第5話 宝のありか
「大将、そう言えば『勇者の遺品』の情報はもう見つかったんですかい?」
ヴォルフは周りに人がいないかを確認しながら小声でそう尋ねてくる。
ルイシャも魔力探知して人がいないのをしっかり確認してから口を開く。今からする話題はトップシークレット、誰にも聞かれるわけにはいかない。
「そうだね、今のところ『二つ』有力な情報があるんだ」
「お、おお……、二つも情報が集まってるんですか。いったい何処にあるんですか?」
「うん。一つは帝国の東にある港町『ラシスコ』に伝わる伝説なんだ。伝説の海賊、海賊王『キャプテン・バット』の遺したお宝の中に勇者のお宝があるらしいんだ」
「キャプテン・バットってあの伝説の海賊ですか!? こりゃまた大物が出てきたな……」
キャプテン・バットとはおよそ百年前に活躍した伝説の大海賊だ。
彼の武勇伝は勇者オーガと同じくたくさん残っており、港町では勇者の伝説よりも好んで語られる。
彼は海賊という身でありながら弱者を襲うことはなく、むしろ凶悪な海賊を倒して周り海に平和をもたらした英雄として語られる。それが本当にあったことなのかは定かではないが、彼が今も英雄として多くの人に崇められているのは事実だ。
「ふふふ、この情報は私の仲間が見つけたのです」
両手でVサインを作りながら得意げにそう言ったのは金髪の吸血鬼アイリスだ。表情こそ無表情だがノリノリにピースしてるせいで表情と動きが一致していない。
「実際に港町ラシスコに行った同胞が見つけた情報です。信憑性は高いかと」
「うん。この情報はすごい助かるよ。吸血鬼の人たちにもお礼を言っておいてもらえる?」
「当然です、ぴすぴす」
アイリスはドヤ顔をしながらピースを隣に座ったシャロに押しつける。
自分が役に立ててることを自慢しているのだ。
「ああうっさいわね! 分かったからそれをやめなさいっ!」
「むう」
喧嘩するほどなんとやら。二人はすっかり仲良くなっていた。
そんな彼女たちの様子をルイシャはほっこりした目で眺める。
「で、もう一つの情報は何なんですかい?」
「ああそうだったね。ええとこれはユーリがくれた情報なんだ。南にある賭博の国『ヴェガ』で行われる年に一回開かれる闘技大会があるらしいんだけど、そこの優勝商品が『勇者のベルト』なんだって」
「勇者の遺品が商品になってんのか!? そんなことしていいのかよ……」
「ヴェガは都市国家、他の国の法律やルールは通用しないからね」
「なるほど……じゃあそれに参加するってことだな大将」
ヴォルフがそう尋ねるとルイシャは決意に満ちた顔で頷く。
「うん。この大会には大陸中から腕自慢が集まるらしいんだ。しかも魔法は禁止の戦い、厳しい戦いになるだろうけど全力でやるよ」
「はっは! それでこそ大将! 俺様も微力ながら参加させてもらうぜ!」
「うん、頼りにしてるよヴォルフ」
「ちょっと、私を忘れないでよっ。ルイは私だけ頼りにしてばいいのよ」
「私を差し置いてなんてこと言ってるんですかシャロ。情報を持ってきたのは私の仲間、つまり私が持ってきたと言っても過言じゃないんですよ」
「それは過言でしょっ!」
ワイワイ騒ぐ心強い仲間たち。
ルイシャはそんな彼らを見て、この先の厳しい戦いも彼らと一緒なら乗り越えられるだろうと強く確信するのだった。