第14話 勝負の理由
生徒会室からでたルイシャたちは教室に戻った。
ちなみに生徒会と勝負している間に午後の授業は終わってしまっていた。Zクラスにはまばらに生徒が残っていたが、そのほとんどは帰ってしまったようだ。
「ふう、やっと帰ってこれたね。それじゃあ『天下一学園祭』に出場するメンバーを決めようか」
度々話題に出た『天下一学園祭』というワード。これは年に一度開かれる武闘大会の名前だ。
ここキタリカ大陸に存在するほぼ全ての学園が参加し、自らの学園から優秀な生徒を選び競わせる。
ルールは三対三のチーム制。先にチーム全員が戦闘不能になるか、リタイアした方の負けとなる。
この大会で優勝したものには豪華な景品が進呈されるが、参加する学園が本当に欲しいのはそれではない。
参加する学園が本当に欲しいのは『知名度』。この大会は注目度が高く、優勝すればかなりの宣伝効果が見込める。来年度の入学者の数も激増するだろう。
なので大陸各地の学園はこの大会で結果を残そうと躍起になっているのだ。
なのでこの大会は毎年レベルの高いものとなっている。いくらルイシャが参加すると言っても油断は禁物だ。慎重にメンバーを決めなくてはいけない。
真剣な顔で考えるルイシャを見て、ヴォルフが疑問を投げかける。
「ところでなんでその学園祭に執着してるんですか? 確かに他の学園の奴らと戦えんのは楽しそうですが、メンバーを決めるのなんざ生徒会の連中に任せりゃいいじゃないですか」
「それは違うよヴォルフ、この学園祭は確実に優勝しなきゃいけないんだ」
そう言ってルイシャはヴォルフに天下一学園祭の詳細事項が書かれた紙を手渡す。生徒会室に置いてあったものを何枚か貰っていたのだ。
「この学園祭の優勝賞品を見てごらん」
「えーなになに、優勝賞品は……『リゾート地の一週間宿泊券』? へえ、太っ腹じゃねえか。でも大将、こんなもんがそんなに欲しいんですか?」
「重要なのはその『リゾート地』がどこを指すかなんだ。天下一学園祭と提携しているリゾート地は大陸各地にあるんだ。その中には法国アルテミシア領土内のリゾート地『ラシスコ』も含まれているんだ」
港町ラシスコ。
キタリカ大陸内でも有数のリゾート地であるその町は、巨大なビーチが近くにあるリゾート地だ。
美味しい魚介類と穏やかな海が特徴のリゾート地だが、ルイシャの目的はそこではない。
「お昼に話した『海賊王キャプテン・バット』の伝説はこのビーチの近くの海域の話なんだ。普通なら王国民の僕達は法国領に大手を振って入れないんだけど……」
「学園祭で優勝しちまえば堂々と入れる……ってわけだな? さすが大将! そこまで考えてたとはな!」
「うん、僕たちならバレずに法国領に入ることはできると思うけど、ユーリに迷惑かかったら悪いからね」
仕方がない理由があるとはいえ、既に何度も友人の胃を痛めてることをルイシャは反省していた。それに天下一学園祭で優勝すれば魔法学園の評判も上がるのでユーリも喜ぶだろう。
「一歩ずつ確実に進もう! まずは天下一学園祭を優勝しよう!」
「「「おー!!!」」」
こうしてルイシャたちの新しい戦いが幕を開けたのだった。