精鋭部隊VS総督とその部下たち
さて、指令本部にいるSSは到着した精鋭部隊の一人の影に潜み、潜んだと思えば対する兵隊の影に移り、又は物陰に移り、人知れず動き回って現場の形勢の把握に努める。自ら戦闘に加わることはしない。総督に味方する軍の兵隊の人数も数える。その兵隊の中にも何が起きているのか困惑している者も多い。精鋭部隊を他国の破壊工作員と思い込んで戦っている者もいる。裏切り者だと叫んでいる者もいる。一概にこの基地に残っている兵隊を全て敵と呼ぶには、SSには抵抗がある。精鋭部隊十人を相手に、数はその倍近くいようものだが、一兵卒同士の争いだと奇襲を仕掛けている精鋭部隊に分がある。だが、総督の存在とその電撃を操る能力ゆえ、力が均衡、いや精鋭部隊が不利となる。出すぎた精鋭部隊の一人は一撃で吹っ飛ばされ、窓を突き破って二階の高さから落下していく。ターゲットである総督が前進すると後退。四方に散って挟み込もうとしても、やはり電撃でやられるか、上手い兵の配置で連携を取らせない。精鋭部隊が一人、また一人とやられていく度に、部隊はまた後退した。その形勢の拙さに、SSも自分自身が動いて奇襲に出ることを考えた。悪い言い方だが、精鋭部隊を囮にしてその隙に攻撃でもしない限り、総督には勝てないどころか近づくことすら出来ないと読む。その作戦を、通信機を使ってイーニアスに持ちかける。
「構わない、許可する。だが、やるなら慎重にやれ」
ところが、その通信の間に精鋭部隊の大半が総督の電撃によって打ちのめされてしまう。最後列にいた部隊の隊長らしき男は一緒にいたもう一人の隊員と共に、やられた味方も置いて撤退し始めてしまった。仕方なくSSは総督側の兵隊の一人の影に隠れてチャンスを探る。こう味方もいない中で奇襲も何も出来たものではない…
一戦を終えて、総督は隣の宿舎からも兵を集める。集まった数は九十強。整列させて今この敷地内で起きた戦闘の説明を始めた。その内容は以下のとおりである。
第一に、いま起きた戦闘の非を議会と首相にあると言う。
第二に、それら議会と首相が外国と結託し、この国が精製する雷兵器の水晶の利権を自分たちだけで掌握しようとしていると言う。
第三に、それらを逆賊と呼び、軍の最高指令として、国王と国民に忠誠を誓う者として、国家安泰のため、逆賊討伐のために直ちに兵を動かすと言う。
勿論、このようなことを急に、またこんな夜中に告げられて、全てを鵜呑みに出来る兵士も多くない。この指令が、この基地に残っていた兵にのみに下されている点を訝しがる者もいる。それでも、総督の命令に疑問を持つ者はいても、拒否しようとする者は一人もいない。事態の把握は出来なくても、国のため、国民のため、兵士の務めを全うしろと言われれば迷いも捨てている。
「目指すは首相官邸、議会本部!」
隊列を組んだ彼らはその号令によって行進を始めてしまった。
「イーニアス、総督は兵を率いて議会場に向ったぞ。敵の数は九十以上、先行した精鋭部隊はやられた」
「やはりそうか、いまほど精鋭部隊の隊長とすれ違った。直に到着するというのに、そういうことなら私も急いで首相のもとに戻る。警官隊を動かさなければ、あっという間に議会は乗っ取られる。誠司、聞こえているか?」
「ああ、俺のほうも一度議会のほうに向う。弥生たちもそうしろ。態勢を整えて迎え撃つ」
続きます




