偏狭な世界・22
日本の何処にでもいる高校生ベニシロは、ある日異世界の魔法使いに召喚されてしまう。
後継者として魔法使いから極限の魔法を叩き込まれ、最強の魔法使いとなったベニシロは、その力を生かして異世界で第二の人生を歩むことにした。
目指すは最強ハーレム。異世界の美女すべてを手に入れ、自分だけの楽園を築くこと。
今ここに、ベニシロによる野望が始まった。
「ふわぁ、もう朝か」
俺は自室のベッドの上で伸びをした。
気がつけば窓から朝日が差し込んできていた。
でも全然寝たりない。
昨日はデビルドラゴンの討伐と冒険者ギルドへの報告で、ほとんど丸1日動きっぱなしだったからなぁ。
まだ全然疲れが取れていない。
というわけで二度寝しよう。
よし、決定!
そう思っていると、ばぁん、と扉が開かれた。
入ってきたのは、最近パーティーに加わったばかりの女の子、セーミだった。
「おはようございますですわ、ベニシロさん!」
「うう、なんだよセーミ。朝からうるさいなぁ」
「起こして来いって言われましたの! もうすぐご飯ですわよ!」
「うーん……オレは後でいいや……」
「いけませんわ! 朝食は1日の始まりです! きちんと食べないと力が出ませんわよ!」
「声がでかいよ。あと身体を揺するなよ」
耳元で喚かれ、肩をつかまれガクガクされて、オレは呻いた。
朝っぱらから元気だな、コイツ。
昨日のデビルドラゴンとの戦闘じゃ、『おりゃー』なんてドでかい杖を振り回して、パーティーで一番活躍してたってのに。
体力増強のスキルでももってんのかな。
「分かった分かった。起きるよ。……むう」
「どうかしましたか?」
「いや、ちょっとなぁ」
オレは毛布をそろそろと持ち上げて、下半身を見た。
昨日は忙しくてできなかったから、すっげームラムラしてる。朝だし。
このままみんなの前に出たら、確実にセクハラだなんだと文句を言われてしまう。
うーん、仕方ないなぁ、よし。
オレは決断すると、セーミの腕をつかんだ。
そしてベッドの中に引っ張り込んだ。
「あっ」
セーミは軽く驚いて声を上げたが、抵抗する様子はなかった。
オレはそのままセーミを押し倒し、馬乗りになった。
「……なんですの?」
セーミが可愛らしく小首を傾げた。
その仕草がとても愛しく思えて、オレは彼女にキスをした。
セーミはやはり拒むことはせず、むしろオレの首に両手を回してきた。
「なあセーミ」
「はい」
「お前もオレたちのパーティーの一員だからさ。だから、いいかな?」
オレのパーティーメンバーは、全員が女の子だ。
そしてオレは、セーミを除いたその全員と関係をもっている。
そのことを、セーミも知っているはずだった。
セーミは少しだけ不安そうに目を潤ませた。
そしてオレに聞いてきた。
「……“きらきら”いっぱい、私にくださいますか? 見せてくださいますか?」
「ああ。たくさんあげるよ」
オレは答えた。
ときどきセーミが口にする、わけの分からない言葉だ。
ダンジョンに潜って財宝を見つけたときに、『きらきらですわー』なんて言ってたから、たぶんそのことだろうとは思う。
どうせこれからも一緒に冒険していけば、嫌でも宝物を見つけることなるんだし、構わないだろう。
するとセーミは、ゆっくりとうなずいた。
「じゃあ……どうぞ……」
セーミがすべてを受け入れるように、ベッドの上で両腕を広げた。
オレはうなずき返し、セーミの服に手を伸ばした。
ここまでくるにはもっと時間がかかると思っていたが、チョロくてよかった。
数ヵ月前にたまたま同じクエストを受けていたから声をかけたが、ホイホイとオレのハーレムに加わってくれた。
白い肌に、長い薄紫の髪。まるでお人形さんみたいな可愛さが気に入ったのだ。
しかし実は、1度だけ会ったことのある彼女の友だちの方も気になっていた。
あの桃色の髪。つんとすました気の強そうな顔。ノーリちゃんという名前だそうだ。
正直ものすごくタイプなので、ぜひ彼女もハーレムに加えたいと思っている。
でも今はまず、このセーミだ。
オレは服の上からセーミの胸を揉みしだきながら、ボタンを1つ1つ外していった。
ドでかい杖を振り回してるくせに華奢だなコイツ。
それに身体がひんやりしてるや。
緊張してるのかな? でもそれにしては、脈がはっきりしないような。
ま、どうでもいいか。
オレは思い切って、セーミの服の胸元をはだけた。
「……うげっ……」
団員ナンバー7。
セーミは、“きらきら”するものが好きだ。
たくさんの金銀財宝、大理石で設えられた絢爛な建築物、軽快かつ壮大な音楽。
太陽や星々、雄大な自然、そして強固な意志をもつ者が見せる輝き。
有形無形を問わず、きらきらして見えるもの、感じられるものが大好きなのだ。
だから彼女は、探し求めている。渇望している。
それは単に、セーミ自身がどうしようもなく“きらきらしていない”と感じられてしまうから。その反動から生じてしまう衝動的な、荒々しく露骨な欲求であった。
セーミは、暗い穴の中で生まれた。
あるいは死に、そして再誕した。
光なき闇の世界。
自身を取り囲む無数の影たち。
がんじがらめで冷たく固い縛め。
殴打され。四肢を、指の先をもがれ。そしてまた繋ぎ直され。
何度も何度も、しつこく繰り返される痛苦。
体表を這いずり回る虫たち。
口や股、尻の穴に突っ込まれる生暖かい棒。
掻きまわされ。身体の奥の奥までまさぐられ。そして絶頂に放り込まれ。
何度も何度も、しつこく繰り返される快楽。
それが自我に目覚めたセーミの中にある、もっとも古い記憶だった。
数や時間という概念を知らなかった彼女には、そのおぞましい―セーミ自身にはまるで理解できていないのだが―体験がどれだけ続いたのかは分からなかった。
ただとにかく、そういうものなんだな、と納得していた。それ以外の一切を知らなかったし。
もし仮に、『自身が故郷の世界において死の神に捧げられた供物であり、信者たちがその寵愛を得んがために彼女を可能な限り惨たらしく扱っていた』という事実を知ったとしても、すんなりと受け入れていただろう。
無論、そんなことは知る故もなかったし、今後も周囲の人間は誰1人として、それを彼女に伝えることはないのだが。
とにかく。永劫に続くかと思われたその儀式は、あるとき唐突に終わりを迎えた。
“きらきら”だ。
闇を振り払う、目を焼くほどの眩い輝き。外界の光だ。
そして慄く影たちを打ちのめす、より一層強い輝き。
桃色の旋風。凛とした瞳。何者にも砕かれぬことのない、硬い硬い意志の発露。
惹かれた。焦がれた。そして、付いて行こうと決意した。
あの不死人の女王と、その仲間たちに。
セーミは、“きらきら”するものが好きだ。
自身と同じく、死という絶対の運命を捻じ曲げた歪な存在でありながらも、あんなにも表情豊かで、心から輝いている仲間たちのことが。彼女らが見せてくれる、素晴らしい一切が。
だからセーミは、団とともにあろうと思っている。愛している。
それは単に、どうしようもなく“きらきらしていない”自分に、まだ知らない輝きを見せてくれるから。そして何より、セーミをきらきらと輝かせてくれるから。
でも時々、こうも思うのだ。
それはひょっとして、他の人たちもそうなのではないのか、と。
団の仲間たちでなくても、セーミにきらきらをくれるような。そんな人たちがまだ、いるのではないのか、と。
オレは半裸になったセーミを前に、固まっていた。
セーミの胸元には、大きな穴が開いていたのだ。ちょうど心臓があるあたりだ。
だがしかし、そこには心臓がなかった。ぽっかりと空洞になっていた。
だから脈を感じられなかったし、身体も冷たかったのだ。
そしてそれだけではなかった。
見える範囲に大量に、切り傷、打撲、刺し傷に火傷の痕が見えたのだ。
明らかに普通じゃない。良く今まで生きて……
というかコイツ、本当に生きているのか? もしかして、ゾンビってやつ?
「どうしましたの?」
「い、いや、ちょっと……」
「いいんですのよ。貴方が望むのでしたら、私」
セーミが両手でオレの顔をつかもうとする。
オレは恐くなり、思わず大きく仰け反った。そしてベッドの端に尻もちをついた。
セーミは笑いながら身体を起こし、またオレに向かって手を伸ばしてくる。
「どうしたんですのぉ? なんで逃げるんですのぉ?」
「ひっ……!」
「うふふふ……ねぇ、ちょうだぁい……あなたのもってる“きらきら”……私も欲しいですわぁ……」
「さ、触んなよっ!」
オレはセーミを両手で思い切り突き飛ばした。
セーミは勢いよくベッドから転げ落ちた。
「あぅっ!」
「あ、ゴ、ゴメン」
オレは我に返ると、慌ててベッドから降りてセーミに駆け寄った。
セーミは床の上で頭を押さえてうずくまっていた。ベッドから落ちるときにどこかに引っかけたのか、服が破けていた。
「悪いっ、ちょっと驚いちゃってさ」
「い、いいんですの。それよりも、さぁ……続きを……」
セーミが立ち上がってオレを見た。
だが今はもうそんな気分にはなれない。
オレは首をふって言った。
「今日は、やめとこう」
「え? で、でも私……」
「気持ち悪くって……いや、気分が乗らなくってさ」
「わ、私、なにか悪いことをしてしまいましたの?」
「そんなんじゃないけどさ。とにかく、ゴメン。1人にしてくれ」
「……分かりましたわ……」
セーミは破けた服の胸元をおさえながら、部屋から出ていった。
扉が閉まると、オレは大きく溜息をついた。
「あーあ、驚いちゃったよ。あんなバケモンだと知ってたらなぁ」
さすがにゾンビとヤる気にはなれなかった。妊娠もしないだろうし。
可愛いしそこそこ強いからパーティーに誘ったけど、あれじゃあハーレム要員にはならないな。
なんか理由つけて追い出すか。あ、でもそうすると、あのノーリちゃんはどうしようかな。
う~ん、考えてたらまたムラムラしてきたぞ。さてどうしようか。
と、思っていると、今度は入れ替わりでフェリンがやってきた。
フェリンは俺の最初のハーレム要員だ。金髪エルフの女の子で、奴隷商で売られていたところを助けてやったのである。
「なに? どうしたのあの娘。なんか泣きそうな顔してたけど」
そう言ってフェリンが顔をしかめた。
そういえば、セーミをパーティーに加えるって言ったら、コイツが一番嫌そうな顔してたな。
なんか気に入らないことでもあったのかな。ま、どうでもいいけど。
それよりちょうどいいや。
「おいフェリン、こっちこいよ」
「なによ。もうすぐ朝食……」
「いいからほらっ」
「あんっ」
フェリンを抱き寄せて強引にキスしてやると、途端にとろんとした顔になった。
「だ、駄目よ。みんなが待ってるわ」
「少しくらいいいじゃないか」
「でも、声を聞かれちゃう……」
「だったら聞かせてやればいいだろっ」
オレはそのままフェリンをベッドに押し倒した。
※偏狭な世界・20に微量ながら加筆いたしました。
良ければ読んでやってください。




