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第7話 人喰いドレイク

 シャロとアイリスが続々と海賊たちを倒している中、ルイシャは海賊たちのリーダーらしき人物と対峙していた。


「てめえ……ガキのくせに邪魔しやがって! 俺は泣く子も黙る海賊“人喰い”エドワード・ドレイクだぞ! それを分かってて手を出してんだろうなァ!?」


 出っ張った腹を揺らしながら、ドレイクは声を荒げる。

 その恐ろしい声に周りの人は震え上がるがルイシャは落ち着いていた。


「今すぐこんな行為はやめてください。さもなくば……」

「なんだァ? 言ってみろよ」

「あなたを倒す!」

「やってみなクソガキッ!」


 ドレイクは手にした銃をルイシャにむけ、躊躇なく引き金を引く。

 ルイシャは姿勢を低くして銃弾を避けるとその体勢のままドレイクめがけ駆け出す。


「竜王剣!」

 黄金に輝く剣を出したルイシャはドレイクに斬りかかるが、その一撃をドレイクはサーベルで受け止めてみせた。

「うおぁ!? なんだこのガキ!?」


 ルイシャの人並外れた力と速度にドレイクは驚くが、同時にルイシャも驚いていた。


(この人、強い! 将紋クラスの強さはあるぞ……!)


 両者は心の中でお互いの危険度を引き上げると、何度も剣をぶつけ合う。


「いい動きするじゃねえか! うちの海賊団に入らねえか!?」

「申し訳ありませんが遠慮しますよ……っ!」


 ドレイクの隙を突き、ルイシャは彼のだらしないお腹を蹴飛ばす。不意をつかれたドレイクは吹き飛び地面を転がる。


「痛……ってえなクソが! てめえらボケっとしてねえであいつを蜂の巣にしやがれ!」


 船長の命令を受け、手下の海賊たちは一斉にルイシャに銃口を向ける。ルイシャは高速で動きそれを回避しようとするが、自分の後ろにまだ民間人がいることに気づき動きが止まってしまう。


「しまっ……!」


 回避すれば民間人に当たってしまう、どうすればいいんだ――――と思考を巡らすルイシャ。

 そんな窮地を救ったのは意外な人物だった。


「海を荒らす愚か者どもよ、我が邪眼の前にひれ伏せ! 『縛』の邪眼“CHAIN”!!」


 現れたのは厨二病吸血鬼ヴィニスだった。彼は右眼に付けた眼帯を外し、その下に隠されていた漆黒の瞳で海賊たちを『視る』。

 すると突然海賊たちの動きが止まってしまう。


「な、体が動か……ない……!?」


 まるで見えない鎖で体を縛られてる感覚。後は引き金を引くだけだというのにそれすら出来なくなっていた。


「ヴィニス、いったい何したの!?」

「何って……これは俺の『邪眼』の力ですよ兄さん。我が邪眼の前では何人たりとも動くことは許されぬ、漆黒の闇に飲まれるがいい……ってことでトドメはお願いします」

「……つっこみ所が渋滞してるけど……今はいいか」


 ツッコミを諦めたルイシャは動きが止まった海賊たちに視線を移す。今が好機、ルイシャは右手に魔力を溜め、一気に解き放つ。


上位広域雷撃ハイ・ラジサンダーッ!!」


 ルイシャの手から放たれた巨大な雷が海賊たちに直撃する。避けるどころか防御することすら出来なかった海賊たちは口から煙を出しその場に崩れ落ちていく。


「ふう、こっちはなんとかなったね。後は……」


 と後ろを見てみると、既にそちらでもシャロとアイリスが全ての海賊を倒していた。

 二人はやれ私の方が倒しただのいや私の方が多いだの言い争っている。いったいなんでそんなに競っているんだろうとルイシャは首を傾げる。


「兄さん、船が」

「へ?」


 ヴィニスに言われ船着場を見てみると海賊船が動き出し、港から離れ始めていた。見れば倒れている海賊たちの中に船長がいない。どうやらルイシャの魔法を耐えきり逃げたみたいだ。その耐久力の高さにルイシャは驚く。


「どうする兄さん、船に乗り込むか?」

「いや……怪我してる人もいるしやめとこう。海の上は慣れてないしね」


 海の上は海賊の領域テリトリー。ルイシャは深追いするのをやめ、怪我をしてしまった人の救護に専念するのであった。

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