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第21話 自爆

「「な、なんだって!?」」


 想像を超える恐ろしい計画にルイシャとヴォルフは驚愕する。

 魔族が良からぬ事を考えているのはなんとなく想像がついていたのだが、まさか王国民を皆殺しにするだなんて思ってもなかった。

 しかも新しい魔王を生み出す? いったいどうやって!?


「どういうことだ! 詳しく話せ!」


 ルイシャは男の肩を掴み激しく揺らす。

 まだ催眠雷撃の効果の続いている男はルイシャの質問に答えようとするが、その瞬間男に異変が起きる。


「い、いだい……! あ、あだま……!!」


 突然頭を抱え苦しみだしたのだ。

 驚いたルイシャはしゃがみ込んで男を覗き見る。すると男の額に謎の文字が浮かび上がっている事に気づく。

 それは将紋や王紋に使われる古代文字だった。男の額に書かれていた古代文字の意味する言葉は……『自爆』。それに気づいたルイシャは大声で叫ぶ。


「離れてッ!!」


 急いで飛び上がり男から離れるルイシャとヴォルフ。その瞬間魔族の男の体がカッ!! と光った後音を立てて爆発する。

 中位の爆発魔法に匹敵する爆発が起き、路地裏に大量の埃が舞い上がり隣接する壁に亀裂が入る。至近距離でこの爆発をモロに食らっていたらタダでは済まなかっただろう。

 事実男の隣にいた仲間は爆発をモロに受け倒れていた。恐らくもう息はないだろう。


「大将、いったい何が起きたんだ……?」


 離れたところに着地したヴォルフはルイシャに説明を求める。

 咄嗟に飛び跳ね逃げられたのはいいが何がなんだか分からなかった。

 正直ルイシャも完全に分かっているわけではないが、一つ推測出来ることがあった。


「多分口封じだ。もし今回の計画を話したら話した者を爆発させて話した相手ごと爆殺する気だったんだ」


「……なんだよそりゃ、なんでそんなことすんだよ!!」


「……多分だけど彼らはそんな魔法がかけられてる事を知らないんだと思う、そんなに忠誠心が高いようには見えなかったからね。だとしたら今回の黒幕は相当頭が切れて残忍な人物だ」


 ルイシャはまだ見ぬ敵の親玉を想像し、怒りを募らせる。

 そんな情の欠片もない人物を放っておくことは出来ない。何としてもこのふざけた計画を阻止しなければ。

 そう思案していたルイシャはここで初めてある事に気づく。


「……あれ?」


 男が爆発した地点、そこに転がっていた魔族の死体は一つだけだった。

 計算が合わない。爆発四散して一つ死体が無いのは分かる、だけど魔族はもう一人いたはずだ。どこに行ったんだ?


「……おい! 一人逃げてんぞ!!」


 爆発で舞い散った埃が落ち着くと、自分たちから離れるように逃げる影が見える。なんと魔族の一人は爆発から逃れてルイシャ達が逃げた方向とは逆の方向に逃げていたのだ。

 既にロープは切られて自由の身になっている。恐らく爪か何かでこっそり切っていたのだろう。


「くそっ、油断した! 多分気絶したフリをして逃げるチャンスを伺ってたんだ!」


 急ぎ男を捕まえにかかるルイシャとヴォルフ。

 しかし男との距離は離れている、このままでは追いつく前に大通りに出られてしまうだろう。

 人混みに紛れられては逃げられてしまう可能性も高い。それに先程の爆発が人混みの中で起きたら……考えただけで恐ろしい。


 最悪の事態がルイシャの脳裏をよぎる。しかしそれでも距離は縮まない。

 もはやこれまで……そう二人が思ったその瞬間、思わぬ助けが入る。


「もご! もっごもごごもご!(おい! やっと見つけたぞ!)」


 口いっぱいに何かを頬張る人物が路地裏の出口に現れ、男の行く手を塞ぐ。

 その人物はルイシャもよく知る人物だった。


「バーン! そいつを捕まえて!」


「も? もごもごご?(え? どういうことだ?」


「いいからお願い!」


 戸惑うバーンだがルイシャの必死の形相を見てただ事ではないと察し、言うとこを聞くことにする。


「もごご、もごごご!(俺に、任せろっ!)」

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― 新着の感想 ―
[一言] バーンよ、食べ物を口にしながら喋るんでないぞ。
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