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第5話 海賊王の行方

 翌朝。

 たっぷりと休息を取ったルイシャたちは朝早く邸宅を出て、港町ラシスコを散策していた。


「ここもすごい人だね。商国ほどじゃないけど活気があるなあ」

「ここは観光地だからだよルイシャにい。特に暑いこの時期は新鮮な海産物がたくさん漁れるのでそれ目当ての人もたくさんいるんだぜ」

「へえ、ヴィニスは物知りだね」

「へへ、それほどでもないぜ」


 仲良さそうに話すルイシャとヴィニス。その様子を見たアイリスは強い違和感を覚え、ヴィニスに聞く。


「ヴィニス、いつもの口調はどこに行ったのですか? 今日は随分普通に話すじゃないですか」

「ルイシャ兄に言われて気づいたのさ。俺たちが扱う『闇の言語』は選ばれし者の前でのみ使うべきだと……! 常人が聞きすぎれば闇に飲み込まれる恐れがあるからな。一般人に危害が及ぶのは俺も心苦しい、ゆえに抑えると決めたのさ」


 後半は元に戻っていたが、どうやら彼はなるべく厨二言語を使わないようルイシャに丸め込まれたらしい。たった一日でこれほどまでにお利口になるものなのか、とアイリスは驚愕する。


「すみませんルイシャ様、お手を煩わせてしまって……」

「いいよこれくらい。僕も弟が出来たみたいで楽しいし」


 今までも彼を慕う男性はいたが、ヴォルフにしてもジャッカルの面々にしても歳下ではなかった。なのでヴィニスはルイシャにとって初めて出来た本当の弟分だった。


「それでヴィニス、勇者の遺物の方の調査はいったいどうなっているのですか?ルイシャ様に引っ付きたい気持ちはようく分かりますが、そろそろ自分の仕事をして頂けますか」


「ひ、ひゃい……」


 アイリスの放つ『圧』に押し負け、ヴィニスは一旦ルイシャのもとから離れる。

 彼もまだ十四歳、姉的存在であるアイリスには頭が上がらなかった。


「えー、じゃあある程度話は行ってると思うけど、頭から説明するぜ。ここラシスコには古くから伝わる伝説がある。それが『海賊王キャプテン・バットの財宝伝説』だ」


 その名前はルイシャも聞いたことがあった。


 キャプテン・バット。およそ百年前に活動していたその海賊は、お伽噺になるほどの有名人だ。勇者オーガほどではないがその武勇伝は歌や劇にもなっている。

 海賊でありながら民間人を襲わず、時には街を守ため怪物とも戦ったと言われる義の海賊キャプテン・バット。その海賊がよく使っていた港が、ここラシスコなのだ。


「キャプテン・バットは生前『勇者の宝』を手に入れたと言っていたらしいんだが。勇者の宝はおろか、彼が持っていたはずの大量の財宝もまだ見つかってないらしい」

「そういえばキャプテン・バットってどこで亡くなったの? 戦いで死んだって話は聞いたことないけど」


 ルイシャが質問すると、ヴィニスは申し訳なさそうに答える。


「実がそれも分かってないんだ。ここラシスコに滞在した記録を最後に彼の消息はプツリと消えた。なんでも最後に『宝島を見つけた、そこに行く』と言い残してそれ以降姿が確認されてないらしい。宝島が無かった説や宝島で幸せに暮らした説などがあるが、なんせ百年も前の話。断定できる証拠は見つからなかった」


「そうなんだ……」


 ヴィニスの話を聞き、ルイシャは少し憂鬱になった。

 なんせ今回は手がかりが少なすぎる。一番の直近の情報が百年前では探しようがない。

 魔族や竜族であれば百年以上生きることも容易だが、ラシスコはヒト族の街。当時生きていた人などもういないだろう。


 いったいどうするべきか。ルイシャが思考を巡らしたその瞬間、近くで女性の悲鳴が上がる。


「なんだ!?」

「大将! あっちの方からだぜ!」


 そうヴォルフが指さしたのは船が停泊している波止場の方だった。

 何が起きているかは分からない。でも放っとくことなどできないルイシャは、一旦考えるのをやめて悲鳴がした方角へ走るのだった。


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