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第11話 思わぬ遭遇

まりむそ1巻記念イラストを公開します! テス姉のサンタ姿です!

書籍にも彼女のイラストが多数載っていますのでお楽しみに!

挿絵(By みてみん)

 永世中立国セントリア中央庁。

 大きな建物が乱立するセントリアでも抜きん出て高いその建物の中をルイシャたちは進んでいた。


「うわー、こんな建物あるんだね。初めて見たよ」


 ルイシャはそう言って物珍しそうに辺りをきょろきょろと見渡す。

 通常建材には木材や石材が一般的に使われるが、ここセントリアで使われる建材は『金属』が多い。その為床も天井もメタリックな見た目をしている。見慣れてないルイシャが目を奪われるのも無理はないだろう。


「セントリアの金属加工技術は大陸一なんだ。優秀な魔法職人が多いんだろうね、羨ましい限りだよ」


 ユーリはそうボヤきながら先頭を歩く。


「まだ王国は前時代的な考えの人間が多い。建物を魔法で作るという発想がない、もしやろうとしても今いる普通の職人たちが騒ぐだろうね。『仕事が魔法に奪われる』ってね」


 魔法は戦いの道具、という認識はいまだに根深い。

 古くから魔法と密接に関わりのある魔族は生活にも頻繁に役立てているのだがヒト族の社会はそうはいかない。

 便利な魔法技術が発達しそうになるとそれに反対する勢力が必ず現れるのだ。ユーリの父親である国王フロイは魔法技術を王都内で様々な分野で活用しようとしているのだが、その度に現れる反対勢力のせいで思うように進められなかった。


「商国の魔空挺を見て再認識したよ。やっぱり王国うちは遅れてる。急ぎ魔法技術の発展を推し進めないと帝国に足を掬われてしまう」


 ユーリの言う帝国というのはキタリカ大陸の西部に存在する大国『ヴィヴラニア帝国』のことだ。長年王国と仲の悪い帝国だが、ここ十数年で魔法技術が大幅に向上しているのだ。

 当然フロイ国王はこのことに危機感を感じており色々対策を講じているのだが、大胆な政策を取る現皇帝には及ばず後塵を拝している。


 どうにかしてその差を埋められないか、ユーリはぶつぶつと呟きながら歩いていると前方からとある人物が姿を表す。


「ん? おお、やけに色男が歩いてると思ったらユーリくんじゃあないか! お父様の付き添いかな?」


 赤い煌びやかなマントをたなびかせながらそう言ったのは長身で整った顔立ちの男性だった。爽やかさと野性味を併せ持ったその男性は白い歯を輝かせながらユーリに近づいてくる。

 その男性の後ろには黒い軍服に身を包んだ軍人がいた。マントの人物は知らないルイシャだったが、その軍人には見覚えがあった。


「うそ、あの人ってもしかしてクロムさん……!?」


 ルイシャの言う「クロム」とは帝国最強の剣士「クロム・レムナント」のことだ。その姿は直接見たことはないがカードゲーム『創世王』で何度も目にしている。黒い軍服に目深に被った軍帽。そして腰には幅広の黒剣と特徴的な見た目だ、人違いということはないだろう。


「ねえイブキ、あの人って……」


「ルイっちの想像通りあの剣士は“帝国のつるぎ”クロムその人っす。そしてクロムを連れて歩ける人はただ一人、ヴィヴラニア帝国現皇帝『コバルディウス・アグリシヴィア』ただ一人っす」


 その名前を聞いたルイシャはゴクリと唾を飲み込む。

 皇帝コバルディウスのことはルイシャもよく知っている。“時代の寵児”や“帝国を百年進ませた男”などの異名を持つ、やり手の皇帝だ。お調子者且つ新しいもの好きである彼は魔法技術をどんどん自国に取り込み、帝国は急激な発展を遂げた。

 当然王国と同じく反発する者も多く現れたのだが……皇帝は血の粛清を持ってそれらを黙らせた。普通そのようなことをすれば更に反発する者が現れるのだが、帝国には最強の剣士クロムがいる。そのせいで帝国に反旗を翻すような愚かな民はいないのだ。

 皇帝はそのことまで織り込み済みで粛清を行なっている。ユーリはそんな彼のことを強く警戒していた。


「お久しぶりです陛下、ご健在のようで何よりです」


「はっは! そんなに畏まらなくてもいいんだぞユーリくん。どうせ君も私のことを邪魔に思ってるんだろ?」


「そっ、そんなわけないじゃないですか」


 皇帝の思わぬ言葉に流石のユーリも言葉が詰まる。そんな彼の反応を見て皇帝はにやにや笑う。

 食えない人だ。ユーリは心の中で舌打ちをする。一見何も考えてないような言動の裏に秘められた知略者の顔。やはりこの人物は危険だとユーリは再認識する。


「ところで君の父上はどこにいるんだい? まさか一人で来たわけじゃないだろう?」


「……父上なら来てませんよ陛下。今回の学園祭には私がエクサドル王国の代表として来ています」


「……ほう」


 その瞬間、皇帝の纏う空気が一変する。

 今までの穏やかでおちゃらけた雰囲気が消え失せ、その下から冷酷な彼の本性が姿を表す。


「今回皇帝である私が来るのは分かっていた筈。その上で君が来るということの意味、これは帝国に対する侮辱行為と捉えていいんだろうね」


 前に上げた二つの異名の他に“粛清帝”の異名も持つ彼は、射殺すような鋭い目つきでユーリを見据えそう言い放つのだった。

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[一言] 面白い! でも、できれば投稿を早くしてほしい! お願いします!
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