VS偽イーニアスとロープ男(後編)
残るは偽者。爆破で始末したと思った相手が無傷で生きていることがよほど衝撃的のようで、おまけに味方もやられて、意地になってもう一発ロケット弾を発射するが、滋の結界の前ではまったく通用しない。
「大人しく投降しなさい!」
「オウ、オ姉サン! 調子ニ乗ッテマスネ! 私ヲ本気ニサセルト後悔シマスヨ!」
諦め悪く懐に手を差し込んで取り出す写真の束。次はどんな兵器を取り出すのか、何が出ようが滋の結界の前では弾き返すであろう。それでも、核兵器や化学兵器といった周りや社会に危うい代物では話は別。まさか、と息を呑むと、さて、選び出された一枚を脱いだスーツのジャケットに貼り付ける。途端、四枚羽のプロペラのついたランドセルに変えてしまう。いそいそと背負い、羽を回して上昇すると、
「アディオス!」
一人空へと逃げてしまうのであった。
「仲間を見捨てていったわ! 何て薄情! あいつホント最低! ああいう奴、大っ嫌い!」
吠えたところで弥生たちに追う手段はない。
「弥生さん、このロープの人、どうしよう?」
「研究所に送りつけるわ! あそこの人たちにたっぷり可愛がってもらえばいいわよ」
「それにしてもこの人たち、いったい何者なんだろ? 日本人じゃないみたいだけど、明らかに能力者だったし。やっぱり外国のUWの人なんですかね?」
「さあ、そんなのわからないわよ。UWって、別に全世界にあるわけじゃないんだから。『あちら側』の人間じゃないとは思うけど、『こちら側』のどこかの国の不思議現象対応団体なりチームなんじゃない?」
「どこかの国か…」
「大体は想像つくけど、本当、面倒ね。その国の感覚で銃を躊躇なしに撃ったりしてくるんだから、嫌なものよ。私たちの本店がどう捌くかわからないけど、この人たちが今後どうなるか、どうなったにしても私たちに情報が下りてくるとも限らないし」
「組織ですねぇ」
「良くも悪くも組織よ。どうせこのロープ男も組織の人間よ。組織のため、国のために動いている人種よ」
「弥生さん、何だかその言い方だと、弥生さん自身は組織に属することが嫌みたいに聞こえるけど…」
「私? いや、そうでもないわよ。私だって組織の人間よ。好きでもないけど、嫌だってわけでもないわよ。あんたこそ慣れた? まだ入って数ヶ月しか経っていないけど、それまで自由な大学生だったのに、国のため、世界のために働くようになって、その実感、持てるようになった?」
「う~ん、そういうふうに聞かれたことないから深く考えたことないけど、僕自身、もともと自由奔放な性格じゃなかったから、しっくり、とまでは言わないけど、こういう組織の中に属するっていうの、僕の性分には合っている気がするんですよね」
「あんた、やっぱり真面目よね。誠司なんかよりも上に行って幹部とかになる資質があるんじゃない?」
「僕が上に行っても、誠司や弥生さんをコントロールできるとは到底思えない…」
「何よそれ。人がせっかく褒めてあげているのに、人聞きの悪いことで返してくれちゃって。あんたやっぱり、真面目な分だけときどき残酷よ」
「ハハ… ごめんなさい」
二人でロープ男を抱えた。
「ちょっと、ちゃんと持ってる? もう少し筋肉も鍛えなさいよ」
「ハハ… そうします」
続きます




