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第40話 時計塔上にて

 デスティノ時計塔。

 エクサドル王国で王城の次に高い建物だ。

 四角柱の形をしており、その四面上部に大きな時計がつけられている。零時から六時間ごとに時を知らせる鐘が鳴り王国に住む住民に時間を知らせるという役目もあるのだ。


 そんな時計塔の上に三人の男が立っていた。


「ふふ、いい眺めですね。この国をまるごと貰えるのだと思うと胸が高鳴りますよ」


 そう言って「ニタァ……」と笑みを浮かべるのは王国を襲撃した魔族たちのリーダー、ウラカンだ。

 その後ろには彼の腹心であるウルスとスパイドがいる。


「上機嫌ですねボス」


「そりゃ上機嫌にもなりますよウルス。新しい魔王が誕生するだけじゃなくて国を丸々いただけるんですからね。これだけ肥沃な土地、魔族領にはそうありません」


 魔族領の大地は作物が育ちにくい。

 その理由は大地に染み込んだ大量の魔力のせいだ。過ぎた魔力は生命に悪影響を及ぼす、いわゆる魔力中毒と呼ばれる症状でこれは動物だけでなく植物にも起こるのだ。

 魔力が豊富な土地は魔族にとっては良いものなのだが農作物にとっては悪条件。反対に人間領の土地は魔力濃度が低い。

 なので王国を手に入れることが出来ればウラカンは魔族領で問題になっている食料問題を大きく解決できるだろう。そうすれば魔族内での彼の地位は盤石のものとなる。


「そろそろ宿にいた戦士たちも動き出す時間ですね」


「はい、もうすぐ王国は地獄絵図と化すでしょう。楽しみですねボス」


「長かった……ここまで来るのに三百年もかかってしまいました。しかしようやく我が悲願が叶います」


 自らの輝かしい未来を想像し笑みを抑えきれないウラカン。そんなボスの様子に二人の部下も嬉しそうに頷く。

 このまま何事もなく計画は進むかと思われた。しかしそれを阻もうとするものがいた。


「……貴方達、何をしているのですか?」


「ん?」


 突如後ろから声をかけられ振り返るウラカンたち。そこにいたのは三人の男女だった。

 一人の美しい少女に二人の整った顔立ちの男性、いったい彼らはどこから来たのだろうか、ウラカンは見知らぬ彼らに警戒心を抱く。


「だれだい君たち? 魔力から察するに同族みたいだけど」


 三人から感じられる魔力は人間のものではなく魔族のものだった。

 しかしウラカンは自分たちの他に魔族が王国にいるなんて情報は知らなかった。いったい何者なんだ? 味方なのか? いくら考えても分からなかった。


 ウラカンに問われた三人は少し悩んだ後、少女が一歩前に出てくる。


「……わかりました、名乗らせていただきます。私はアイリス・V・フォンデルセン。吸血鬼です」


 そう、彼女はルイシャに仕える吸血鬼のアイリスだった。

 魔眼を持つ彼女は時計塔の上に集まる禍々しい魔力を感じ取り、王国に滞在している吸血鬼の仲間を集めてやってきたのだ。


 そんな彼女の名乗りを聞いたウラカンは「にぃ」と口角を上げ醜悪な笑みを見せる。


「ほう! 吸血鬼とは珍しい! 今日はついている、王国だけじゃなく吸血鬼まで手に入るとは!」


「手に、入る?」


 ウラカンの失礼な物言いにアイリス含む三人の吸血鬼たちは不快感を露わにする。

 しかしウラカンはそんなこと気にも止めず言葉を続ける。


「ああ済まない、そういえば自己紹介がまだだったね。私はウラカン、新しい魔王になる者さ」


「新しい魔王ですって……?」


 その言葉を聞いた吸血鬼たちは牙をむき出し髪を逆立てる。

 それも当然、彼ら吸血鬼はテスタロッサを慕い敬う一族だ。彼女を差し置いて新しい魔王になるなどとテスタロッサへの最大限の侮辱だ。


「はは、あまり怒らないでくれたまえ。君たちが前王を慕っているのは知っているが、ね。いつまでも旧時代の終わった人間に固執するのはよくないよ」


「貴様……殺すっ!」


 とうとう怒りを抑えきれず走り出す吸血鬼たち。

 しかしウラカンは落ち着いた様子で二人の部下に「やれ」と命令する。


 こうして魔族と魔族の激闘の火蓋は切られたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] アイリス、落ち着け。落ち着いてウラカンを討つんだ。
[一言] 火蓋は『切る』。 切って落とすのは『幕』です。
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