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第8話 不幸な村

 何の警戒もせずどんどん村へ馬車を進めるウラカン一行。

 時刻は昼。当然そんなに堂々と近づいては村の人間もウラカン達の存在に気づく。

 近づいてくるのが普通の馬車であればそこまで警戒しないが、ウラカン達の馬車を引くのは特大の馬グレートホース。平和でのどかな村に住む彼らからしたら見たことのない怪物だ。

 当然村は大慌て。話し合いの末代表者である村長と村の中で力自慢の男二人が安物の剣を手に取りウラカン達を出迎えることにした。


「ほう」


 勇敢にも自分の前に立ちはだかった人間を見たウラカンは感心してそう声を出す。

 てっきり逃げ惑うものかと思ったが意外と勇敢なようだ。


「私はこの村の村長バモスです! この村に何用でしょうか、お聞かせ願いたい!!」


「私は誇り高きベルフォモンテ家の後継ぎウラカン・ベルフォモンテです」


 ウラカンは御者台に座ったまま見下すように村長に話しかける。

 屈辱的な対応だが戦力差は明らか。村長バモスはなるべく刺激しないようにウラカンに接する。


「ご挨拶いただきありがとうございますベルフォモンテ様。してどのような理由でこのような辺境の村に来られたのでしょうか? 生憎ですがこの村にはベルフォモンテ様を満足させられるような物は無いと思うのですが……」


「ふむ、確かにあなたの言う通り私はこのような村に用はありません。今回は私達の進路上にたまたまこの村があっただけなのです」


「そ、そうだったんですね!」


 村長と二人の付き人の顔がパッと明るくなる。

 ウラカンはそれを見て思わず笑みが溢れる。

 ああ、もし自分たちが助からないと知ったらどんな絶望の表情を見せてくれるのだろう。それを考えただけで口内に涎が溢れ、股間は音を立て隆起する。


「むふ、むふふ」


 生粋のナルシストでありサディストである主人のそんな様子を見てウルスは「うわぁ……」と思わず声を漏らす。

 能力は優秀なのだがその精神には大きな問題がある。そこさえ治ればなあとウルスは常日頃思っていた。


「あなた達の村には用はない……のですが、むふ、あのですね、私たちはここを真っ直ぐ進まなくてはいけないのですよ」


「ど、どういう事ですか? 迂回なさればいいじゃないですか」


 何気なく発された村長の言葉。

 しかしその言葉はウラカンの怒りのツボを的確に突いてしまった。


「迂回しろ……だと? か、下等種族がこの私に迂回しろ、だと? ふふふふ!! 奴隷で済ませてあげようかと思いましたが気が変わりました。ウルス! スパイド!」


 ウラカンに呼ばれ二人の魔族が馬車から降り村長の前に立つ。

 スパイドと呼ばれた魔族は大柄なウルスとは対照的に細身の魔族だ。体つきは貧弱な印象を受けるが彼の腰に携えた二本の大きな青竜刀が彼の細い体とマッチし不気味さを醸し出している。


「へい、なんでしょうかボス」


「長旅でお前も随分と溜まっただろう。いいぞ遊んで」


「ほう、それはそれは……」


 目を細めうっとりした顔で目の前の二人の男性を見るスパイド。

 言葉にできぬ不気味な気配を感じ、後退りしようとする二人だがその瞬間スパイドの手が視認できぬ速さで動く。


「「へ……?」」


 一瞬の間に振るわれた二本の刀は寸分違わず二人の首を切断し、長年連れ添った首と体を切り離す。主人を失った体は血の雨を吹き出しながら地面に倒れ動かなくなる。


「な、なにを……」


 絶句する村長。

 村では遠目から様子を見ていた村人が恐怖のあまり叫び出す。

 そんな異常な光景を見ながらウラカンとスパイドは恍惚の笑みを浮かべていた。


「「んん〜、最……高」」


「はあ、なんで俺のボスと同僚はこんななんだ」


 ぼやきながらもウルスは主人の命令を果たす為村にズカズカと入っていくのだった。

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