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第64話 乱入者

「うぐ、ぐぐ……」


 地面に墜落したウラカンは苦悶の表情を浮かべながら体を動かそうとする。

 しかし魔煌砲マギ・ブラストを食らったウラカンは体内の魔力をほぼ全て分解されてしまったので魔力欠乏症に陥ってしまっていた。

 魔力は生命維持をするのに必須の力でもある。いくら強靭な身体を持つ魔族といえど体内の魔力を失ってしまえば人間と同じくマトモに動くことはできなくなってしまうのだ。

 しかもウラカンは何度もルイシャの攻撃を受けているので身体中ズタボロだ、おまけに魔力が切れたせいか肉体も元の魔族の姿に戻ってしまっている。

 ここからどう頑張ったところで逆転は不可能だろう。


 しかしウラカンは必死に這いずりながらルイシャから逃げようとする。


「魔力を切らしてるのにそんなに動けるのは凄いですが、逃すわけにはいきません」


 そう言ってルイシャは少し離れたところで地面を這っているウラカンに近づこうとするが、その瞬間上空から一人の人物がルイシャとウラカンの間にものすごい勢いで降り立つ。

 突然の事態にルイシャは立ち止まり、拳を構える。正直もう疲れ切っているがここでウラカンを逃すわけにはいかない。ルイシャは細心の注意を払いながら現れた人物を注視する。


 その人物は一言で形容すると手足の生えたタマゴのような体型をしていた。

 まん丸の胴体にはその体型にフィットする黒いスーツを装着しており、手には長く黒い杖を携えている。そしてその顔には丸眼鏡と細長いシルクハットを付けている。鼻は悪魔の様に長く耳も尖っている。

 明らかに人間の見た目では無い。ルイシャはこの人物が魔族か、もしくはそれに近い亜人種だと推測する。


「あなたはいったい誰ですか? もしそこに転がってる人の味方だと言うのなら……容赦できません」


 ルイシャはそう言って拳を構えるが、内心ではかなり焦っていた。

 なぜなら目の前の謎の人物から物凄い魔力を感じたからだ。テスタロッサ程ではないが、それに近いと言えるほどの魔力。とてもじゃないがウラカンなんかよりずっと目の前の人物の方が強い。

 万全の状態でも勝てるか分からない相手だがここで退けばウラカンを逃すことになる。それだけは避けなければいけない。

 なのでルイシャは必死に虚勢を張る。すると目の前の人物はシルクハットを外し丁寧に一礼してから口を開く。


「申し遅れました。私は魔王国宰相『ポルトフィーノ・カブリオーレ』と申します。突然の乱入、ご容赦ください」


 ポルトフィーノがそう自己紹介すると今まで離れたところにいたアイリスが急いでルイシャの横に走って来る。

 そしてポルトフィーノに向かって膝を着くと身体を震わせながら声を発する。


「お、お久しぶりです、ポルトフィーノ様」


 アイリスを見たポルトフィーノは少し考える素振りを見せると、彼女を思い出したのか手をポンと叩く。


「ああ、誰かと思えばヴァンヘイルのところの娘さんでしたか。名前は確かアイリスでしたね、あの時より大きくなったので気づきませんでしたよ」


「お、覚えていただいていて光栄です」


 そう答えるアイリスの声は微かに震えている。

 普段は強気な彼女がここまで怯えるなど滅多にない。ルイシャは目の前の人物の危険度を上げる。


「ポルトフィーノさん。貴方の横に転がっているその人は僕の大切な人を傷つけ、更にこの国を滅ぼそうとしました。貴方にどのような理由があったとしても……その人を庇うのだとしたら容赦しません」


「ふむ……」


 ルイシャの言葉を聞いたポルトフィーノは顎に手を当てて少し考えるそぶりを見せた後、地面を転がるウラカンに目を移す。

 するとウラカンは泣きつく様な表情で「た、助けてくれ……」とポルトフィーノに懇願する。

 その哀れな様を見たポルトフィーノは「はあ」とため息を吐くと持っていた杖をウラカンの背中に思い切り突き立て、背骨を容赦なく粉砕する。


「〜〜〜〜ッ!!」


 そのあまりの衝撃にウラカンは声を発することも出来ないまま意識を失う。

 それを確認したポルトフィーノは悠然とルイシャの元に近づくと、その足元にひざまずく。


「お会いできて光栄です、新たな魔王様。魔王国宰相ポルトフィーノ、貴方様に絶対の忠誠をお捧げいたします」


「…………へ?」


 突然の事態にルイシャはそう気の抜けた言葉を言うことしか出来なかった。

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― 新着の感想 ―
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[一言] そろそろ魔王と竜王が見たい!
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