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第12話 デート

 入学試験を受けた翌日の朝。

 ルイシャはとある宿屋のベッドの上で目を覚ました。


「んん~~」


 体を起こし伸びをする。

 昨日は色々あって疲れたがふかふかのベッドで寝られたので元気いっぱいだ。


 ユーリが紹介してくれた宿屋は高級な宿屋ではなかったが、細かいところにまで配慮の行き届いたいい宿屋だった。

 目を覚ましたルイシャは軽く朝食を済ますと町中へと出かける。


 入学試験の結果発表は明日。

 今日は町を散策することにしたのだ。


「……あれ?」


 宿を出たルイシャはすぐにある人物を見つけ声を上げる。

 その人物はルイシャを見つけるとぶっきらぼうな感じで声をかけてくる。


「……おはよ」


「お、おはよう。シャロ」


 そこにいたのは勇者の子孫、シャルロッテ・ユーデリアだった。

 突然の出来事にルイシャは戸惑う。

 あれ? 昨日会う約束なんかしたっけ?


「なによ、急に来ちゃ迷惑?」


「いや、そんなことないよ。来てくれて嬉しいナー」


「ならいいのよ」


 そう言ってシャロはニカッと健康的な笑みを見せる。

 それを見たルイシャは少しドキッとしてしまうのだった。


「町を見に行くつもりなんでしょ? 私が案内してあげるっ」


 そう言ってシャロはルイシャの手を取り町へ繰り出す。


 服を見たり、美味しいものを食べたり、喫茶店で休憩したり……

 年頃の少年少女がしそうな事を日が暮れるまで楽しんだ。


 それはルイシャにとってとても刺激的で、そして楽しいひと時だった。

 しかしその時間が楽しければ楽しいほどシャロに『負い目』のようなものを感じていた。


 なぜならルイシャの一番の目的は、『勇者を倒す』ことなのだから。


 封印を解く方法で最も一般的な方法はその封印をかけた者を倒すことだ。

 そうすればほとんどの封印は解ける。

 だというのに未だに伝説の勇者『オーガ』のかけた封印は解けていない。コレに関して封印術にも詳しい魔王テスタロッサはルイシャにこう話していた。


 ――――――――


「私とリオを封印した勇者は……生きている可能性があるわ」


「え? でも二人がオーガが生きていたのは300年も前だよ?」


「ええ、普通の人間ならそんなには生きられないわ。でも……勇者(あいつ)は普通じゃない。何かしらの魔法で寿命を伸ばしたり、無限牢獄のような空間を作り出して加齢から身を守っている可能性もあるわね」


「そういう可能性もあるんだね……。じゃあ頑張って勇者を見つけ出して僕がぶっ飛ばせばいいんだね!」


「ふふ、楽しみにしてるわよ」


 ――――――――


 勇者オーガはルイシャにとって宿敵のような存在だ。

 しかしシャロにとっては尊敬するご先祖様。なのでルイシャは後ろめたいのだ。


「どうしたのルイ、暗い顔して」


「え? いやなんでもないよ」


 心配して顔を覗き込んでくるシャロにルイシャは慌てて取り繕う。


「そ、そういえばシャロはオーガ、さんの事をどれくらい知ってるの?」


「あら、あんたも勇者ファンなの?」


「そ、そうなんだ実はね。ははは」


「まあ別に教えてもいいけど私もそんなに詳しいわけじゃないわよ。なにせ300年も前の人だからね。色んな伝説を聞かされて育ったけど別にみんなが聞く内容と変わらなかったし」


「そうなんだ……」


 内心ガックリと肩を落とすルイシャ。

 シャロは嘘をつけるほど器用な人間ではないので本当に知らないのだろう。


「あ、でもご先祖様の残したアイテムならいくつか家にあったかも」


 それを聞いたルイシャは食い気味に詰め寄る。


「それ本当!?」


「え、ええ。私の持ってるこの剣『フラウ=ケラソス』もそうよ。ご先祖様が使ってた剣らしいわ」


 そう言ってシャロは腰に挿している剣を引き抜いてルイシャに渡す。

 その剣は桃色にきらめいており、見ているだけで心が安らぐ不思議な剣だった。


「すごい……」


 その剣の持つ力に思わずルイシャはそうこぼす。

 しばらくその剣に見入っていると、不思議なことが起こる。


「ん?」


 その剣から不思議な力がルイシャの体の中に流れ込んできたのだ。

 魔力でも気でもない不思議なあたたかい力。それはルイシャの体の芯に溶け込み、やがて感じなくなった。


「今のはいったい……?」


 体の具合を確かめてみるが変わったところはなにもない。

 別に魔力や身体能力が上がったわけでもない。不思議がるルイシャだがいくら考えてもわからなかった。


「ちょっとどうしたの? もう返してもらってもいいかしら」


「あ、うん。ありがとう」


 ルイシャは釈然としないまま剣を返す。

 いったいさっきのは何だったのだろうか。


「ルイ? 他に行きたいところはないの?」


「え、ああ。もう今日は遅いし帰ろうかな。明日は学園に行かなきゃいけないしね」


 そう言って宿に帰ろうとしたルイシャだが、シャロはその袖を掴んで引き止めると、上目遣いでルイシャの目を見ながらとんでもない事を言い出す。


「ねえルイ……一緒に部屋行っても、いい?」


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