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第19話 四代目

 慌てたルイシャは急いで魔力探知をしてアイリス達の現在地を探す。

 どうやらそんなに遠くにはいないようだ。真上の方にそれらしき反応を感じる。


「シャロ! 僕先に行ってるね!」


「ええ! 私も後から行くわ!」


 シャロに別れを告げたルイシャは建物から足早に出ると、足に溜めた魔力を爆発させ天井にぶつかる。

 そしてそのまま体を回転させ、まるでドリルの様に掘り進んでいく。


 少し遅れて建物から出た二人はルイシャを見送る。


「す、すごい人ですね……あの方は何者なのですか?」


「さあ? 私が聞きたいぐらいよ」


 そう言って「くくく」と笑うシャロ。それを見ただけでゾンビの女性は二人が堅い絆で結ばれていることを察する。

 彼らみたいな若者がいるなら大丈夫だろう。そう安心した彼女は安らかな顔で朽ちていく。


 シャロはそんな崩れゆく彼女の手を取り、その濁った目を強く見つめる。


「私たち一族のために長い間ありがとう。間違いなくあなたも『勇者』よ。未熟な私よりもずっとね」


 その言葉に彼女は膝をつき泣き崩れる。

 もう彼女に涙を流すことなど出来ないが、確かに熱いものが胸の内に込み上げてくる。


「ありがとうございます……その言葉だけで私は報われました。その言葉が頂けただけで無限にも思える時を耐え抜いた価値があります」


 思わず弱音を溢してしまう彼女の頭をシャロは優しく抱きしめる。べチャリと彼女の肉片と死臭が服につくが気にしない。

 細く、力を込めれば折れてしまいそうな柔らかい体。しかし彼女の心は例えゾンビになろうとも力強いままだと感じた。


 シャロは抱きしめた彼女を離すと再びその目を覗き込み言う。


「あなたの意思は私が受け継ぐ。だから安心して逝きなさい」


 それを聞いた彼女は安らかな表情を浮かべる。


「ふふ。おかしいですね。姿も年も性別すらも違うのに……あなたからは確かに勇者様と同じ雰囲気を感じます」


「それは光栄ね。私も彼に負けない勇者になって見せるわ」


「それは……素晴らしいです、ね……」


 徐々に彼女の目は虚になり口も満足に動かなくなってくる。

 どうやらお別れの時のようだ。


「ああ……勇者様……私も、今あなたの元へ…………」


 そう言い残して彼女は完全に物言わぬ骸になる。

 そしてその骸は砂のように崩れさり、やがてこの空間にある砂と混ざり合い完全にその境界線を無くす。

 ゾンビ化の魔法が解けたことにより、今までせき止められていた時の流れが一気に流れたのだ。


 シャロは彼女だった砂を複雑な表情で握りしめた後、右手の手袋を外しその下に隠されていた光り輝く紋章を見ながら呟く。


「あなたの遺志は私が受け継ぐわ……四代目勇者(・・・・・)である私がね」

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― 新着の感想 ―
[一言] シャロ、今のお前なら勇者を胸を張って名乗れるサ。
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