神国アマリア
東暦2050年、アマリア国は「ミカマ」が治める国となっていた。
これはアマリアという国の「ミカマ」を巡るお話。
アマリアという国の「西地区」で生まれ育った神童はじめは「大人」の言う事にとても素直だ。
ピンポンパンポーンという音が「西地区」全体に鳴り響きリビングのテレビが突然つく。
テレビのチャンネルには国営放送、民放放送とは別に「ミカマ」のお言葉を伝えるチャンネルがある。
そのチャンネルはテレビが電源にさえ繋がっていれば強制的につく様になっている。
そしてテレビにはいつもの光景が映った。金色に彩られた部屋に一人の男が現れる。
眼鏡をかけた35歳くらいの平均的な体形の男。その男は金色の机の前に歩いてきてマイクに向かっていつものように喋る。
「国民の皆さんおはようございます。今日も善き一日を送りましょう。それではアマリア国130代ミカマ陛下からのお言葉をお伝えします。今日も皆仲良くあい助け合って一日を過ごすように。以上でございます。それでは皆さん善き一日を、さようならまた明日。」テレビはそこで消える。
「今日もミカマ陛下のおっしゃる事は素晴らしいわね。」母はニコニコとはじめの方を見て言う。
「うん本当にそうだね、ミカマ陛下程素晴らしい方はいないよ。」はじめはそう言って急いで朝食を食べる。
朝食を食べ終え急いで身支度をする。今日から通う新しいアマリア加護学園の制服を初めて着る。
白地に青のストライプが入った制服はとてもおしゃれで汚れ一つない。
昔は道にゴミが捨てられた事があったなんではじめには信じられない。東暦2050年。アマリアという国は本当に平和だ。汚れ一つない道を歩き駅に向かう。駅に着くともう辺りは人でいっぱいだった。
駅の階段をなんとか上がりアマリア加護学園に向かう電車に乗る。
電車は高い壁の上に線路が敷いてありその上を走る。その高い壁は「グレイト・ウォール」と呼ばれている。
電車の窓からは何もない空間が延々と広がっている。そこには家もなくお店もなく人っ子一人歩いていない。いつも窓からだけ見えるその場所に入った事はない。ただ何もない空間が延々と広がっている。
電車が「イエロー地区第4エリア」に着く。電車から降りて駅の外に出る。
駅から「アマリア加護学園初等部」、「アマリア加護学園中等部」、「アマリア加護学園高等部」に向かう道が分かれていて「アマリア加護学園高等部」に向かう道に行く。
今まではじめは「イエロー地区第2エリア」の学園に通っていたから「第4エリア」に来たのは初めてだ。
なので当然知り合いは誰もいない。新しい景色がはじめをまっさらな気持ちにさせる。
しばらくするとアマリア加護学園が見えてきた。大きな校舎がはじめの目の前にある。おそらく本校舎であろうその建物の他にも今見えるだけで他に二つの校舎がある。
校門を抜け校舎の前にはってある掲示板を見る。掲示板にはそれぞれのクラスと名前が書いてあった。
そこではじめは自分の名前を見つけ校舎に入ろうとした、その時だった。
「ねえ。」
声がした方向をはじめが見ると見た事のない人がいた。
「あなたが神童はじめ。」その人の目はとても鋭く僕の事をまっすぐに見る。
「う、うん君は。」しかしその人は僕の質問には答えない。僕の事を見ている。そして我に返った様に
「ああ、ごめんなさい。私は、、、私は桜。」
桜はアマリア国の中では有名な花だ。今も学園の中の桜の木の下にいる。
「いい名前だね。」僕は本当にそう思って言ったのに彼女は顔をしかめて
「私は嫌い。」そう言った。
「私はこの名前嫌いなの。」と言った。
桜が風で舞う、桜の花びらが彼女にかかりそれを彼女が手で払う。とても嫌いな物を触るように。
払われた桜が地面に落ちる。その様子を僕はただじっと見ていた。
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