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第15話 脇役

「なんで……助けたのですか。私なんて放っておけばいいのに」


 アイリスは理解できなかった。

 今までほとんど話したことない自分をなぜ危険を冒してまでカザハが助けてくれたのかが。もし逆の立場ならば自分は助けなかっただろう。


 アイリスの純粋な疑問を受けたカザハは一瞬キョトンとした顔をすると「ぷっ」と吹き出す。


「な、なぜ笑うのですか」


「いやすまんおかしゅうてな。ウチがなんであんたを助けたか、その理由はもうあんたなら知っとるはずやで」


「私が……知ってる?」


 意味深な事を言われ困惑するアイリス。

 そんなことを言われても全く心当たりがない。一体何のことだと聞き返そうとするが、その間にゴーレムはだいぶ近づいて来ていた。


「来るぞ! 逃げろ!」


 マクスの叫び声でその場にいた六人は散り散りに分かれる。

 ゴーレムの拳は六人がいた地点に激突し、ビキビキビキッ!! と地面に亀裂を走らせる。とてもではないが常人に耐えられる威力ではない。


「うへ、魔法の効かない体にこの破壊力。このゴーレムの強さA級はあるんじゃないか?」


 マクスの言うA級というのは強さのランクだ。

 F〜A級の順で強くなっていき、更にその上にS級SS級SSS級が存在する。


 そしてA級の魔物は一般的に金等級の冒険者パーティや将紋の持ち主でやっと倒せるランクの強さだ。

 とてもじゃないが銅等級のジャッカルが太刀打ちできる相手ではない。


「マクス! 逃げようよ!」

「そうだ、俺たちが敵う相手じゃない!」


 仲間からそう提案されるマクスだが彼は首を縦に振らなかった。

 出来ることなら彼だって逃げたいがいつの間にか入って来た通路は塞がり逃げ道がなくなっていたのだ。


「じゃあせめて通路の端っこでジッとしてよう! あんな化け物と戦うこたねえ!」

「そうよ! 私たちじゃ足を引っ張るだけだわ!」


 仲間二人に必死に説得されるマクス。

 確かに二人の言うことは正しい。以前のマクスであれば迷わず逃げていただろう。

 しかし今のマクスは違った。


「なあ、お前らは今回のダンジョンどうだった?」


「へ? どういう意味だそりゃ」


「俺はさ、楽しかったんだよ。聞いたこともない仕掛けに今まで経験したことのない難易度、そんで偶然であった常識外れに強い子供とそれに振り回される俺たち。まるで物語の登場人物にでもなった気分だった」


 マクスの言葉を二人の仲間は真剣に聞く。

 二人も同じ気持ちを全く抱かなかったと言ったら嘘になる。


「そしたらよ、思い出しちゃったんだよな、冒険者になりたてのあの頃を。有名な冒険者になることを夢見てたまだガキだったあの頃をよ」


 冒険者になったものは必ず大きな夢を持ってその扉を叩く。しかしその夢を掴めるものなど一割もいない。

 そうした現実を知るうちにある者は辞め、ある者は腐っていく。

 しかしマクスはまだ腐り切ってはいなかった。


「今更主人公になれるだなんて思っちゃいねえ。でもよ俺たちだって無駄に十年も冒険者をやってる訳じゃねえ。見せてやろうぜ、俺たち脇役の意地をよ」


 まるで新人冒険者の頃のように目を輝かせ言うマクス。

 それを見た仲間の二人は「はあ」とため息を吐くと覚悟を決めニヤリと笑う。


「しょうがねえ、リーダーがそう言うなら従ってやるよ」

「わ、わわ私も頑張ります」


 二人だって英雄になることを夢見なかったわけじゃない。

 もちろん今からそんなものになれるとは思ってないが、それでも英雄譚の端役になれるなら命を賭ける価値があると思ったのだ。


「くく。最高だぜ。お前らとパーティを組んでよかった」


 そして三人はゴーレムと戦う子供達の方を向く。

 なんとか戦えてはいるが戦況は良くなさそうだ。


「よっしゃ行くぞお前ら!」


「「了解!!」」

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― 新着の感想 ―
[一言] 続きをお願いします。
[一言] 脇役には脇役の矜持(いじ)というものがあるンだよ。
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