第28話 閃光
ルイシャを頼ろうと言ったチシャを、カザハは「ふーん」と興味深そうに見る。
「な、なに? なんか顔に付いてる!?」
「いんやっ。ルイシャはんのことを信頼してるんだなあー、って思うただけやで」
「うぐ」
思わぬとことを突かれたチシャは顔を赤くし恥ずかしくなる。
カザハの時と同じく、最初は背が小さいからという理由でルイシャに話しかけたチシャ。しかしいつの間にかルイシャはチシャにとってかけがえのない友人であり最も頼りになる人物になっていたのだ。
「他人を信じるなんて馬鹿馬鹿しい」魔法学園に入るまではそう斜に構えていたチシャであったがいつの間にか友人に囲まれ過ごす時間を何よりも愛しく感じていた。もちろん恥ずかしくて誰にもそんな事は言わないのだが。
「こ、この話は終わり! 早くルイシャを探そう、確かバーン達と一緒にどこか遊びに行ってるはず……」
と言いルイシャを探し始めようするチシャ。
普通であればこの人混みの中からルイシャを見つけるなんて不可能に近いだろう。しかしチシャには解析魔法がある。これを使えば僅かな手掛かりからその人物の場所を探し当てることができる。
幸いクラスメイトの情報ならチシャの頭にしっかりインプットされている。王国の中にいるならあっという間に見つけ出せるだろう。
なので早速魔法を発動しようとした瞬間、近くの空に『ヒュルヒュルヒュル……パン!!』と赤い光の塊が打ち上がり、弾ける。
行き交う人々は「何だ? 花火か?」と足を止めて不思議そうにするが、チシャとカザハの反応は違った。
「赤色の閃光、ちゅうことは……」
「間違いないね、やっぱり何かあったんだ」
今の光はルイシャが作った簡易魔道具『魔光筒』によるものだと二人は分かった。
注ぎ込む魔力の波長によって葉の色を変える特殊な植物『魔色草』の特性を生かして作られたその魔道具は、注ぎ込む魔力の波長によって色々な色の光を打ち出す効果がある。
ルイシャはこの筒をクラスメイト全員に渡しており、何かあったときは空にこの光を打ち出すよう頼んでいた。
ちなみに赤い色の光は『緊急事態、手の空いてる者は光の元に集合』だ。
「誰が光を打ち出したのかは分からないけど行ってみよう。きっと何かわかるはずだ!」
そう言ってチシャは光の元へ走り出そうとし、カザハの手をギュッと握る。
「ひゃ! ち、チシャ!?」
突然手を握られたことで顔を赤くしドキドキするカザハだが、もったいない事に肝心のチシャは真剣モードなのでそんな事には気づかなかった。
「さあ行くよカザハ!」
「は、はいな!」
こうして二人は王城に向けて走り出すのだった。