いちご・風の中
気持ち悪い表現と取れるところもありますので、ご留意願います。
「いちご」
お母様が眠っている
私はいちごの砂糖漬け
三匹の猫はしっぽを揺らし
両目をキラキラ光らせている
お母様が夢に笑う
私はいちごの砂糖漬け
重たい体のすべての穴に
砂糖がぎっしり詰まってる
言葉を亡くしたお人形を
抱いた私は砂糖漬け
脳病院の青い窓から
紙ヒコーキが滑り落ちる
「風の中」
甘い果物の蜜を吸う
私の眼にある夜
カレイド・スコープが踊る
瞬く間に眠りに引きずられ
覗き込んだ奥に自動人形の影が
恋人同士の口づけのかたちに
私の下瞼に熱い水がたまり
私は蝶になりフラフラと
空気をつかみさまよう
大気は私の体を殴り
けがれた羽虫の群れが
足元から私を包み込む
レコードの針は傷をなぞり続け
渦を巻く夢の中で
私は鈍い腹の痛みに
耐えていた