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第25話 分担

 冒険者パーティー『ジャッカル』。

 少し前にルイシャがダンジョンで出会った冒険者三人組のパーティーだ。

 ルイシャを兄貴と慕う彼らはダンジョンから帰った後も、度々ルイシャに会い一緒に食事に行ったり魔法を教えてもらったりしていた。

 当然そんなことをしていればルイシャの友人達とも面識が出来る。特にルイシャと一緒にいることの多いヴォルフとは何回も会ってる上に、同じ人を慕っているのでかなり仲良くなっていた。


「いったい何があったんだヴォルフ?」


「実は……」


 ジャッカルの三人に会うことのできたヴォルフは何があったかを話す。彼らがそこまで強くないことは知っているが、彼らの方が自分より頭が回る事も知っている。なので頭を下げ彼らに知恵を貸してもらえないか頼み込むのだった。


「本当なら俺一人で何とかしてえんだが残念ながらそうも言ってられねえ。力を貸してくれねえだろうか?」


 それを見たジャッカルのリーダーであるマクスは、ヴォルフの肩を掴んで起こし頭を上げさせる。


「水くせえ事いうんじゃねえよヴォルフ、兄弟ブラザーが困ってんだ喜んで力を貸すぜ」


 そう言ってニヤリと笑いながら親指を立てるマクス。後ろにいる仲間の二人もうんうんと頷いている。それを見たヴォルフは目頭が熱くなる。まさか自分にこんなに良くしてくれる人が現れるなんて少し前までは想像もつかなかった。


「ありがとう……ありがとう……!!」


「くくっ、何だ泣いてんのか? お前もやっぱりまだ子供なんだな」


「なっ、泣いてねえ! ちょっと目にゴミが入っただけだ!」


 目を擦るヴォルフをからかうジャッカルの三人。

 思わずムキになるヴォルフだが、口元はほころんでいる。


「くく、はいはい目にゴミね、そういう事にしといてやるよ。それじゃとっとと行動に移そう、ジームは何か思いつくことはあるか?」


 マクスが話を振ったのは盗賊職シーフのジーム。彼は戦闘力こそマクスより低いが、手先の器用さと知識の深さでマクスを上回っているので作戦を立てることが多いのだ。


「ヴォルフの言ってた魔族が突然爆発した件、そりゃ多分『呪法』だな」


「じゅ、呪法?」


 聞いた事ない単語にヴォルフはそう聞き返す。


「ああ、呪法ってのは魔法に似た技術の一つだ。使える奴はかなり少ないから知らないのも無理はない。今でも一部の魔族と人間に使い手がいるらしい」


「ほえー、全く知らなかったぜ」


「呪法は魔法と違って複雑なのが特徴だ。条件を満たしたら呪いの効果が発生したり、特別な手段を使わないと呪いが解けなかったりする。これを使える奴がいるとは厄介な敵だな」


「そうなのか……一体どうすりゃいいんだ」


 呪法という手がかりは掴んだが、結局解決方法が見つからず頭を抱えるヴォルフ。

 それを見たジームはニヤリと笑うとポケットからお札と液体の入った小瓶のような物を取り出す。


「安心しろ、こんな事もあろうかと『解呪札かいじゅふだ』を持ち歩いてる。これなら簡単な呪法ぐらい解くことができる。そしてこっちの液体は冒険者組合特製『ヨクネムレールZ』、ギガバッファローですら三日は寝続ける代物さ。この二つがありゃ魔族を無力化すんのなんざ簡単だ」


「ま、マジか!? すげえ! 何でも持ってるんだな!!」


 目を輝かせ羨望の眼差しを浴びせてくるヴォルフに、ジームは得意げに「ふふ、まあな」と答える。冷静を気取ってはいるが口元はニヤけている。どうやら余程嬉しいようだ。


「じゃあ呪いのほうはジームに任せていいか?」


「任せろマクス。俺とヴォルフで町に紛れた奴らは対処する」


「分かった。じゃあ俺とマールは組合に行く。何か出来ることがあるはずだ」


「おう、無理すんなよ。じゃあ行くかヴォルフ」


「ああ、戦闘は俺に任せろ!」


 自分たちの役割分担を決めた四人は別れ、この危機を乗り越えるためそれぞれの役目を果たしに行くのだった。

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