下水道から立ち上る悪意
マスクの向こうは壁一枚隔てている
冒険者自治領東区には真っ直ぐで大きな通り、メインストリートがあり、そこにはギルド本部やアスクラピアなどの主要な施設が並び、ドミニオンの入り口から中心、すなわちダンジョンまで一直線に伸びている。
ドミニオンに来る多くの観光客、旅人、一攫千金を夢見る若者や帰る家のない者が最初に訪れるのはこのメインストリートであり、東区の人口が五つの区画の中で最も多いことも相まって、メインストリートは常に活気に溢れ賑わっていた。すなわち、そこは商人達の戦場でもあった。
日も傾いてきた頃、ジョシュア、アイナ、カルラの三人はそのメインストリートを歩いていた。目的は食料品の調達である。
「そろそろ雨が降りそうですね」
「この時期は降らない方が珍しいからな」
「早く帰らないとですね。今日は何か食べたいものありますか?」
普段は食品を見ながら献立を考えるのだが、今日のアイナは先に計画することにした。毎日の献立。それが匿ってもらうことに対する対価としてジョシュアが要求したことだった。
アイナは事務所から逃げ出した後、途方に暮れていた。思えば、ドミニオンに3年ばかり住んでいるが、敵ばかり作ったせいか友人がほとんどいない。職業柄色んな人と知り合うが、大半は週刊Anotherと自己紹介したら遠退いてしまうか、最悪敵対してしまう。なぜこんな弱小悪評企業に入ってしまったのか……。もちろん、エウライド学園での成績が悪かったから、そもそもの選択肢が少なかったのだが。
エウライド学園での先輩を思い出した。
……勇者の野郎はいいよなー。アイツ、校長の息子だし王族だし主席だし、その上勇者なんだから最高待遇が完全保証されてやがったもん。
その点、あたしはドミニオン支部なんてやたら危ないところに辞令出されて、ほんと不憫。友達もいないし……ナターシャさんくらいかな。けど、あの人に頼るのはどうかと思った矢先、この前会った男を思い出した。
そうだ、ケントさんだ。そもそも、あの男に着いて悪の砦に行ったから面倒ごとに巻き込まれてしまったのだ。その責任を取ってもらおう!
当然、アイナの頭からは興味本位で用事もないのにケントに着いて行ったことなんてきれいに消え去っていた。それは図太く生きるのに最も必要な才能だった。
ところが、アイナがケントの家に忍び込み、一晩経ってもケントは帰ってこなかった。それで、見かねたジョシュアがアイナに声をかけたのだった。そして今に至る。
ジョシュアとカルラの会話に意識を戻した。
食べ物の好き嫌いの話になっているようだ。
「あたし、パプリカがキライ」
「カルラ、子供が好き嫌いするんじゃねぇ」
「ナニよ、ジョシュアなんて大人の癖にグリーンピース、ケントとゲッコーに押し付けてるじゃん。説得力ないよ」
「バカ、大人はいいんだよ」
「ズルい!アイナ、グリーンピースで何か作ってやって」
「はあ?いいや、今日はパプリカを刻むんだな」
グリーンピースとパプリカか……。
「炒飯ね」
ひとしきり(0.1秒程度)悩んだ結果、アイナはメニューを思い付いた。
「えー、やー!昨日もそれだった」
「一昨日の昼も炒飯だったぜ。それしか作れねぇのか」
む、そうだったかもしれない。だが、引き下がるわけにはいかない。
「全ての具材は炒飯に入れてこそ調和し輝くのよ。全ての材料を均一に刻み米粒と渾然一体として原初の海のように混ぜ合わせ軽やかに空気を取り込んで炒めたそれは、命の完成形なの」
そこから長々としたアイナの炒飯演説が始まり、カルラとジョシュアはいかなる反論においても敗北を欲しいままにした。
アスクラピア旧館東棟。
ここに入院してからおよそ一週間が経ち怪我も癒えた。明日には戦線復帰できると思う。
あの時握っていた剣を枕元の壁に立て掛ける。
うーん、やっぱり思い出せない。
あの時は隊員の誰かのような気がしたのが、今思えば確実に違う。一体、ジャグラス邸で僕を助けてくれたのは何者なのだろう。
何か凄く驚いたことを覚えている……えっと……そうだ!目が抉れてた?いや、そんな状態で生きていられる人間なんていないはずだ。多分、爆発に巻き込まれた同志の死体を覚えていたのだろう。
「入るよ」
扉が右にスライドされる。現れたのは虹色の髪をした小さな女の子……じゃなくて、小柄な女性だ。
「こんにちは」
「はいはーい、イグレシアス君、気分はどうかしら?ちょっと見てみるわねー」
答える暇もなく、ナターシャさんは僕の上着を剥ぎ取った。
「よし、一応繋がってるわね。体内はどうかなっと」
更にナターシャさんは何かの触媒を取り出して、傷跡に触れる。触れたところから微かな振動を感じるので、その振動で体内の検査をしているのだろう。
「出血も結合も大丈夫ね。流石ミズガルズ、もう次の手術にも耐えられそう。どうする?このままじゃオークっぽくなるけど」
「え?」
そう言えば、オークの内臓を使うとか言われたような気がする。
「あの、オークっぽくなるというのは?」
ナターシャがきょとんとした顔をする。
「あらー、知らないで移植したの?魔臓は人間の臓器じゃないの。だから、当然その機能も違うわ。オークの魔臓の場合、オークの体を生かすための働きしかしない。それを人間に乗せるとどうなるか分かるわね?」
嫌な予感をしつつ尋ねた。
「……どうなるんですか?」
「まず、腕力が増すわ。それから太って全身が臭くなる。豚はきれい好きっていうけれど、オークは汚いし臭いわよ」
うわ、いやだ。すごくいやだ。
「あなた、結構可愛い顔してるけど、一年後には豚鼻になるわよ」
「どうすればいいんですか!?」
「人型でいたいなら、そうね。手っ取り早いのは、スラムで転がってる死体から泥棒しちゃうことだけれど、それだと魔臓じゃない分治癒が遅くなるし免疫も弱くなっちゃうわ。おすすめは25階くらいで魔人の臓器を奪ってくることね。一応、アスクラピアでも取り扱っているけど、きっとあなた個人で払える金額じゃないわ」
「……どうしよう」
「大丈夫よ、時間はまだあるわ」
ナターシャがウインクをする。
「見た目や体臭に変化が出始めるのは三ヶ月目くらいからだから、それまでは存分に悩めるわよ。大体の人はそれまでの間に気に入った魔臓を持ち込みに来るわね」
「そうですか……」
三番隊の地下巡回に同行させてもらおうかな。
今後の計画を考えていると、外から怒鳴り声のような音が聞こえた。
ナターシャにもその音が聞こえたらしく、「外が騒がしいわね。少し見てくるわ」と言って扉を開ける。
そこにいたのはマスクで顔を覆い手には錆び付いた剣を振り上げた大男で、今まさに黒髪の少女に横っ面を蹴り飛ばされていた。
「うがあ」
短い断末魔と「メキョ」という生物にとって致死的な異音を頭蓋から立て、大男が倒れ込む。
僕は咄嗟に枕元に置いた剣を掴みナターシャさんの前に出ようした。しかし、ナターシャさんは軽くそれを制止した。
それから、羽毛のように軽く着地した少女が振り返りナターシャさんに声をかけた。少女の眼は黄色に黒い瞳孔が開いて、不思議な色合いだった。
「ナターシャ、見つけた」
「あら、カルラちゃん。ごきげんよう、どこか怪我でもしたの?」
「なに言ってんの、そんな場合じゃない!……怪我は?」
「医者は患者の前では怪我しなーいの」
「……ナターシャなら、そうね」
「それより、何が起こっているのかしら?これ、私の患者じゃないでしょう?」
ナターシャさんが爪先で倒れた大男をつつく。微動だにしないところをみると、すでに絶命しているらしい。
「知らない。コイツらが下水道から出てきて、ここに入っていくのを見たから追ってきたの」
「他にもいたの?」
「うじゃうじゃといた。けど、メインストリートにはジョシュアがいるから大丈夫だと思う」
「そう、ジョシュア君がいるなら表玄関は大丈夫ね。……おかしいわね、警報も鳴らないし隔壁も機能してないなんて……私は館内放送で患者と職員を誘導してくるわ」
「あたしも行く」
「いいえ、カルラちゃんは地下に向かってくれる?地下二階202号室、セキュリティルームよ。そこにみんなを避難させるから」
「ふーん、わかった」
「お願いね」
カルラが迷いなく走り去り廊下を曲がるのを見届けてナターシャが振り向いた。
「イグレシアス君、あなたの傷、もう繋がってるし痛くないでしょう?着いてきてくれるかしら」
是非もない。
「了解しました」
ジョシュアが大段平竜の右腕を右手に握り、左手で煙草を取り出してくわえる。
眼前には20人程の荒くれもの。ガスマスクを着けているのは、有毒ガスを含む下水道に長時間潜伏していたからだろう。
「……っ」
荒くれもの達は自分たちを飛び越えて現れた大男の存在にたじろぎ、その威圧感に身をすくめた。
しかし、男達に時間はなかった。作戦時間は限られていて、それを過ぎればジャグラスの親父に何をされるか分からない。所詮一人。それに、こちらには強力な援軍もじきに来る。そう思えば恐ろしくなどない。と、言い聞かせる。
先頭にいた男が無言で集団に指示を出した。
「っ、ふう。……うおおおおおおおお!!!!」
一呼吸空けて顔を見合わせた後、男達は威圧感を押し退けるため、雄叫びをあげて突っ込む。
それを見てジョシュアはプーッと煙を吐き、独りごちた。
「……ったく、病院に危ねぇもの持って入んじゃ――――」
ジョシュアが右手に持ったアルムレヒトをぶんまわす。
「――――ねぇぞっと」
ジョシュアに最接近した五人の男達は感じ取ることはできただろうか?風の唸りを、大段平の鈍い光を、自らの肉体が千切れ飛ぶ苦痛を。
全員の足が止まる。その一撃で格の違いを知ってしまったのだ。
アルムレヒトを肩に置いてジョシュアが声をかけた。
「てめぇら、下水なんつう所から出てくるっつうことはシンレンマフィアだろ。アスクラピアを襲うってのはどういう了見だ?街を守るだのどうのこうの言ってた癖に宗旨替えでもしたのかよ?」
対する男達の顔はガスマスクのせいであまり見えないが、歪めているだろうことは分かった。
「はっ!俺たちゃもう街なんてくれぇで収まるもんじゃねぇんだよ。大陸だ、ジャグラスさんに着いていきゃあこのヴェルギア大陸だって獲れるんだ!」
ジュシュアはマスクの裏で揺れる瞳の輝きを見逃さなかった。
「……自分に言い訳なんざするもんじゃねぇぜ。かかってきな、葬儀代は無料にしてやる」
メインストリートに血の雨が降る。
ドラゴンの翼は鳥類や翼竜のように前肢が進化したものではない。形態の変化、機能の獲得。それらはいずれも未完成な生物がすることである。真のドラゴンは違う。
ドラゴンは完成された存在であり、進化など不要。子孫すら無意味。究極にして唯一無二。動かぬ限り永遠に体内において自己循環的に代謝を続け、食わず、繁殖せず、ただ在り続ける。それは亜竜と異なり生物として定義することすらできず、世界の中に在りながら神とは異なる意味で内に世界を内包するもの。
敢えて定義するならば、生まれる前から完成された存在、とでも呼ぼうか。
だとすれば、あれはドラゴンではない。そもそもドラゴンにしては小さすぎるし、人型、それも少女だ。
だが、それはただの人からすれば些細な違いなのかもしれない。その暴虐に抗う術がないのなら、ドラゴンも天災も疫病を持つ蚊の一刺しですらも異なるものではない。それならば、廊下の先にいる少女はまさしくドラゴンだった。
「散弾銃を出せ!近付かれたら死ぬぞ!」
当初の計画では、アスクラピア内に強力な戦士は残っていないはずだった。事実、救急搬入口にいたミズガルズの警備員は少数の犠牲で始末できた。
なのに、この多大な犠牲は何だ。運が悪いという他にはないが……。
側にいた奴等に散弾銃を構えるように指示する。
くそ、うちのギャングは多少腕の立つ奴でもレベル15がそこそこだ。
それであれに敵うか?――――無理だろ。
あれにまともに対抗するには改造手術が必須。それも全身改造だ。まともな全身改造なんて値段が高くて俺たち庶民が手を出せるわけがねぇがな。
そいつは、アスクラピアの生白い通路の端から端、およそ30m程先の角を曲がって現れた。
現れると同時に四肢を漆黒の鱗に覆われ鋭い爪を生やした凶器に変え、先行していた数人を武器を構える間もなく引き裂いた。
次の3人は剣を構えてそいつを斬ろうとした。しかし、そいつは背中から骨組みだけの翼のようなものを壁に突き刺し、廊下を立体的に、それこそ縦横無尽に動き回り翻弄して三人の腸を引きちぎりボロ雑巾のように投げ捨てた。
――――近付かれたら……。
――――死ぬ。死んじまう。
それは明らかだった。
もっと簡単な命令だったはずなのだ。アスクラピアに突入して誰彼構わず殺し回る。それだけの簡単な。
――――上等だ。
「ばか野郎、てめぇら散弾銃構え!今すぐ出せ、糞が!」
声を張り上げて周りの自分と同じようなクズ共を急かし、自らも散弾銃を取り出す。
散弾銃はいい。ファミリーで作っている中折れ式の散弾銃は多少嵩張るし連発もできないが、装填が早く済み、命中率も申し分ない。レベル20が相手でも近距離で狙えば当たるし、ミズガルズの鎧も4m以内ならぶち抜ける。
「号令に合わせろよ、てめぇら!」
少女は30mの距離を壁、床、天井を跳ね、翼を突き刺し、尻尾で不規則に緩急を付けて迫る。天井を跳ねる度に魔光灯を砕くので段々と薄闇が近付いてくる。アスクラピアが通路を食道に変えて俺たちを飲み込もうとしている。そんな妄想が頭をよぎったが、首を振ってそれを払った。
あの動きならば、年端もいかない少女であってもレベル10は超えているに違いない。
だとすれば、5mまで引き付けなければ有効打にはならない可能性が高かった。
「お、おい、まだかよ!」
「まだだ、いつでも引き金引けるようにしとけ」
15mを切り、7mに迫る。固唾を飲み待ち構えた直後、床に右側の翼を突き刺して勢いを殺し、尻尾で天井を打って15mにまで後退し――――
まるで、おちょくられているようだな……。
――――した瞬間に軌道を急変させ距離が5mを切り
「――てぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
号令をかけた。
ズダン、という重く低い発砲音がいくつも重なって鳴り、硝煙の焦げた臭いがたちこめる。大量の散弾は壁となった。それに当たって少女は黒いピンボールのように後ろに跳ね返り、地面を転がり、動かない。散弾が真正面から当たったのだ。
「ふ、ふっはは、ははははははは!」
周りの野郎共はものの見事に外したが、俺が放った一発は少女の中心をぶち抜いた。あの当たり様ならミズガルズの鎧を二つ抜いて内臓をぶち撒けるくらい容易い。
「お、おいやったのか?」
「クリーンヒットだっただろ……?」
二人ほどがゆっくりと少女の生死を確認しに近寄る。
ふん、確認するまでもねぇ。内臓ぶち撒けた少女なんて見たくもないぞうってな。
……内臓?そう言えば、吹き飛ばした時、血は見たか……?悪い予感。
「あふ」
「はへ」
近付いた二人の首が吐息を漏らしながら飛ぶ。ぐにゃりと倒れる二人の間から見えたのは、もはや骨組みだけではない、ゴムのような質感の飛膜を備えた翼と首を切るのに丁度良さそうな鋭利な尻尾。飛膜からはボロボロと俺の撃った散弾が鹿の糞のように落ちて銀色の反射を煌めかせている。
ヤバいヤバいヤバい!全然仕留められてねぇ!
逃げる、逃げるしかねぇ!
逃げ道は後ろだけ。後ろの階段か、丁字路の左右だ。窓から飛び降りてもワンチャンあるがとても着地できねぇ。だが、後ろに真っ直ぐ逃げても少女の方が速い。少女の足を止める必要がある。持ってるのは、散弾銃、散弾銃の弾大量、手投げ爆弾二つ、鉈、どいつもこいつも効きそうにねぇな!何か高ぇ触媒でもかっぱらってくりゃあよかったぜ。
つまりは、囮が必要だ。
周りの仲間をチラッと見る。俺は目立ち過ぎたらしく皆こっちを見てる。アウトローの癖に指示待ち人間かこいつら!
「てめぇら気持ち悪い、なに見てやがる!早く逃げるぞ糞が!」
咄嗟に叫びつつ、散弾銃に弾を込め後ろに全力疾走。
追って、全員が走り出し幾つかの悲鳴が上がる。少女が追い討ちしたのだろうが、後ろを見ている暇はない。
このまま全員で走ったとして、捕まるのは何秒後か。
何人いただろうか。確か、廊下に入る時点では16人いた。二人やられ、三人やられ、また二人やられて、今三つ悲鳴が上がった。
後、6人、死のカウントダウンまで6人!
階段までの距離を計算すると、後10歩ってところだった。その間に三人は殺られるだろうが、先頭を走る俺には関係ねぇ。
その距離をこれ以上ないってほどの勢いで走りながら、手投げ爆弾に着火する。このタイミングが重要だった。
しかし、予定外のことが起こる。
更に三つの悲鳴が聞こえたことは良しとして、四つ目の悲鳴が上がる。すなわち、残ったのは俺を含めて二人だけ。もう一人も死なせられない!
「避けろ!!」
振り向くと同時に手投げ爆弾を投げつけ、今にも最後の一人に襲い掛かる少女に向けて散弾銃を発砲した。
倒れ込む最後の一人の頭の上を通り、散弾がバラけながら少女に向かう。俺の声に反応した少女は攻撃をやめて飛膜で自らの小柄の体を覆い弾き飛ばされる。その間に俺は最後の一人を引き寄せ、その直後に爆弾が爆発し、もうもうと煙ができる。煙幕にしては心許ないが数秒なら十分。
爆風に煽られてたどり着いた階段で、最後の一人に声をかけた。
「おい、大丈夫か。二手に別れて逃げるぞ。てめぇは下に逃げな」
「っう……あんたは?」
「大丈夫だ、俺は上に行ってから下に逃げるルートを探す。音は立てるなよ、じゃあな」
「わかった、ありがとよ。あんた名前は?」
「ゲイル、だ。てめぇは?」
「トロットだ。あんた、またな」
「おう、下でな」
俺はトロットの腰を叩き、煙幕が晴れる前に階段を駆け上がった。
その数秒後、破裂音が響き、少女は下階に走り去っていった。
「あばよ、トロット。がんばれよ、ってな」
もう一つの手投げ爆弾から抜き取った爆薬を床に捨てる。爆薬を抜いて信管だけになった手投げ爆弾は音を出すだけで破裂するほどの威力もなくなる。
これで、俺の方にドラゴン少女はこねぇ。後は作戦が次の段階に進むまで待っとくか。
アイナ「お昼できましたよ」
ジョシュア「はいよー」
カルラ「ごーはーんー」
ジョシュア「おい、また炒飯かよ。いい加減飽きたぞ」
アイナ「はあ?飽きた?はあ?何で炒飯以外を作らないといけないんですか?」
ジョシュア「そりゃお前、栄養が片寄るだろ」
カルラ「毎日食べてたら何でも飽きるよ!」
アイナ「いいですか、炒飯は卵が入っています。卵は完全食品です。だから、炒飯は完全食品です」
カルラ「意味わかんない」
アイナ「わからないなら黙ってなさい」
ジョシュア「いや、卵だけで生きられるわけでもねぇだろ」
アイナ「その通りです。しかし、炒飯は卵だけじゃありません。栄養源となるご飯が付いています」
ジョシュア「野菜とかだって」
アイナ「その通り!だから、玉ねぎも人参も入っているでしょう?」
ジョシュア「いや……その」撃沈!
アイナ「もう何もないですね」
カルラ「だけど、飽きるじゃん!」
アイナ「昨日はカレー炒飯、今日はレタス炒飯ですが?」
カルラ「……もういいよ」撃沈!
アイナ「OK!さあ、召し上がれ!」




