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第61話 炎魔

 大広間に響く王子ユーリの声。

 それだけで王国の精鋭である騎士達は理解する。


「我々は既に攻撃を受けている」と。


 そう理解した彼らの行動は素早く、腰に納められた剣を迷いぬく引き抜き目の前に立ち塞がっていた魔族を次々と一刀の元に斬り伏せていく。


「な……!」


 突然の行動に魔族達は抵抗する間も無く斬られてしまう。そして障害を取り除いた騎士達はユーリの方を向き一礼すると、一目散に場外へ駆け出していく。

 愛する民を守るために。


「あ〜あ、こりゃ問題ですよフロイ王。こんなガキの言うこと間に受けてウチの者を斬ってしまうなんて。もしそちらの勘違いならどう落とし前つけてくれるんですかねえ?」


「みくびらないで貰いたい、私は王である前に私は一人の父。息子を信じられずしてなにが王か」


 グランツ大臣の挑発にフロイ王はそう毅然とした態度で返す。

 今大広間にいるのはフロイ王と騎士団長エッケルと騎士団員二名とグランツ大臣。そして入口にはユーリとその従者イブキがいる。

 グランツはちらりとユーリの方を向いて「なるほど」と呟く。


「優秀な息子さんがいるとは聞いてましたが彼がそうでしたか。いやぁまさかこんな邪魔が入るとは……」


 グランツはそう前置くと、カッと目を見開き表情を一変させる。そこには先ほどまでにこやかな顔はなく、憤怒に彩られた恐ろしい形相に変わっていた。


人間カスどもがっ……! こちらが下手に出てたら調子に乗りやがって!」


 怒りに満ちたグランツの髪がまるで燃え盛る炎のように逆立ち、全身の筋肉が膨張していく。両手からは高温の炎が上がり、大広間に熱気が充満する。


「王子、下がってくださいっす……!」


 異変を察知したイブキがユーリの前に立ちグランツに剣を向ける。イブキは王子を守るため必死に自分を鼓舞するがそれでも剣を握る手に汗がにじむ。

 それほどまでに目の前に立つ魔族から放たれる魔力、気迫は凄まじかった。


「我が名は“炎魔”グランツ。己の腕っぷしのみで大臣の座までのし上がった武人なり。貴様ら人間なぞ束になっても敵う相手ではないわ!」


 グランツの言葉通り彼は魔族の中でも秀でた戦闘能力を持っていた。魔力、戦闘センス、そして残虐性どれも優れておりいくつもの戦争で武勲を上げた過去を持っている。

 とてもイブキや騎士団員が敵う相手ではないのだが……この広間にはもう一人彼に匹敵する武勲の持ち主がいた。


「グランツ殿、貴公の武勲は私もよく聞いたことがあります。そしてそのたび思ってました、私と貴公どちらの方が強いのか……と」


 そう言って剣を抜いたのは騎士団長エッケルだ。彼は二人の部下に王を守るよう命じると、一人グランツの前に躍り出る。

 身長二メートル二十センチ、体重百五十キロ。人間としては規格外の巨体を誇るエッケルだが相手は一流の戦闘タイプの魔族だ。グランツの背丈は優に三メートルを超し、その身長差は大人と子ども以上だ。

 しかしエッケルは悠然とした態度で白銀の剣と身の丈を以上の大きな盾を構える。その表情に恐れや不安といったものは一切ない。


「私の戦い方をよく見ておくんだ、イブキ」


「は、はいっす」


 言われてイブキは全神経を集中して二人の戦いを見る。これから行われるのは自分の理解を大きく超えた戦いだ。得られる物は大きいだろう。


 一方グランツはエッケルの方を向き笑みを浮かべる。


「私も君のことは良く耳にしたものだよ。人間の分際で戦士を気取った愚か者がいるとね」


 そう言って拳を構えるグランツ。

 その両の手は激しく燃え盛っている、触れただけで鉄すら溶かすほどの高温に大広間の気温はどんどん上がり中にいるもの達は額に汗を浮かべる。


 エッケルとグランツ、二人はじりじりと距離を詰めて行き……そして二人同時に勝負を仕掛ける。


「「いざ!」」


 白銀の剣と燃え盛る拳が大広間中央でぶつかり、轟音と熱波を部屋中に撒き散らした。

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