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第22話 爆拳

 バーンは口一杯に頬張った肉をごっくんと飲み込むと、自分の方へ駆けてくる男を一瞥する。


「何が起きてるのかは知んねえが……まあいい、親友ダチの言うことは信じるのがおとこってもんだ」


 そう言ってバーンは拳を構え走り出す。

 それを見た男は「身体能力強化バルク!」と魔法を唱える。すると男の体を赤いオーラが包み込み、身体能力が強化される。

 ただでさえ身体能力の高い魔族が強化魔法を使えば、とても生身の人間では太刀打ちできない。そう確信した男は余裕の笑みを浮かべながらバーンに殴りかかる。


「そこを退けガキィ!!」


 全力の右ストレート。しかしバーンは食らえばひとたまりもないその一撃を、ギリギリまで引きつけ回避する。

 ヴォルフと年がら年中腕試しで殴り合ってるバーンからしたらこの程度の攻撃、魔法を使わずとも避けるのは朝飯前だった。最近はルイシャにも挑んだりしてるので尚更だ。もちろんルイシャには勝ったことはないのだが。


「さて、今度はこっちの番だな……!」


 男の懐に潜り込んだバーンは強く握りしめた拳を振りかぶり、男の顔面目掛けて振るう。

 しかしいくら鍛えているとはいえ、人間の身体能力では強化魔法を使った魔族に拳でダメージを与えることは不可能に近い。

 ……それが普通の拳であれば、の話だが。


「くらいやがれ!! 爆拳ばっけん!!」


 なんとバーンの拳は男の顔面に突き刺さった瞬間爆発を起こし、男を吹き飛ばした。

「ガハッ……!!」と口から煙を吐き出しながら地面にドサリと落ちた男は気を失う。

 今バーンが使った『爆拳』と言う技は爆破魔法を拳の中に握り込み、直接相手を殴って打ち込むというなんともバーンらしい技である。

 元々バーンはインファイター気質であったのだが、爆破魔法とインファイターは相性が悪い。そこで新しく生み出したのがこの技だ。爆発をモロに自分も食らうので最初は失敗技だと周りには思われたのだが、バーンはひたすら毎日この技を打ち続けた。

 その結果彼は打たれ強さと爆破への耐性を獲得することに成功した。


「ふう、スッキリしたぜ」


 ルイシャ達に置いてけぼりをくらい溜まっていた鬱憤を晴らすことが出来たバーンは清々しい顔をする。

 そんなバーンを放ってルイシャとヴォルフは急いで魔族の男を再び縛り上げる。そんな二人の慌ただしい様子を見て流石のバーンも何か大変なことがあったのだと察する。


「なんだなんだ、また厄介ごとか?」


「うん実は……」


 ルイシャはバーンと別れてから何があったかを説明する。

 それを聞いたバーンは顔を曇らせる。


「思ってたよりもヤバそうだなそいつは。とにかく俺たちだけじゃ解決出来ねえのは確かだ。手分けして協力を頼むしかねえな」


「そうだね。まずは騎士団、ここは何より先に声をかけなきゃ。それと冒険者にも協力を頼んだ方がいいかも、自分たちも危ないって知ったら力を貸してくれるかもしれない」


「後はクラスの連中にも声をかけた方がいいだろ。戦えねえ連中も住民の避難誘導くらいなら出来るだろうしな」


「……あまりみんなを危険な目に合わせたくはないけど仕方ないね。出遅れたら本当にみんな死んじゃうかもしれない」


 三人はそえぞれ役割分担し己の役割を決め合う。

 ここから先は戦いが終わるまで会うことは出来ない可能性が高い。なので入念に話し込んだ。


「よし、ひとまず今決められることはこれぐらいかな。二人とも気をつけてね」


「大将こそご武運を。俺のことは気にせず突っ走ってくだせえ」


「はは、流石の俺様も緊張してきたぜ……も、もちろんいい意味でな!」


 三人は最後に拳をぶつけ合い、互いの健闘を祈るとバラバラに駆け出す。

 こうして王国を揺るがす大激戦の火蓋は切られたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「火蓋」は「切られた」が正しいとされています。 「切って落とす」のは「幕」です。 「火蓋を切って落とす」という表現が増えていますが、できるだけ正しく使用した方がいいと思いますがいかがでしょう…
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