ぎ切って見せた。


「ひひ、どんなもんよ!」


 シャロは右腕に嵌めた腕輪をなでながら得意げに言う。

 勇者の遺品『庇護者の腕輪イージスリング』。

 大きな桃色の宝玉が埋め込まれたこの腕輪には盾を生み出す効果がある。勇者の力を持つものにしか扱えない代わりにその効果は強力。少ない魔力で堅牢な盾を生み出すことができる。


「ルイー! こっちは気にせずやっちゃいなさい!」

「ふふ、心強いね」


 後顧の憂いが無くなったルイシャは再びドレイクに向きあう。

 奥の手である大砲が無力化されたドレイクは見るからに焦っていた。


「や、やっぱり仲直りしないか?」

「問答無用っ!」


 ルイシャは拳を握りしめ、高速でドレイクに接近すると腹部めがけて正拳を放つ。


「気功術攻式一ノ型、隕鉄拳!」

「――――っがァ!?」


 メリリ、とルイシャの鋼の拳が腹部にめり込み、ドレイクは苦悶の表情を浮かべる。

 そしてそのまま拳を振り抜いて吹き飛ばし、ドレイクは甲板の上をゴロゴロ転がる。


「……がはっ! き、効いたぜ……」

「まだ動けるのか……しぶといね」


 次こそ決める。

 そう思って拳を構え直した瞬間、ドレイクの船の一部が大きな音を立てて爆発する。


 セノ・テティス号が撃たれた時と同じ音。ルイシャはシャロたちが反撃したのかと思ったが、セノ。テティス号がいる方向とは逆の方向が爆発した。


 つまり……他に船がいる。


「敵襲ーっ! 左舷に船影! あの船は……シ、シンドバットだ!」


 海賊の一人がそう叫ぶと、海賊たちはみな一様に驚き騒ぎ出す。

 船長のドレイクですら「マジかよ畜生!」と悪態をついている。


「いったい何が起きてるんだ……?」


 ルイシャは砲撃があった方角を見る。

 ものすごい勢いで近づいて来るのは海賊旗を掲げた海賊船だった。


 その船首に立つのはえんじ色の長髪が特徴的な女性だった。

 彼女は不敵に笑みを見せると一人呟く。


「さあて、楽しい戦い(パーティー)の始まりだ……!」


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