第24話 貴族学園
ルイシャとアイリスが仲良くデートをしている頃、他のクラスメイトたちは会場の選手控室に集まっていた。
「みんな、次の対戦相手が分かった。二回戦の相手は『グランディル貴族学園』。王都の中にある学園だからその名前を一度は聞いたことあるだろう」
クラスメイトたちの中心でそう話すのはユーリ。
ルイシャがいない間は彼がみんなをまとめる役割を担っていた。
「あー、確かに聞いたことがあるわね。貴族のボンボンたちが通う学園だったかしら」
「その通りだよシャロ。グランディル貴族学園はその名の通り貴族だけが通うことが出来る学園だ」
そう説明するユーリの顔は少し苛立っている様子だった。
いつも穏和な彼がこのように表立って不満そうにするのは珍しい。
「どうしたのよあんた。何かその学園と因縁でもあるの?」
「……あの学園は父上の理想とする『誰もが平等に勉強できて、どんな身分や種族からでも才能を見出せる学園』から大きく逸脱してるんだ。家柄で成績が決まって汚い政治争いばかりやってる前時代的で封建的な学園、それがグランディア貴族学園だ」
ユーリの父親である国王フロイは魔法学園を作る際、すでに存在していた学園を解体し身分ではなく実力で成績を決める今の魔法学園に作り直したのだ。
しかしそんな動きに一部の貴族たちは反対し、国王の説得にも応じず無理矢理貴族学園を創立した。その貴族連中は国王フロイにいい感情を持っておらず今でも彼の政治を邪魔することがある。
父親を敬愛するユーリにとってそんな彼らは憎い相手なのだ。
「貴族には魔力量が多い者が多いからおそらく貴族学園の生徒も同じだろう。でもどうせ貴族学園ではロクな授業はしてないはずだ、常日頃ルイシャに鍛えられている僕たちの敵じゃない」
そう言ってユーリは悪そうに「ふふふ……」と笑う。積年の恨みが詰まったその笑みに従者のイブキでさえも「うわぁ……」と引いている。
「それで? いったい誰が出るの? まさかあんたが出るってわけじゃないでしょ?」
「ふふふ、何言ってるんだシャロ。貴族学園の者たちの鼻をあかせるまたとないチャンスじゃないか。当然、僕が出る」
ユーリのその言葉にクラスメイトたちはざわめく。相手は国王のことを快く思ってない貴族たちだ。当然ユーリのことも敵視しているだろう。
「あんたがわざわざ出場するなんてスライムが剣持ってくるようなものよ。危険すぎるでしょ」
「ま、確かに向こうはそう思うだろうね。でも向こうの連中は知らない、僕が魔法学園でどれだけルイシャに扱かれたのかを、ね……」
くつくつと笑うユーリにどん引くクラスメイトたち。もはや誰も彼を止めようとする者はいなかった。
「はぁ、王子が出るっつうなら俺っちが出ないわけにはいかないっすね。面倒くさいっすけど」
兜を揺らしながらかったるそうに言うイブキ。ユーリの従者であるイブキが出ないわけにはいかない。
そして残る一人にはシャロが手を挙げた。
「ルイもいないし暇だから私が出るわ。邪魔しないから安心して頂戴」
「シャロが出てくれるとは心強いよ。ピンチになったらよろしくね」
「はいはい、気が向いたら助けてあげるわ」
こうして天下一学園祭の二回戦は始まるのだった。