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第42話 感謝

 絶え間なく襲いくる痛み。

 辛い、苦しい。その思いも確かにあるのだが、湧き上がる感謝の気持ちがそれらを凌駕した。


(こんなに痛いものが友人に襲いかからなくて本当に良かった。……私の力を見極め育んでくれた友人ルイシャ、強く産んでくれた両親、それら全てに感謝を――――)


 やがて魔法の雨は止み、砂埃の中からベンの姿が現れる。

 強靭な肉体は数えきれない魔法を全て受け止め切っていた。いくつもの切り傷や火傷の痕が見られるがそれら全ては屈強な筋肉の鎧によって防がれ体の奥には達していなかった。


「馬鹿な……あれだけの攻撃を喰らって立っていられるはずが……」


「この筋肉はもう二度と理不尽に屈さぬために鍛え上げた。さすれば貴様らのような者に屈するわけがない……!」


 ベンは右拳をしっかりと握ると、思い切り地面を殴りつける。

 すると大地はひび割れ帝国学園の生徒達の足元も崩れる。


「なっ!」

「うおっ!」


 突然足元が崩れたことで彼らの意識はそちらに向く。

 その隙をついてベンは上空にジャンプする。


「肉体もそろそろ限界……この一撃で決める!」


 残る全ての力を右足の大腿筋に込める。

 そして力の限りその足を地面めがけ振り下ろす!


叡智に満ちた蹴り(ウィズダム・シュート)ッ!」


 足の筋力は腕の三倍。

 彼の怪力を存分に活かしたその蹴りはものすごい衝撃波を生み出し下にいた帝国の生徒達を木の葉のように吹き飛ばした。


「うわああああっ!」


 ある者はその衝撃波をまともにくらい、またある者は上空に飛ばされ地面に体を強く打ち付け意識を失った。

 ベンが地面に着地する頃には帝国の生徒は全員戦闘不能になり地面を転がっていた。それを確認したベンは険しかった顔を緩めるとそのまま地面に倒れ……


「おっと」


 る寸前でヴォルフによって体を支えられる。


「……なんだ体はもう大丈夫なのか?」


「誰かさんが頑張りまくってくれたおかげでたっぷり休めたからな」


「そうか……それは良かった」


 ぐったりとするベンをクラスメイトたちの元へ連れて行くヴォルフ。その間にベンの体は元のサイズに戻る。


「ベンくん大丈夫!?」


 一番に駆け寄って来たのはローナだった。彼女はベンの傷ついた体に手を当てるとすぐに回復魔法で彼の体を治し始める。


「ありがとう、だいぶ痛みが和らいできたよ」


「ううん。こっちこそありがとうね。ベンくんのおかげでみんな助かったよ」


 見ればクラスメイトたちはみんな立ち上がれるほどに回復していた。

 ベンが戦っている最中に毒の成分をチシャが分析しローナが治していたのだ。即興でやったのでまだ完全に治癒できたわけではないが、それでもみんなの顔色はだいぶ良くなっている。


 ローナの回復魔法によりベンの体はみるみる内に回復していく。すると彼の元へシャロとアイリスも近づいてくる。


「ありがとう、本当に助かったわ」


「こちらこそみんなを守ってくれてありがとう、おかげで戦うことに専念出来た。……ところでやはり行くのか?」


 ベンの言葉にシャロとアイリスは頷く。


「あいつを一人にはしておけないからね。今から走って間に合うとは思わないけどやれるだけやってみるわ」


「そうか……よろしく頼む」


「任せなさい」


 力強くそう言ったシャロはアイリスとヴォルフを連れ、一人戦っているはずのルイシャの元へ急ぐのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 間に合わないどころか瞬殺必至
[一言] 正直、駆けつけるまでもなくルイシャなら大丈夫だと思う
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