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第69話 めし

 王城会食の間。

 来賓者と共に食事をする時に使用されるその広い部屋には、真っ白なテーブルクロスがかけられたとても長い机が中央に鎮座している。

 机の形は長方形であり、その長い辺にルイシャ達が向かい合うように座り、入口から最も離れたところの短い辺にフロイ王とユーリ王子が座る。そして彼らの従者であるエッケルとイブキは彼らの後ろに立っている。


「さ、遠慮せず食べてくれ。城のシェフ達が腕によりをかけて作ってくれたからね」


 フロイ王のその言葉と共に次々と豪勢な食事が机の上に並んでいく。

 肉汁(したた)るレッドワイバーンのステーキ、キラキラと光り輝く宝石蟹の丸揚げ、世にも珍しい青色の酒蒼玉麦酒(サファイアビール)などなど平民では目にすることも出来ない豪勢な食事がルイシャたちの前に並ぶ。


「すっげえ! こんな豪華な食事初めてだぜ!」


「ちょっとバーンお行儀悪いよ! 王様の前なんだからもうちょっとしっかりしなよ」


 身を乗り出してはしゃぐバーンをそう嗜めるチシャだが、彼も口から涎が少し垂れてしまっている。

 一方虫使いの少女カザハは「この宝石蟹、売ったらいくらになるんやろか……殻くらいなら持って帰ってもええかなあ」と目を輝かせて宝石蟹を見つめている。


 そんな風に浮き立つ彼らを見てフロイ王は微笑む。こんなに賑やかな食事は久しぶりだったのだ。

 彼は手元に置かれた葡萄酒の入ったグラスを持ち上げ口を開く。


「では王国の英雄たちに……」


「「「「乾杯!!」」」」


 英雄たちはグラスをぶつけ合い、そう叫んだのだった。


 ◇


 ルイシャたちは育ち盛りの年頃である。

 全員大人顔負けの量を胃袋に収めているのだが……


「もぐもぐむしゃむしゃがつがつ」


 その中でもルイシャは常識外れの量をたいらげていた。

 食事が始まってまだ十分ほどだと言うのに彼の前には大量の皿が積み上がっている。

 ルイシャの肉体には無限牢獄で貯まった大量の経験値が眠っている。それを肉体に反映するには大量のカロリーが必要なのだ。なので彼は常日頃大量の食事を摂っている。しかもつい先ほどルイシャは魔眼の力に目覚めている、そのせいでいつもより大量のカロリーが必要なのだ。


「ルイシャ様ったらお口汚してますよ、今拭きますね」


「ふぉふぉふぉ、若は元気ですなあ。これは強く育ちますよ」


 そんなルイシャの両隣りにはアイリスとポルトフィーノの魔族コンビが座っている。二人ともガツガツと料理をむさぼるルイシャを見てニコニコと嬉しそうにしている。


「もごごご、もっごごごごご?(二人は、食べなくてもいいの?)」


「私たちのことは心配しなくても大丈夫ですよ、魔族は少し食べなくても大丈夫ですから」


 口に物を詰め込みながら話すルイシャと普通に話すアイリスを見てクラスメイトたちは(なんで言ってる事が分かるんだ……)と少し引く。

 一方ポルトフィーノはそんなアイリスを見て「やりますねアイリス。私ももっと精進せねば……」と謎の対抗意識を燃やしていた。


 そんな風に賑やかに食事を楽しむルイシャの目の前にドカン! と音を立てて巨大な牛の丸焼きのような物が置かれる。


「ガハハ! 食ってるか坊主たち!」


 豪胆な笑い声をあげながらそう喋りかけてきたのは牛の獣人だった。二メートルを超す背丈に筋骨隆々の肉体とエプロンを着込んだ姿が特徴的な人物だった。


「俺はここの料理長マグナ・レムナントってんだ。そのギガントバッファローの丸焼きは俺のサービスだ、遠慮せず食ってくれ」


「もぐもぐ……ごくん。これも食べていいんですか!? ありがとうございます!!」


 ルイシャは目の前に現れたご馳走を見て目を輝かせると一心不乱に食らいつく。するとバーンも「ずるいぞルイシャ!」と食らいつき、ヴォルフも「ご加勢します大将!」と食らいついてくる。


「はは、元気のいい坊主たちだ。そんなに奪い合わなくてもすぐには無くなら……ってもう無い!?」


 マグナが喋ってる間にギガバッファローを丸ごとたいらげた三人は満足そうに「けぷ」と声を出す。


「はは、いいね……だったら坊主たちの腹がはち切れるまで作ってやらぁ!」


 そう言ってマグナは袖をまくりながら調理場に戻っていく。

 そんな騒がしい様子を見ながらシャロは自分の顔ほどの大きさのジョッキに入った酒を飲み干しながら呆れたように呟く。


「はあ、これだから男子は騒がしくて嫌なのよ」


「はは、シャロはんも荒れてまんなぁ」


 顔を紅潮させながら机につっぷしグチグチと文句を言うシャロにカザハは困った様子でそう宥める。シャロの前には空のジョッキが山積みになっている。既に相当な量のお酒を飲んでいるようだ。

 カザハも飲んではいるのだが彼女ほどは飲んではおらず、それよりも自分の相棒である虫たちにご飯をあげるのに精を出していた。

 虫達にご飯をあげ終わり、自分も本格的に食べ始めようとしたところ悪い酔い方をしたシャロを見つけてしまい、今度は彼女の世話を焼くはめになったのだ。


「ばか、ルイシャのばか」


(ひょ、ひょえ〜! いったい何があったんやろか!? てかなんでうちがシャロはんを宥めなあかんの!? 誰か助けて〜!!)


 心の中でそう泣き叫ぶカザハ。

 こうして三者三様騒がしい食事会は夜まで続いたのだった……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です
[一言] 「浮足立つ」というのは、恐怖心や不安感から落ち着かない様子を表します。なので、王との会食で使うのはちょっと違うかなと感じました。
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