第8話 ペーパーテスト
「ぬ、ぬうううう! 次だ次ィ!!」
生徒会長はルイシャにやられ失神した生徒会のメンバーを介抱しながらそう叫ぶ。
すると彼の後ろに控えていた生徒会の一人が前に出てくる。
「では私が」
そう言って出てきたのは青色のショートカットが特徴的な女子生徒だった。銀縁の眼鏡をかけていて大人しそうな印象を受ける。
「二年Aクラス、生徒会副会長兼書記のユキ・クラウスです。生徒会の威信にかけてこの勝負、勝たせていただきます」
彼女はそう言って力強く、そして冷たい眼光をルイシャに向ける。
その眼からは強い決意のようなものを感じる。
「わかりました……受けて立ちます!」
ルイシャは彼女の視線を真っ向から受け止めそう返す。二人の視線は空中でぶつかり合い火花を散らす。
一触即発の空気にシャロたちも思わず緊張する。
「さて勝負の内容ですが……コレで決めようと思います」
そう言って彼女が取り出したのは一枚の紙切れだった。
「これは……テスト用紙ですか?」
「その通り、第二勝負の内容は『ペーパーテスト』です。これから私とペーパーテストに挑んでいただきます。制限時間は十分、それをすぎた時点で終了し点数を競います。ちなみにテストの内容は一年生が習う範囲にとどめてあります、勿論その中でも特段に難しく作って貰っていますが」
「学力勝負ということですね。受けて立ちます」
「いい心意気です。それでは勝負の準備をお願いいたします」
ユキがそう言うとどこからともなく十人ほどの生徒たちが現れ試験の準備を始める。
彼らも生徒会のメンバーだ。しかし役職のない平のメンバーであり、雑務しか携わることはできない。しかしそれでも就職にはプラスに働くので彼らは今日も生徒会役員に顎で使われる。
「準備、整いました!」
「ご苦労様です。さ、始めましょうか」
ユキに促され準備された席に座るルイシャ。そして目の前の机に試験官の先生がテスト用紙を置く。
「誓ってテストの内容は漏らしていない。頑張ってくれ」
「大丈夫ですよ、どんな手を使ってきても正面から勝ちます」
「ふ、無用な心配だったみたいだな」
無事準備が完了し、試験官の合図でテストが始まる。
その瞬間生徒会役員のユキは勝利を確信し口元に大きな笑みを浮かべる。
(勝った!! 私は全ての先生がどんなテストを作ってくるか知っている!! そして今日試験官でつく先生を予想して対策を取って来た!! 今のコンディションなら九十点以上は堅い!!)
今出されてるテストは超高難易度であり、一般生徒であれば五十点も取れれば優秀な部類だ。
そんなテストで九十点も取られたらとてもじゃないが勝つ事はできない。もっともそれが普通の生徒であれば……の話ではあるが。
――――十数分後。
「それでは結果を発表する! ユキ・クラウスは九十三点! ルイシャ・バーディは九十九点! よってこの勝負ルイシャの勝ちとする!!」
「ふ、ふえぇぇ〜〜っ!!!??!?」
結果を聞いたユキはそう叫びながら泡を吹いて気絶する。
一方ルイシャは「くそー、一問間違っちゃったか」とけろっとしている。
「ば、バカな……ユキがテストで負けるなんて」
その様を見ていた生徒会長は戦慄する。まさか武と智、相反する二つのジャンルで両方負けるとは夢にも思っていなかったのだ。
絶望的な状況。しかし彼はまだ諦めてなかった。
「見事だルイシャくん、それでは最後の勝負を始めようじゃないか!」
「二本先取じゃないんですね……まあ分かりました。最後は何をやるんですか?」
その言葉に生徒会長は自信満々にこう返した。
「聞いて驚け、最後の勝負は……『鬼ごっこ』だ!!」