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第16話 ゾンビ

 一方その頃ルイシャ達。


「自らゾンビになったですって……」


 あまりの事実に言葉を失うルイシャとシャロ。

 そもそもゾンビとアンデッドとの違いは何か。

 アンデッド、それは人や魔物の死骸が大気中の魔力の影響を受け魔物となったものの総称だ。

 生者を憎み負のエネルギーを撒き散らす冒険者が最も嫌がる魔物の一種だ。


 そしてゾンビ、こちらは人や他の生き物が『人為的』に魔法などでアンデッドの様に姿を変えられた姿だ。

 ゾンビになる理由は様々。

 その者を使役するため、はたまた永遠の命を手にするためなどだ。

 一度ゾンビになった者は生命の輪廻から外れる。体が腐りきらない様に気をつければ数百年は生きながらえることができる。

 しかしだんだんと肉体は腐っていくので徐々に肉体能力、そして思考能力と記憶も衰えていってしまう。


 なのでいくら長生きできるといってもゾンビに好き好んでなる者は極めて少ない。

 特に女性はその美しかった顔が崩れていくことにとても耐えられない。それなのに目の前の女性は三百年もの間、たった一人ここでいつ来るかわからない勇者の情報を渡す者を待っていたのだ。

 きっと何度も自ら命を絶とうと思っただろう。

 しかしこの女性は耐え切った。どんな拷問よりも辛いであろう時を耐え忍び未来にバトンを繋いだのだ。


「ふふ、本当であればお二人にちゃんと自己紹介をしたいのですが残念ながら三十年くらい前に自分の名前を忘れてしまいました。これだからゾンビの脳は嫌になっちゃうわ、ごめんなさいね」


「そんな……謝らないでください」


 ルイシャにはその時間の重みがわかるだけにとても辛かった。

 無限牢獄の中で一人で三百年も何もせず過ごすなんて考えただけで頭がおかしくなりそうだ。

 目の前の人はおそらく勇者オーガの関係者なんだろう。なので自分から見たら敵なのかもしれない。でもとても彼女と戦う気になんてならなかった。

 それよりも受け取らなければ、彼女が長い間守り通した勇者の情報を。


「あなたが守り抜いた情報は僕たちが受け継ぎます。だから教えていただけますか?」


 その言葉にシャロも無言で頷く。

 それを見た女性は目元を拭う。もう涙は出ることなどないが、確かに彼女は目元が熱くなるのを感じた。


「それでは説明しましょう。この壁画に描かれている勇者様と三人の人物、この方達は最恐災厄と名高い悪の帝王『悪虐王ジャバウォック』を討伐した方達です」


 それを聞いた二人は驚き目を見開く。

 なぜなら勇者の仲間がいたことは広く知られているが、それが誰で何人いるかは完全な秘密となっていて子孫であるシャロですら知らない情報だったからだ。

 そもそも仲間の情報を隠すこと自体不思議なことなのだが、何故かオーガはそれを誰にも明かさなかった。

 その理由として最も有力な説は仲間が異種族だった説。三百年前は今よりも亜人や獣人への差別が凄まじかったため勇者の評判を落とさないよう隠していたという説だ。


 しかしその説も勇者の人徳の高さを考えるに違うのではないかと言われている。


 そんな人類史にとっても大きな謎がこんなところで明らかになるなんて二人は想像だにしていなかった。


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