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第53話 魔族の弱点

「じゃあ今日は魔族との戦い方について教えてあげるわね♪」


 無限牢獄内でのある日の修行中、テスタロッサはそう切り出して授業を始める。机と黒板だけにとどまらず教室をまるごと魔法で作り出すというこだわりっぷり。意外と形から入るタイプなのかもしれないなあとルイシャは思った。

 ちなみにテスタロッサ自身も黒いスーツに着替え教師風の格好になっている。魔法学園の先生はこんな格好をしていないがクーべという国ではこのスタイルが主流らしい。なんでも昔に異世界から来た人が伝えた服装らしい。谷間が覗くワイシャツにピッチリとしたタイトスカート、正直ルイシャもこの姿は嫌いではないのでツッコミは入れなかった。


「テス姉、教えてくれるのは嬉しいけど魔族と戦うことなんてあるのかな? だってテス姉と同じ種族なんでしょ、僕戦いたくないよ」


 ルイシャがそう言うとテスタロッサは顔をふにゃっとさせルイシャに抱きつき顔を自分の胸にうずめる。


「ルイくんはいい子ね~~!! こんないい子に育ってくれてお姉さん嬉しいわ!」


 そう言ってテスタロッサはルイシャの柔らかいほっぺにちゅっちゅっとキスの雨をに浴びせる。当然のそんな事をされたルイシャは顔を真っ赤にして抵抗する。


「わぷっ! ちょ、やめてよテス姉! もう、僕は子どもじゃないんだから!」


 そう言ってルイシャはテスタロッサの拘束からするりと抜け出す。前はそんな風に抜け出す事など出来なかったのに。テスタロッサはルイシャの成長が嬉しくもあり寂しくもあった。


「むう、逃げるなんていけずねえ……まあいいわ。とにかくルイくんがそう言ってくれるのは嬉しいけどやっぱり魔族と戦えるようになっておいた方がいいわ。確かに魔族のほとんどは良識ある普通の人よ、でも中には悪い人もいるのも事実なの。それは人間も同じでしょ?」


「……確かにそうだね。そっか、いい人と悪い人に種族は関係ないんだね」


「その通りよ、善い人しかいない種族がいないことは確か。でも悪い人しかいない種族もまたないわ。まだ世界にはたくさんの種族差別が残っているだろうけどルイくんならきっとそれを取っ払って色んな種族の人と仲良くなれる。私はそう信じてるわ」


「そんな、買い被りすぎだよテス姉」


 照れながらポリポリと頭を掻くルイシャを見ながらテスタロッサは思う。

 この少年なら本当に出来るんじゃないか、と。

 だってこの子は絶対に仲良くなれないと思っていた魔王と竜王を仲良くさせてしまった人物なのだから。


「さて、話が脱線してしまったわね。本題の魔族と戦う方法だけど、もうルイくんはその方法を会得しているわ」


「へ? そうなの?」


「うん。魔族にはその特性上、苦手とする技があるの。それは……気功術、よ」


「そ、そうなんだ……!」


 魔族の思わぬ弱点にルイシャは驚く。

 しかし疑問も残る。気功術は無属性の攻撃だ、なぜそれがよく効くのだろうか。

 テスタロッサはルイシャがそう疑問に思っているのを察知し先んじて説明を始める。


「これは抵抗力の問題なの。前に授業で話したと思うけど魔力が高ければ高いほどその人は魔力に対する抵抗力を持つの」


 そう、魔力の高さは攻撃力を上げるのはもちろん、そのまま魔法に対する防御力になるのだ。魔力が高い者は防御魔法を張らなくてもある程度の魔法には耐えられるようになる。

 逆に魔力が低い者は初級魔法ですら致命的になりうる。


「この話は魔法だけに言える話じゃないの。この理論はそのまま気功術にも当て嵌まる」


 そこまで聞いたルイシャはハッと気づき喋りだす。


「つまり……魔族は気功が少ない、ってこと? だから気功術に対する防御力が低いんじゃないの?」


 ルイシャの推理を聞いたテスタロッサはニヤリと笑う。

 やはりこの子はいい勘をしている。これは強さに対する執着心が生み出すものでしょう。

 テスタロッサはルイシャが将来どんな戦士に育つのかを心の中で期待する。きっとこの強さへの執着心はいつか身を結び、とんでもない戦士になるだろう、と。

 しかしその時自分は隣にいないだろう。

 それはとても寂しいことだけれども悲観している暇はない。ならばせめて今のうちに彼に伝えられる事を全部伝えなければ。

 その知識はいつか必ずこの子を助ける光となるのだから……。

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