第13話 未来の生徒会長
生徒会長レグルスに勝ったルイシャは、生徒会の三人に連れられ生徒会室に来ていた。
もちろんシャロとアイリスとヴォルフも一緒だ。
「いやはや、実に見事な戦いぶりだった。こうも見事に負けては言い訳のしようもない」
パンパンに頬を腫らしながらレグルスはそう言う。
負けたというのにその顔はどこか嬉しそうだ。
「さて、約束通り生徒会に入るのを認めよう。君ほどの実力者ならば来年には生徒会長になるのも夢ではないだろう」
魔法学園の生徒会長は、生徒からの投票で決まる。しかし誰も生徒会長の候補になれるわけではなく、生徒会に既に入っている者しか候補者になれないのだ。
そして生徒会に入るにはルイシャが受けた勝負でいい成績を残さなければならない。実力と人望、両方兼ね備えなければ生徒会長にはなれない。
……のだが、そもそもルイシャが勝負を受けたのは生徒会役員になりたかったからでも生徒会長になりたかったからでもない。
「あの、ですから僕は生徒会に入るつもりはないんですよ」
「「「ええ〜〜!?!!??」」」
再び生徒会に入るのを拒否され、生徒会の三人は目を剥いて驚く。どうやら照れ隠しで入らないと言ってると思っていたみたいだ。
「じゃあなんで勝負を受けたんだ?」
「会長さん、言ってましたよね? 『天下一学園祭』の出場メンバーを決めていい、って」
「ああ、確かに言ったが……そんなものが欲しいのか?」
「はい。どうしてもそれが必要なんです、お願いできないでしょうか」
真剣な顔つきでそう言うルイシャを見て、レグルスは「ふふ」と笑う。
「いいだろう。未来の生徒会長の頼みだ、何とかしようじゃないか。近いうちに出場メンバーを決めて教えてくれ」
それを聞いたルイシャの顔がパッと明るくなる。
「本当ですか! ありがとうございます!」
目標を達成できたルイシャはシャロたちとハイタッチして喜びを分かち合う。それほどまでに天下一学園祭のメンバーを決めるという行為はルイシャにとって大きな意味を持つ。
「それじゃあすぐにメンバーを決めて報告に参ります。あ、せっかく生徒会にお誘いいただいたのに断っちゃってごめんなさい。何かお手伝いできることがありましたら遠慮なく言ってください!」
「それはどうも。しかし君はいつか生徒会に入ると思うよ。君がこの学園を愛している限りは……ね。その時を楽しみにしてるよ」
「むう、だから入りませんって」
ルイシャは頬を膨らませて不満そうにそう言うとシャロたちと共に生徒会室を後にし、部屋の中には生徒会の三人のみになる。
「いやー、それにしてもすごい子だったね。あんな子がいるならばこの学園は安泰だ」
「私、まだテストで負けたの引きずってますよ……ぐすん」
「スモウの強い奴に悪い奴はいねえ。あいつは凄え奴になるぜ」
生徒会の面々は口々にルイシャのことを褒める。
負けたことは悔しいが、自分たちが愛するこの学園を、生徒会を守れる人物を見つけられたことが嬉しいのだ。
「さて、これからどんな波乱が起きるのやら。今から楽しみだよ」
レグルスはこれからルイシャが起こすであろう何かしらの騒動に、胸をときめかすのだった。
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