第23話 英雄
「お待たせ、みんなを守ってくれたみたいだね。ありがとう」
「もったいなきお言葉……！」
その言葉に頷いて返事したその人物は、ゴーレムの拳に両手をかざす。
その体勢はまるで素手で受け止めるかのようだ。
「む、無茶だ！」
叫ぶマクス。しかしその人物は聞く耳を持たない。
無情にも振るわれる拳。その人物はその拳を受け止め……なかった。流れを止めることもはね返すこともなく、手のひらで叩くことでほんの少し軌道をズラしたのだ。
「気功術、守式六ノ型『柳流』」
その技は相手の攻撃を柔の力で受け流し軌道を変える技だ。
しかし第三者から見たらゴーレムの攻撃を素手ではたき落としたようにしか見えない。そんな人外じみた技にジャッカルの三人は口をあんぐり開けて驚く。
しかし彼の攻撃はそれだけに止まらない。
そのままはたき落とした腕の上を走って胴体まで接近した彼はどこからともなく大きな光り輝く剣を取り出す。
「この岩質、魔封石だね……だったら相当硬いはず。だったらこの技で決める！」
一気に接近した彼……ルイシャは天高く竜王剣を振り上げると、地面に叩きつけるように剣を振り下ろす！
「必殺、次元斬ッッ！！」
放たれるのは次元をも切り裂く必殺の一撃。
その斬撃は頭頂部から股にかけて両断し、ゴーレムは綺麗に真っ二つに分かれる。
それを見たジャッカルの三人は大きく開けた口を更に開き、目ん玉をひん剥きながら「「「えええええぇぇぇぇっっ！！！」」」と驚く。
音を立てながら崩れ落ちるゴーレム。
既にその大きな眼から光は消え去っており、体はピクリとも動かない。
完全に機能が停止したことを確認したルイシャは一箇所に集まったジャッカルの３人の元に近づく。
「大丈夫ですか？ お怪我はありませんか？」
ピンチの時に颯爽と現れ、一撃で怪物を倒してのけたルイシャがジャッカルの三人からはまるで本物の英雄の様に見えた。
「し、少年……いや……兄貴！ 兄貴と呼ばせて下さい！！」
「お、俺も！」
「ちょ、私だって！」
「えぇ！？ 僕のほうが年下だよね！？」
三人は困惑するルイシャにお構いなく兄貴コールを始める。
最初はやめるよう言うルイシャだったが三人の熱烈なラブコールに押され、やがて折れる。
「はあ……わかりました。それでいいですよもう」
「「「ありがとう兄貴！！」」」
嬉しそうにそう返事をするジャッカルの三人を見てルイシャはやれやれと首をふるのだった。
