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第52話 紅蓮

「ふふふ、最高の展開です。簡単に成功してはドラマ性にかける、危機的状況からの大逆転劇。それこそ私の求めるものだ……!」


 部下が二人とも亡くなったというのにウラカンは全く動揺していない、いやそれどころか嬉しそうですらあった。


「随分と余裕なんですね」


「それはそうです、確かに死んだ二人は優秀な魔族でした……一般的な魔族と比べたら、ですが。しかし超優秀な私に比べたら彼らなど有象無象に過ぎません。つまりこの私さえ健在ならばこの計画になんら支障はないのです」


「……ということは貴方さえ倒せばこのくだらない計画はおじゃんという事ですね」


「ええ、それが出来ればの話ですが」


 ウラカンはそう言って笑うと、体からゴッ!! と莫大な魔力を吹き出し始める。時計塔の頂上全体に広がる悍しい魔力。その驚異の魔力量にシャロとアイリスは驚愕する。


「なにこの魔力……!? 部下の二人とは比べものにならないじゃない!!」


「こ、ここまでの実力の持ち主だったとは……! こんな魔力を持っている者は魔族でもそうはいません。どうやら口だけの変態では無かったようですね」


 二人は一度将紋の持ち主である『剣将コジロウ』の戦いぶりを見ている。

 コジロウの実力は自分たちよりずっと高く感じたのだが……目の前の魔族の力はそれ以上に感じた。


「ふふ、いくよ……超位多重魔剣フォル・ブルソドル


 ウラカンが魔法を発動させると、半透明の剣が五本出現し彼を中心に回り始める。その一本一本が膨大な魔力を発しており、それが如何に強大な魔法であるかを雄弁に語っている。


 しかしルイシャはそんな魔法に臆することなく、一気に距離を詰めようと走り出す。

 ルイシャの思い切りのよい行動に一瞬ウラカンは動揺するが、すぐに冷静さを取り戻すと魔法の剣をルイシャ目掛けとばす。


「……はっ!」


 自分めがけ飛んでくる二本の剣をルイシャは身をよじり躱す。無駄のない良い回避だ、しかしウラカンはそれを読んでいた。


「ふふ……所詮は子供ですか。呆気ないものですね」


 ルイシャが回避した先、そこにはなんと既に三本目の剣が飛んできていた。

 ウラカンはルイシャが回避する場所を最初から予測し、先んじてそこにも剣を放っていたのだ。


「……!」


 ルイシャも剣も既に物凄い速度が出ている、もはや急停止したり進路を変更することは叶わないだろう。


「ルイ!」

「ルイシャ様!」


 最悪の光景が頭に浮かび、思わず叫ぶシャロとアイリス。

 しかし無情にもウラカンの剣はルイシャの頭部に突き刺さる……かと思われたが、なんと剣が刺さった瞬間ルイシャの体はまるで蜃気楼のように揺らめいて消え去ったのだ。


「な……いったい何が起きた?」


 ルイシャが消えた瞬間、特に魔法が発動したようには見えなかった。だというのにいったい何故?

 ウラカンの頭は突然の事態にパニックを起こす。その隙をルイシャは見逃さず距離を詰めていた。


 ルイシャが使った技は気功術三ノ型『水月』。

 気を凝縮し自分の鏡像、平たく言えば『幻』を作り出す技だ。ルイシャはそれを自分の前方に作り出しウラカンの目を欺き、自分はその隙に警戒の薄い空中に跳んでいた。

 そして……幻に気を取られたウラカンの後方に着地し、渾身の拳を叩き込む!


「気功術、攻式五ノ型……『紅蓮大瀑布』!」


 莫大な気を込めたルイシャの正拳がウラカンの無防備な背中に直撃する。

 あまりの衝撃にミキキッ! と音を鳴らし拳一つ分陥没するウラカンの背中。しかしルイシャの使った気功術はそれで終わらない。この技は拳に溜め込んだ気功を着弾の瞬間爆発させる事で追加ダメージを与える事が出来るのだ。


ぜろ!」


 掛け声と共にルイシャの拳は勢い良く爆発し、その衝撃でウラカンは前方に吹っ飛び地面を情けなく転がる。


「ぐ……うう……き、貴様……」


 ゼロ距離で爆発を食らったせいでウラカンの背中は焼けただれてしまっている。それでもなお自力で起き上がれるのは彼の執念の為せる技だろうか。

 ルイシャはそんな彼に再び拳を構え啖呵をきる。


「早く立ち上がりなよ、お前に苦しめられた人達の痛みはこんなもんじゃ済まないぞ!」

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― 新着の感想 ―
[一言] そ・ん・じゃ、お前の罪を数えろ、ウラカンッ!!
[一言] 技名から滲み出る某少年漫画感w
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