安藤士郎の場合 24
第十節
店を出たところである。
「ま、そんなところだから。いつでも食べに来てよ。飲食店はリピーターが命だからさ」
「…ま、確かに美味くて量が多いけど…」
「そんなにしょっちゅう足元涼しくはさせないからさあ」
どんな客引きだ。
「女子高生モード解除しなくて大丈夫ですか?」
「ん?心配してくれてんの?」
ぴらっとミニスカートを軽く持ち上げるウー。
「いや、念のために」
「ナンパにおびえるタマじゃねえって。それこそギャング集団に囲まれたってギャングの就職先を心配すべきだろうさ」
「ま、そーゆーこと。か弱い女にゃ有難い能力だよ」
この世で最も似合わんことを抜かす。
「じゃあそういうこと…でっ!」
勢いよく二人をそれぞれの手で突き飛ばすウー。
一瞬よろける橋場と斎賀。
「あたりだな」
「でしょ?」
ぽかんとしているウー。
「…何で変わんないの?」
「あんたが普通に別れるもんか。離れ際にタッチして変身させた後に走って逃げるだろうくらいは予想がつくっての」
「ということで、ボクらは今現在対戦状態が継続中なんですよ。さっき解除した時のね」
「メタモルファイトは掛け持ち出来ないんだって。あんたの能力は相手の同意は確かにいらんが、対戦中のメタモルファイトを強制解除してまでこっちに引っ張り込むことはない。割り込めないんだよ」
「…同じ手にやられたって訳か…全く可愛くない子たちだねぇ」
「二人のファイターによる防衛法です。この方法なら勝てませんが負けることも無い」
「あー分かった分かった!今度こそそんじゃね!」
女子高生の背中が遠ざかる。
こうしてみると本当に十代の女の子に見える。
斎賀の携帯電話が鳴るのが同時だった。
(続く)