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第27話 小さい二人

 遡ること数分。

 賑わいのある商業地区の通りを歩く男女の二人組がいた。

 魔法学園の制服を着た彼らは、特に何か明確な目的を持つでもなく色々な店に立ち寄っては出てを繰り返していた。どうやらよくある普通の学生デートのようだ。


 別段珍しくない光景だが、そんな二人には一つ共通点があった。

 それは背が低いということ。二人とも背丈は百四十センチほどしかなかったのだ。女子であればまだしも男子学生でこの身長の低さはそうはいない。


「うーん、やっぱなんか視線を感じるなぁ」


 行き交う人々から好奇の目を向けられ、小人族ハーフリングの男子『チシャ・ロックホムズ』は嫌そうな顔をする。ハーフリングは身長以外は人間とほぼ同じなため、人間からは他種族ではなく珍しい人間だと思われることが多い。

 なのでチシャは身長が低い人間と一緒にいることが多い。そうすれば自分が好奇の目を向けられることが少なくなるからだ。


 そういう理由でチシャは隣にいる女子生徒の『カザハ・ホマンデーナ』によく話しかけるようになった。女子生徒の中でも一際身長の低い彼女は一緒にいてとても居心地のいい存在だった。


 そう。最初はそれだけで話しかけてたのだが……いつの間にかチシャは彼女のことを好きになってしまっていた。

 なぜ、と言われるとチシャも返答に困る。何となく同じ時間を過ごす内にいつの間にかその感情は芽生え、今では無視できないほどに大きく成長していたのだ。


 今回の放課後デートもチシャが勇気を振り絞り「ね、ねえ、放課後ってさ、時間ある、かな?」とカザハを誘い実現したものだ。

 カザハはチシャがまさか自分にそのような気持ちを持っているとは露ほどにも思っていないため「ん? 今日は暇やしええでー」と軽く承諾したのだが、周りのクラスメートたちはチシャの気持ちに何となく気付いているので大変ハラハラして二人のやり取りを聞いていたのだった。


 そんなわけで二人は買い物デートに勤しんでいたのだが、チシャの気合いは空振ってばかりで中々仲が進展することはなかった。

 そんなデートの最中、唐突にカザハは立ち止まりボソッと呟いた。


「……なんか嫌ぁな空気やな」


「へ? 僕なんか変なこと言った!?」

 突然の言葉にチシャは焦り自らの行動を振り返る。特段変なことはしてないはずなのになぜ!?

 チシャの脳内は混乱しパニックを起こす。

 そんな感じであわあわするチシャを見たカザハは「ぷっ」と吹き出す。


「ちゃうちゃうチシャは関係あらへんよ。うちの言った空気ってのは王国全体の空気のことや」


 それを聞いたチシャはホッと胸を撫で下ろす。よかった、もしデートの空気が悪いなんて言われた日には不登校になってしまう。

 安心するチシャだが、カザハの王国の空気が悪いという発言も引っかかる。一体何があったのだろうか。


「王国の空気が悪い? どういうこと?」


「なんや朝からうちの虫っこ達の調子がおかしいんよ。警戒音を鳴らし続けとる子もおる。こんなの初めてや」


 カザハの体内には数え切れないほどの虫型魔物が住み着いている。

 その中でも特に小さい虫達が怯えたように震えていた。落ち着くようカザハが頼んでも一向にそれは収まらない。

 カザハも虫達とは長い付き合いがこんな事は初めてだった。


「うーん、もしかして昨日から王国に来ている魔族を警戒してるのかな?」


「そうなんかなぁ。昨日はなんともなかったんやけど」


 カザハは心配そうに腕に乗りながら震える虫を撫でる。しかしそれでも虫の震えが止まる事はなかった。


 その様子を見たチシャは真剣に考え始める。

 今何か良くない事が起きようとしているならほぼ間違いなく魔族が原因だろう。しかし昨日は虫たちに異常なかったという事は虫たちは魔族自体に反応しているわけじゃない。

 だとすれば……他に考えられるのは虫達が魔族のしようとしていることに怯えている可能性だ。

 何か大規模な魔法や儀式、虫達は魔族が行おうとしてるそれに怯え警戒しているのかもしれない。

 だとしたらヤバい。その考えに至ったチシャの額に汗が滲む。


「ひとまずルイシャに相談した方がいいかもしれない。あいつなら何か知ってるかも」


 真剣な顔でそうチシャは提案するのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎回早い頻度で更新して頂きありがとうございます!楽しく読ませていただいています(笑) [一言] ルイシャが居なくなったあとの無限牢獄でのテス姉とリオの生活や、無限牢獄でのルイシャの300年…
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