第13話 衝突
太陽が真上に登り、門番たちの腹の虫が鳴り出した頃その一行は現れた。
まず目に映ったのは馬。遠くに見えたときは普通の馬に見えたが、近づくにつれてその馬がただの馬でないことが分かる。
「お、おい。なんだあの馬、デカすぎねえか!?」
門番たちが驚くのも無理はない。その馬は魔族領にのみ生息する特殊な馬『グレートホース』なのだから。
その馬の性能を知った昔の人間はその破格の性能を羨み自分たちも使おうと試みたことがあるのだが、グレートホースは自分より弱い者を主人とは認めないためその計画は破綻したという歴史がある。なのでこの馬を見たことのある人間は少ないのだ。
そして近づいてくるにつれグレートホースが引く馬車に乗っている人物も見えてくる。
遠目から見ると人間によく似ている。しかしよく見れば頭部から角が生え、尻尾も生えている。
それだけでなく三メートルを超えるサイズの者もちらほら見かける。人間種にもこのサイズの者もごく稀にいるが、魔族にはあまり珍しくないようだ。
そして一番の特徴は彼らから放たれる魔力。人間の物よりもずっと濃くて、深い。
魔法に詳しくない者でもそう感じられるほど彼らの魔力は人間のそれとはかけ離れていた。
そんな彼らはとうとう王国正門に辿り着く。
固唾を飲み魔族を迎え入れた門番たちの前に一人の魔族が馬車から降り挨拶してくる。
「これはこれはヒト種のみなさん。お出迎えありがとうございます。私はグランツ大臣の部下ウラカンと申します。どうぞお見知り置きを」
そう言って恭しく一礼するウラカン。
一見礼儀正しく見せるウラカンだが、門番達は彼から言いようのない恐怖のようなものを感じ動けずにいた。
それを見かねた騎士団長エッケルはウラカンの前に進む。
「ようこそいらっしゃいましたウラカン殿。私はエクサドル王国騎士団団長エッケル・プロムナードと申します」
それを聞いたウラカンはぴくり、と眉を動かすと笑顔見せる。
「これはこれは、わざわざ『王国の盾』がお出迎えをしてくださるとはこの上ない喜びです」
「私のことをご存知でしたか。嬉しいですね」
「ふふ、あなたの武勲は魔王国にも届いてますよ。王国最強の騎士、昔から一度お手合わせ願いたいと思っていました」
「ほう……」
その瞬間二人の間の空気がピリッ!と張り詰める。
達人同士が飛ばす殺気のぶつかり合いだ。気の弱いものならその場にいただけで失神してしまうだろう。
しかし幸いなことにそのようなヤワな人間はこの場にいなかった。
「そうですね……機会があれば『是非』お手合わせしたいものですね」
「ふふ、楽しみにしてますよ」
二人は笑いあい、牽制しあいながら門をくぐり中に入っていくのだった。