東京駅で待ち合わせ(後編)
「お前たちがただの学生じゃないことは知っている。平塚弥生に佐久間滋だな。お前たちに話がある」
「話があるなら、そんなものを突きつけないで、正々堂々と正面切って話したらどう?」
「お前たちが能力者だということも知っている。我々普通の人間がお前たちと対等に話すにはそれなりの武装も必要だ。手荒な真似をしていると思われても構わないが、これも我々の身を守るためだ」
「あなたたちはどこの所属の人?」
「中で話す。とにかく入れ」
滋に目配せして弥生は車に乗り込む。どんな合図だったのか具体的なものは滋にはわからない。気を引き締めろと勝手に解釈して後に続いた。
車体の横腹から乗り込むとシートはボディに沿って四連結のものが一つ。足元や壁には色々と電子機材が設置され、随分と狭い。車体の後方、ハッチバックの前でインカムを頭に乗せ、開いたノートパソコンを抱えた、これまた白人の男が待っている。ベージュの綿のパンツにストライプの入ったシャツ、縁なしの丸眼鏡を身に着けている。ウェーブのかかったブラウンの髪は短く、前髪は上げて額を出している。頬にそばかすがある。歳は二十歳、いや十代後半の若さくらいか。背は高いが屈強とは言えない。その男が握手を求めて手を差し出してくる。気さくな笑顔を作って英語で話しかけてもくる。弥生も滋も、何を喋っているのかその半分ほどしか理解できない。
「通訳をお願い」
そう注文すると、滋を連れてきた男が、
「会えて嬉しい、と言っている」と訳した。
「それくらいならわかるわよ」
「彼は君たちと同じ能力者だ。そしてハッカーでもある。君たちの携帯に偽のメールを送りつけて無理にここに連れてきたことを謝っている」
「変だと思った。それで、あなたたちは何者? 何の用があるって言うの?」
それには通訳をした男が直接こう答えた。
「我々はNUWのものだ。君たちや君たちの隊長、桐生誠司に用件があってこの日本にいる」
「NUWって、アメリカの…」
「弥生さん、知っているんですか?」
「知っているも何も… あんた、入隊するとき資料を詳しく読まなかったわね。NUWはアメリカのUWのことよ。アメリカ支部って呼ばれたくないから世界大戦のときくらいから自分たちで改名してるのよ」
「ああ、ありましたね、そういえば…」
「それで、そんなところが私たちに何のようなのよ?」
「正確には君の隊長が保護している『あちら側』の迷子に用事がある」
「何よそれ。直接私たちに用事があるってことじゃないの? 要するに誠司と接触するために必要だってこと?」
「ありていに言うとそういうことだ」
「ありていに~!?」
昼間の発砲男にしろ、桐生にしろ、この車の男たちにしろ、どいつもこいつも弥生のプライドを傷めつけてくれる。鬱憤溜まってついつい拳を握ると、彼女は通訳をしたこの屈強な男の顎に怒りの鉄拳を一発叩き込んでしまった。いきなりのことで車内全員が唖然とするが、すぐに二つの銃を突きつけられて静まれと命令される。彼女も、それ以上の無駄な暴力は止めて素直に腰を下ろした。もっとも、銃にもまったく臆せず、彼女は車内の男たち全員に一瞥をくれる。
「それで、あなたたちはその迷子をどうしようと言うのよ。全部詳しく話しなさいよ」
続きます




