第68話 分かり合うために
フロイ王はヴォルフをまっすぐに見据えながら彼に疑問を投げかける。
「獣人である君はこの国を憎んでるはず、それなのになぜこの国の為に戦ってくれたのですか? ぜひ私に教えて欲しい」
あまりにど直球の質問にヴォルフがぶち切れるのではないかとハラハラするクラスメイトたち。しかし彼らのそんな心配とは裏腹にヴォルフはニィ、と笑みを浮かべ答える。
「そーだな、この国を完全に許せているかって聞かれたら正直首を縦には振れねえ。俺の心から憎しみは完全には消えてねえからな。でもよ」
ヴォルフはルイシャ、そしてクラスメイト達の顔を順番に見ながら己の心の内を話す。
「この国には俺の大切な奴らがいる。バカを一緒に出来る奴、俺の知らねえことを知ってる凄い奴、俺と同じように苦労してきた奴、そんで……俺が世界で一番尊敬してる人。そんな奴らを守る為だったら俺は喜んで命を張るぜ」
ヴォルフのその真っ直ぐな言葉にクラスメイト達は照れて鼻の下を擦ったり頭を掻いたりして誤魔化す。
「それに……俺は王の事も買っている。確かにまだ差別は無くなっちゃいねえがあんたが差別に真っ向から立ち向かったことで風向きは確実に変わってきている。だから……ありがとう、俺たちを見捨てないでくれて」
そう言ってヴォルフは深く頭を下げる。
それを見たフロイ王は目を丸くして驚く。今まで獣人を救おうと色々な手を尽くしてきたが「今更善人気取りか?」「もう手遅れなんだよ!」などといった暴言しか獣人から貰ったことはなかった。
自分のやってることは間違いなのか、もう彼らと手を取り合う未来は訪れないのだろうか。そう不安になり寝れない夜もあった。
しかし自分の選んだ道は間違ってなかった。今ならそう胸を張って言える。
なぜなら頭を下げるこの若者の言葉に嘘偽りの気配は一切感じられないのだから。
「礼を言うのは私のほうだよ少年。私もまた君の言葉に救われた、ありがとう」
そう言って二人は視線を合わせ笑いあう。きっと二つの種族は分かり合える、そう思えるような光景だった。
「さて、他に何か欲しいものがある者はいるか?」
ヴォルフから視線を外したフロイ王はそう尋ねる。
するとおずおずとバーンが手を上げる。
「真面目な話した後にこんな事言うのは気が引けるが……まあでも今は何よりアレが欲しい」
「アレか、確かにもうクタクタだからな」
「言えてる。僕ももう限界だよ」
バーンの言葉にヴォルフとチシャもそう乗っかる。他のクラスメイト達もバーンが何が言いたいのか理解したようで「たしかに!」と口々に乗っかってくる。
そんな彼らの言葉にフロイ王は興味を持ち「ほう、申してみよ」と言う。
するとルイシャたちは顔を見合わせ呼吸を合わせると、ピッタリの呼吸で叫ぶ。
「「「「「ごはん!!」」」」」