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第23話 動き出す悪意

 王城客室。そこは客人向けに豪華な家具で装飾されていた。一つの部屋を照らすには仰々しいシャンデリア、魔獣の皮で作られた高級ソファ。樹齢五百年を超える樹木を削って作られたテーブルの上にはフレッシュな果実水が置かれている。

 ウラカンとその腹心二人ウルスとスパイド、そして大臣グランツはそこにいた。


 高そうなソファーに座りながら一人考え事にふけるウラカン。これからの計画を頭の中で練っている彼だが、急にハッとした顔になる。

 それに気づいたウルスは心配そうに己の主人へ喋りかける。


「どうしましたかボス?」


「チッ、使えないヤツだ。お使いすら満足にこなせないとは」


 ウルスの問いに答えることなくぶつぶつと独り言を呟くウラカン。そんな彼の異常事態に気づいたグランツも彼に近づいてくる。


「おい、一体どうしたのだウラカン? まさか計画に問題が生じたのではないだろうな?」


「ああ大臣、大丈夫ですよなんの問題もありません。ちょっと私の部下がしくじっただけです」


 平静を装いながらもウラカンは顔に苛立ちを隠し切れていなかった。

 それを見たグランツは焦りを募らせる。もしこの計画が失敗すれば間違いなく自分は大臣の座を追われる。いやもしかしたら極刑もあり得るかもしれない。宰相ポルトフィーノはそれだけ厳しい人物なのだ。


「部下がしくじっただと? いったい何があったんだ?」


 ウラカンの肩を掴み問いかけるグランツ。

 ウラカンはその手を煩わしそうに払い除ける。


「問題ないと言ってるでしょう大臣、あまり私を苛つかせないでください」


「なっ……!? 大臣である私にその態度は不敬だと思わんのか!?」


 ウラカンのあまりにも失礼な態度に怒りを見せるグランツ。しかしウラカンからしたら人間領に入れた時点でグランツの役目は九割完了したようなものだった。もういつ処分してもいい存在。

 しかし今も生かしているのはまだ一つだけ役目を任せられそうだったからだ。それさえ終わればもう完全に用済みなのだ。

 なのでウラカンはグランツを殺したい気持ちをぐっと抑えてにこやかに対応する。


「……すみません大臣。私としたことが少し取り乱したようです」


「ん……ま、まあ分かればいいのだ。で? 結局何があったのだ」


 まだ怒りの火が完全に収まったわけではないが、ウラカンをあまり刺激しては何をされるか分からないのでグランツは引き下がる。


「実は外の偵察に行かせた部下が捕まってしまったみたいでしてね。我々のことを話してしまったようなのです」


「な!? 一大事ではないか!! どうするのだ!?」


 慌てふためく大臣を見てウラカンは心の中で溜め息をつく。

 これだから馬鹿は嫌いなんだ。

 計画に狂いが出ることなどあって当然。むしろその障害をどう乗り越えるのかが楽しいんじゃないか。

 だというのにこの馬鹿は不安を煽ってばっかで案すら出さない。ま、最初から期待してなんていないんだけど。


「安心してください大臣、私の部下にはあらかじめ呪いをかけております。もし秘密を話したら自らの魔力を使って爆発し、秘密を聞いた者もろとも爆殺する呪いを、ね」


「そ、そうなのか。なら安心だな」


「ええ、しかし計画を早めたほうがいいに越したことはないでしょう。大臣は急ぎフロイ王との対談に臨んでください。私も急ぎ儀式の準備に入ります」


 そう言って立ち上がるとウラカンは自分の荷物を手早くまとめ始める。


「ちょっと待てウラカン! ということはワシ一人で対談せんといかんのか!? そんなの聞いてないぞ!?」


「ええ今決めましたからね。なに。それっぽい事を言って時間を稼いでいただくだけで結構ですよ」


「ぐう、しかし……」


「大丈夫ですよ、最悪暴れていただいて構いませんから」


 ウラカンがそう言うと急にグランツは態度を変えて「え、いいのか?」と嬉しそうな表情になる。

 元々グランツは軍人上がりの大臣。争い事は大好きなのだ。


「なんだ暴れていいならわしに任せるが良い。ふふふ、もしかしたらわし一人でこの城を落としてしまうかもしれんな!」


 ガッハッハッハと豪快に笑うグランツを見てもう大丈夫だろうと判断したウラカンは部下を引き連れ部屋を出る。

 突然のトラブルに計画を狂わされたと言うのにその顔は溢れ出る愉悦を抑えきれない様子だった。


「ふふふ……いったいどこの誰が計画に気づいたんだろう、頼むから爆発如きで死なないでいてくれよ……!」


 ウラカンはそう小さく呟くと、足早に目的地へ向かうのだった。

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[一言] 魔族は戦闘狂しかいないのか( 'ω')
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