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第11話 支援者

「闇帳」が崩れ去り、観客たちの前に姿を表したルイシャとシャロ。


するとシャロはその場で自分の負けを宣言した。

突然のことにそれを聞いた観客たちはザワつくが、ルイシャの圧倒的な実力を目の当たりにしているので誰も不思議には思わなかった。


試験官のレーガスは二人の元へ近づき尋ねる。


「本当にいいんだねシャルロッテ君」


「はい、私の負けで構いません。だからルイの入学は取り消さないで下さいね」


「いや、ルイシャ君を入学させることは歓迎なのだが……その、君が負けたときの約束はいいのかい?」


「「あ」」


それを聞いたルイシャとシャロは同時に声を出す。

すっかり忘れていた。シャロが負けたときの約束を。


『あんたが勝ったら……そうね、奴隷にでもなんでもなってあげるわ』


決闘の決め事は絶対。

つまりシャロは負けた時点でルイシャの奴隷になってしまうのだ。


「あ、あわわわ。その僕、奴隷いらないんで大丈夫ですよ?」


「ううむ、しかし決闘の約束は必ずなのだよルイシャ君」


慌てるルイシャと顔を真っ赤にするシャロ。

やがてシャロは覚悟を決めヤケクソ気味に叫ぶ。


「な、なるわよ! 私シャルロッテ・ユーデリアは偉大なる勇者『オーガ』の名にかけてルイシャの奴隷になります! これでいいわね!」


こうしてルイシャの怒涛の入学試験は幕を閉じたのだった。









「いやあ、大変だったねルイシャ」


試験を終えたルイシャがシャロと共に会場を後にしようとしたところ、金髪の青年ユーリが話しかけてくる。


「そうだね。まさかこんな事になるなんて思わなかったよ」


「ふふ、それにしてもあのお転婆勇者が誰かに従うことになるとは思わなかったよ」


ユーリはルイシャにべったりくっつくシャロを見ながら楽しそうに笑う。


「うっさいわね、しばくわよユーリ」


シャロは悪態をつきながらもルイシャのそばを離れずベッタリだ。

動くたび形の良い胸が背中に当たるのでルイシャはその度ドキドキしている。


「あ、そういえばシャロとユーリはどういう関係なの? 仲良さそうだけど」


ルイシャが何気なくそう質問すると、シャロは呆れた目でユーリを見ながら喋りだす。


「はあ、あんたもしかしてルイに何も言ってないわけ? 性格悪すぎ」


「ふふ、最初に話しちゃったら距離ができちゃうでしょ? 仲良くなりたかったから黙っていたんだ」


「な、なんの話?」


二人の話についていけないルイシャがしびれを切らして声を出すと、ユーリは「ごめんごめん」と謝りながらルイシャの方を向く。


「改めて自己紹介をさせてもらうよ。僕の名前は『ユーリ・フォン・エクサドリア』。ここエクサドル王国の第一王子なんだ」


「え、ええええぇっ!!??」


想定外のカミングアウトに驚くルイシャ。

しかしユーリの常人離れした気品と美貌は確かに王子様級だな。とルイシャは思った。

二人が知り合いなのも納得だ。王子と勇者の子孫だったら出会う機会も多いだろう。


「ユーリ、いやユーリ様って呼ばなきゃ駄目だよね」


「やめてくれよルイシャ。友人に様付けでなんてしないでくれ。そうなりたくないから僕は身分を明かさなかったんだから」


ユーリにそう頼まれたルイシャは「……わかったよ、ユーリ」と渋々それを了承する。


「さて、ところでルイシャ。今日の宿はあるのかい?」


「あ!! そういえば考えてなかった!!」


ルイシャはなんとなく流れで試験に参加したのでこの後のことを何も考えていなかった。

そしてもう一つ大事なことを思い出す。

それは入国証を持ってないのに入国してしまったことだ。


もし学園に入学するとなると遅かれ早かれバレてしまうだろう。

そうなったらまずい。


「ど、どうしよ」


「どうしたんだルイシャ?」


顔を青くし汗を流し始めるルイシャにユーリが心配し話しかける。

隠しても状況が悪くなるだけだと考えたルイシャは、包み隠さずユーリに話すことに決めた。

入国証を持ってないこと、宿が無いこと、お金もそれほど持ってないこと。


ルイシャはそれらを全部ユーリに話した。


「ふうん、そんな事があったんだね」


「うん。どうしたらいいかな?」


最悪国からすぐ出てかされるかも、とルイシャは落ち込む。

せっかく勇者の子孫と仲良くなることが出来たのにまた振り出しか……。


しかしユーリから出たのは意外な言葉だった。


「わかった。僕が全部なんとかするよ」


「えぇ!?」


「宿は僕が贔屓にしてるとこがあるからそこを使うといい。ご飯も出るからお金の心配もいらない。入国証もちょっと時間がかかるけどなんとかなると思うよ」


ルイシャの悩みをスラスラと解決してしまうユーリ。

それを聞いたシャロは胡散臭そうな目でユーリに突っ込む。


「怪しいわね。あんたがルイにそこまでする理由があるの?」


「もちろんあるとも。ルイシャは魔法学園に必要な人材だ。彼が入学するためならなんだってするよ」


ユーリのその言葉にルイシャが反応する。


「僕が、必要?」


「ああ、今王国は深刻な人材難でね。一人でも多くの優秀な人材が欲しいんだ。だから魔法学校に一人でも多く優秀な人が入ってほしいんだ。そうすれば魔法学園の評判も上がり他国から優秀な生徒がどんどん集まってくる」


なるほど。

だから僕にここまでしてくれるのか。

ユーリの言葉にルイシャは納得する。


だけどルイシャには魔王と竜王を助けるという使命がある。

のうのうと学園生活なんてしていいのだろうか? と思ってしまう。


するとその思考を先読みしたかのようにユーリが畳み掛けてくる。


「もちろんタダで入学してもらおうなんて思っていないよ。もし入学してくれるなら僕が君の支援者(パトロン)になろう。ルイシャが何をしたいのかは知らないけど僕は役に立つと思うよ」


確かにユーリは頭も切れそうだし、何より権力を持ってる。彼が協力者になってくれればかなり心強いだろう。


王国から出て一人で頑張るか、この国に残ってシャロとユーリに協力してもらうか。


ルイシャはしっかりとよく考え……答えをだした。


「……わかった。ユーリの話に乗るよ。これからよろしく」


「ふふ、君ならそう言うと思ったよ」


そう言って二人は握手を交わしたのだった。


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