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第63話 王の光

 騎士団長エッケルの活躍により王城は無事魔族を制圧することに成功した。

 そして騎士団員たちが結界を張っていた魔族を斬り伏せたので王城を囲っていた結界も崩壊した。


 そして騎士団員たちが魔族討伐に乗り出したことにより状況は一気に王国側に有利に動き出す。


 ある騎士団員は冒険者たちに加勢し、またある者は一般人に紛れこんだ魔族を討伐しに。

 彼らが参戦したことで拮抗していた状態が、一気に王都勢の優勢に傾く。


 そんなことなど知らないウラカンは自分が窮地に立たされてる事など考えもしなかった。


「あんの役立たずどもが……! 人間カスを殺すことすら出来ないのか!?」


「そういう貴方も僕みたいな少年ガキに勝てないじゃないですか。自分にできないことを部下に求めるのはかっこ悪いですよ」


「なんだと……!?」


 ルイシャに小馬鹿にされたウラカンは怒りのあまり顔を真っ赤に染める。

 しかし怒りに身を任せて拳を振るうことはしない、まだその程度の理性は残っているようだ。


「クソが、俺様は新しい魔王にならなくちゃいけないのに……!」


 そう言って頭を抱えるウラカン。

 ルイシャはそんな彼を見て一つ、大きな決意をする。


「確かに新しい魔王は必要かもしれません、このまま放置してたらまた貴方みたいに魔王になりたいと言い出す悪人が出てきてしまうでしょう」


 ルイシャの思わぬ言葉にウラカンはパッと顔を明るくする。


「じゃ、じゃあ俺様が魔王になるのを許してくれるのか?」


「そんなわけないでしょ。貴方なんかに魔王になられるわけにはいかない」


 そう言ったルイシャは黄金色に輝く左眼で強くウラカンを睨みつけ、力強く宣言する。


「僕が、新しい『魔王』になる。他ならない魔王の弟子である僕が!」


 そう宣言するルイシャの姿を見たウラカンの肌に鳥肌が立ち、足が細かく震える。

 この感覚には覚えがある。三百年前魔王テスタロッサを見たときに覚えた感覚だ。

 年も、種族も、性別すらも違うというのに、目の前の少年の姿があの時の魔王と被って見えてしまう。


「ま、また邪魔するというのかテスタロッサァ!」


 ウラカンはそう叫ぶと大きな羽を羽ばたかせ空を飛ぶ。

 そして二十メートルほど上昇すると彼は右手の人差し指を上空に掲げ、魔力をその一点に集め出す。


「もう勇者の子孫も、吸血鬼も、生意気な目をしたお前もいらねえ! 全員死にくされやぁっ!」


 ウラカンの指先に集まった膨大な魔力は黒い炎に変換されていく。その炎は集まり凝縮され、最終的に巨大な炎の球体になる。

 超高密度にまで凝縮されたその黒炎はもはや小さな太陽、距離が離れたルイシャたちですら熱さを感じるほどだ。この魔法こそ今のウラカンが放てる最大魔法、その威力はルイシャたちが立つ時計塔を丸ごと消しとばすほどの破壊力だ。


「逃げれば時計塔は崩れ大量の犠牲者が出る、もし魔法で相殺出来たとしてもその余波で手負いの女二人は助からないだろう。さて、どうする新しい魔王様? 貴様にこの状況をどうにか出来るか?」


 そう言ってルイシャを挑発するウラカン。確かに彼の言ったことは間違いではない、もし魔法で相殺出来たとしてもこのクラスの魔法のぶつかり合いはとてつもない衝撃波を生み出してしまう。ルイシャならともかく満身創痍のシャロとアイリスは助からないだろう。


 しかしそんな絶望的な状況にあってもルイシャの顔に絶望の色は微塵も無かった。

 だって彼には誰よりも頼りになる、二人の師匠の力がやどっているから。どんなに暗い闇をも照らせる眩しい光が彼の体の中にあるから。


 ルイシャは体に残る魔力を全て両の手に集めると、それを黄金色に輝く光へと変換していく。その魔法は『魔王』のみが使える王の証。全ての『魔』を従える王の光。


「何をしても無駄だ! 全てを飲み(ダク・サンラ)込む昏き太陽(イズファイア)!」


 ウラカン渾身の最大魔法がルイシャ目がけて放たれる。直径十メートルはあるその黒炎球はゆっくりと、そして確実にルイシャたち目がけ飛んでいく。


「なんて魔法なの……」

「まさか奴がこれほどの力を持っているとは……」


 そのあまりの魔力量に死を覚悟するシャロとアイリス。

 しかしルイシャだけはその魔法から眼を逸らさず真っ直ぐに見据える。そして両の掌に集まった黄金色の光をその炎の塊に向けて一気に解き放つ!


魔煌砲マギ・ブラスト!」


 ルイシャの手に集まった光の塊は巨大な光の柱となって放たれる。

 その光の柱はまっすぐに黒炎にぶつかるが、黒炎の方が光の柱よりもずっと大きい。どちらの魔法が勝つかなど誰が見ても明らかだった。


 しかしそんな状況にも関わらずなぜかウラカンの顔は青ざめていた。


「そんな……あの魔法は……!」


 もしあれが本当に魔王のみが使える伝説の魔法だとしたらマズい。そう考えたウラカンは急いで羽を羽ばたかせその場から離れようとする。


 しかしルイシャはそれを許さなかった。


「逃さないよ、お前はここで倒す!」


 ルイシャが更に魔法に力を込めると、光の柱は勢いを増す。そして段々と黒炎を包み込むと、ウラカンの魔法を分解し消し去っていく。

 魔煌砲は対魔法用の魔法だ。その効果は魔法と魔力の分解であり、この魔法の前では如何なる魔法であれその力を失う。正に魔王のみに許された『魔』を統べる者に相応しい魔法だ。


「いっけええええっ!!」


 魔煌砲はウラカンの魔法を一気に分解すると、その矛先を逃げようとするウラカンに向ける。その速度は凄まじく、とても手負いのウラカンに躱す術はない。


「く、来るなぁっ!」


 絶望的な表情を浮かべ叫ぶウラカン。

 そんな彼に対し、ルイシャは冷たい顔で言い放つ。


「食らえ、それがお前の欲しがっていた王の光だ」


 その光に飲み込まれたウラカンは全ての魔力を失い、ルイシャたちの目の前に墜落してくるのであった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔王の弟子って名乗ったけど、ヒロイン2人にはこの言葉聴こえたのだろうか? [一言] 最後まで三下ムーブのウラカンさんお疲れ様でした
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