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安藤士郎の場合 27


第十四節


 廃工場の中は薄暗く、入り口から差し込む陽光で舞い上がるホコリがハッキリと分かる。

 最小限の鉄製の骨組みだけで構成された屋内は、少なくとも二階以上あり、中央が吹き抜け構造になっている。

「ヒデオーっ!ケンジ―っ!来ちゃダメーっ!」

 甲高い女の声がする。

 見上げると二階の柱に長い髪を振り乱し、純白のブラウスに黒いスカート、赤く細いボータイの清楚な制服に身を包んだ女子生徒が縛られている。

「…あれって…アキラだよな」

「似合ってますね」

「てか完全に『囚われの姫』ポジが定着して来てるんだが…」

 ドン引きしている橋場。一番硬派を気取っているクセに最も暗示に掛かりやすいのが武林である。

 周囲にかーちゃん以外の女がいないパターンだろう。要は「女慣れ」していなさすぎて特に自分がされるのに免疫が無い。

 まあ、普通は「女にされる」ことに免疫がある男なんぞそうそういないんだが、ベテランのメタモルファイターともなれば同時に「女にされ、女装させられ」慣れてしまうものだ。

 それこそおとこたるもの、スカートめくれてパンティまる見えにされたり、おっぱい揉まれるくらいで動揺していては駄目なのである。

「気を付けて―!」

 女の声は通りがいい。それにしても余りにも堂に入った『お嬢さま』ぶりである。


 周囲を見渡す橋場と斎賀。

 武林以外に人の気配が感じられない。

「…その敵はどこだ?」

「気を付けてください。不意打ちかも」

 さりげなく天井を見上げる斎賀。

 幸い、今にも落下しそうな鉄骨があったりはしない。

「…どうなってる?どこにもいねえぞ」

「ん?…」

「どうした?斎賀」

「…か、からだが…ああっ!」

 むくむくっ!と斎賀の乳房が膨らんだ。



(続く)


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